木内 昇

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集英社

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幕末の木曽山中。神業と呼ばれるほどの腕を持つ父に憧れ、櫛挽職人を目指す登瀬。しかし女は嫁して子をなし、家を守ることが当たり前の時代、世間は珍妙なものを見るように登瀬の一家と接していた。才がありながら早世した弟、その哀しみを抱えながら、周囲の目に振り回される母親、閉鎖的な土地や家から逃れたい妹、愚直すぎる父親。家族とは、幸せとは…。文学賞3冠の傑作がついに文庫化!(「BOOK」データベースより)

 

幕末という時代背景のもと、木曽の山奥の町で「お六櫛」の櫛職人を目指す一人の娘の半生を描き出す長編の時代小説です。

 

木曾山中の藪原(やぶはら)宿で、「お六櫛」という名産の櫛があります。解かし櫛とは異なり、髪や地肌の汚れを梳(くしけず)るのに用いられる「お六櫛」は、「とりわけ歯が細かく、たった一寸の幅におよそ三十本も」櫛の歯があるそうです。

吾助は、それほどに間隔の狭い櫛の歯を「板に印もつけもせず、勘だけで均等に引くことができる」名人でした。そのような櫛職人を目指す、吾助の娘登瀬の半生が語られます。

 

時代は黒船が来航し、攘夷勢力と勤皇の思想との激しい対立が渦巻いている中、登瀬は藪原にある家の職場である板の間しか知らずに暮らしていた。

しかし、時代の波はそうした藪原にも押し寄せる。事故により跡取りである息子直助を亡くした吾助の一家は、登瀬の願いに応え、婿を取ることになるのだった。

 

登瀬という女性の成長譚であると同時に、名人である吾助一家の家族の物語でもあり、登瀬の婿との夫婦の物語という側面も持っています。

ただひたすらに藪原で櫛を作る職人でありたいと願う登瀬ですが、その人生は決して明るいものではなく、この物語も全体として重いトーンで進みます。

 

とても「新選組 幕末の青嵐」を書いた作者と同一人物とは思えない雰囲気です。この本を先に読んでいたら、多分他の本は読まなかったのではないでしょうか。私の好みのタッチとは異なるのです。

 

 

でも、家に仕えるのが当たり前であったこの時代で、職人になるというその思いがいかに大変なものであったことか。

その中で自分の意志を貫こうとする一人の女性の強い生き方の物語として見た場合、物語としても引き込まれて読む人は多数いるのではないでしょうか。

例えば、一人の女性の生きざまを描き出した作品として 朝井まかての『恋歌』や 高田郁の『あい―永遠に在り』などがあります。

これらの作品は、ひたすらに夫を想いながら自分の生き方を貫く女性を描いた作品でしたが、これらとはまた異なり、本作品は職人になるために打ち込む女性を描いた作品として魅力的です。

 

[投稿日]2015年04月09日  [最終更新日]2019年3月30日
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