本書『次から次へと めおと相談屋奮闘記』は、『めおと相談屋奮闘記シリーズ』第一弾の、解説まで入れて271頁の長編人情時代小説です。
『次から次へと めおと相談屋奮闘記』の簡単なあらすじ
よろず相談屋の信吾が結婚したって!?ああ、間違いない。十九歳で老舗料理屋の跡取りを弟に譲り独立。将棋会所と相談屋を開業した変わり者。武芸も達者で、刃物を持った相手を撃退し瓦版にも載った。そんな男の嫁になるのはどんな女だ?それが信吾に負けず劣らずの変わり者らしい。そりゃ目が離せねぇな!読み味は軽快、話は痛快、読み終えて爽快!青春時代小説、第二幕はじまり、はじまり~。(「BOOK」データベースより)
竹輪の友
「キューちゃん、おめでとう」という言葉と共に信吾の幼馴染である完太と寿三郎、それに鶴吉たちがやってきた。自分たち「竹輪の友」に黙って嫁さんをもらうとはひどいというのだった。そんな信吾に母と息子と思われる二人からの相談の依頼があった。
操り人
仮祝言の翌朝、信吾は波乃に、じつは自分は動物と話ができると言い出した。あまり驚かない波乃にもう一つ、息子が新之助ということしかわかっていない母子の相談を受けたが相談料を貰っていないと明かすのだった。そこに新之助の弟と思しき、仲蔵という男が現れた。
そろいの箸
住まいにお客だとの知らせの二度の鈴が鳴ったが、帰ると誰もいない。波乃は黒猫が信吾と話したそうにしていたというのだ。その猫は大変世話になった黒介という猫だろうと言う信吾だった。そこに波乃が朝に三人の子供のお客があったと言い出した。
新しい看板
お客だとの呼び出しで帰ると、界隈を縄張りとしている岡っ引きの権六が来ていた。信吾の嫁を見に来たといい、こんなへんちくりんな夫婦は見たことがねえ、という権六だった。しかし、波乃の世話を兼ねて手伝いに来ているモトは権六を見ると「権ちゃん」と呼びかけるのだった。
『次から次へと めおと相談屋奮闘記』の感想
本『なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記1』は『めおと相談屋奮闘記シリーズ』の項にも書いたように、『よろず相談屋奮闘記シリーズ』の続編です。
老舗料理屋「宮戸屋」の跡取り息子だった信吾ですが、跡目を弟に譲り、自分は将棋会所と相談所を開業したのでした。
そこに阿部川町の楽器商「春秋堂」の次女である波乃という女が押しかけ女房となり、シリーズも『よろず相談屋奮闘記シリーズ』から『めおと相談屋奮闘記シリーズ』へと変わったのです。
ある商家の母親とその息子の兄弟の相談事も順調にこなすことができた信吾でしたが、そのすきに妻の波乃にもまた思いもかけない相談事が持ち込まれました。
その依頼者が三人の子供のお客だったのですが、その相談事を乗り越えた波乃でした
このように、夫婦二人で始めることになった「めおと相談屋」ですが、何とか順調な滑り出しを見せているようです。
このシリーズが相談屋を舞台としている以上仕方がないことではあるでしょうが、相談事の依頼者との相談、それに対する応答と言ったやり取りを少なくない頁数を使って描写してあります。
そのやり取りの様子に関心がある人はそうはいないのではないでしょうか。
たしかに、信吾の回答はそれなりに胸を打つ内容ののものもあったりはしますが、それほどに感動的とは言えないし、関心を引く新たな何かがあるわけでもありません。
どちらかと言えば冗長に感じる場合の方が多い気がします。
また、本書での相談の様子を読んでいると、どうにも素直に読めない場面が多々あります。
たとえば、波乃が初めて相談事を受けた折りの対応など、首をひねることばかりです。
相手が子供たちだったということもあるでしょうが、波乃は相談に来ている子供たちの相談ごとの内容を必死で考えようとします。
子供たち自身の口から語らせるには可哀相すぎることだろうという判断が先行したのかもしれませんが、直接に尋ねては差しさわりがあるとはどうしても思えません。
それを一生懸命考えている波乃の姿を見ると、疑問しか湧いてこないのです。
こうした点が少なからずあるので、本シリーズに対してはおなじ野口卓の『軍鶏侍シリーズ』のようにはのめり込むことができません。
私にとっては。普通の時代小説よりはすこし関心を持って読めるか、というほどだと言えます。
ですから、このシリーズを最後まで読むだろうとは思いますが続巻が出るのを心待ちにするとまではいかないのです。
とはいえ、とりあえず続巻を待ちましょう。