北町奉行所定町廻り同心の朽木勘三郎を主人公にした捕物帳です。朽木勘三郎という同心は、岡っ引の伸六をまとめ役とし、その手下である安吉と弥太、それに見習の和助と喜一という若者をチームとして探索をさせ、事件を解決します。一人のヒーローによる事件解決という従来の捕物帳とは一線を画しているのです。
更には、勘三郎とその息子の葉之助という親子の関係も見どころになっています。親の子に対する暖かな眼があって、その眼は伸六配下の手下たちにも注がれていて、常に彼らの成長を見守る親としての、そして若者を預かる同心としての姿までをも緻密に描き出しているのです。ここらの描き方は『軍鶏侍』での源太夫の、息子や弟子たちに対する目線と似たものがあると言えると思います。
どうしても、この作家の園瀬藩という風光明美な舞台を設けていた『軍鶏侍シリーズ』との比較になってしまいますが、江戸の町を舞台にした捕物帳だからでしょうか、より客観性が増しているようです。主人公の「口きかん」との異名を持つ朽木勘三郎についての描写もあまり無く、物語の主体は勘三郎の手下である岡っ引の伸六を中心とした仲間に置かれています。
勿論、最終的な解決は勘三郎が行うのですが、勘三郎の指示で伸六らが動き、伸六らが情報を収集するその様子がこのシリーズの魅力になっているようです。その情報収集の過程でまた勘三郎の指示があったり、若者の成長する姿を見たりと、物語の全体的な構成は違いますが、池波正太郎の『鬼平犯科帳』シリーズの火付盗賊改方長官長谷川平蔵というキャラクターと似たところが無いとも言えません。
とにかく、まだこのシリーズは2016年11月の時点でも二冊しか書かれていないので、今後のシリーズの展開を待ちたいと思います。
北町奉行所朽木組シリーズ(2016年11月19日現在)