木内 昇

イラスト1
Pocket

文庫

集英社

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 新選組幕末の青嵐 (集英社文庫) [ 木内昇 ] へ。


身分をのりこえたい、剣を極めたい、世間から認められたい―京都警護という名目のもとに結成された新選組だが、思いはそれぞれ異なっていた。土方歳三、近藤勇、沖田聡司、永倉新八、斎藤一…。ひとりひとりの人物にスポットをあてることによって、隊の全体像を鮮やかに描き出す。迷ったり、悩んだり、特別ではないふつうの若者たちがそこにいる。切なくもさわやかな新選組小説の最高傑作。(「BOOK」データベースより)

 

新選組の主な構成員の夫々に均等に光を当て、短めの項立ての中で客観的に新選組を浮かび上がらせているその構成がユニークな、新しい新選組の物語を紡ぎだす、長編の時代小説です。

 

これまで良く知られている新撰組の物語ではあるのですが、特定の個人を取り上げて論じているのではありません。項毎に特定の人物の視点を借り、他の構成員や新選組の出来事をその人物の主観を通して描き出しています。

つまり、視点を借りているその人物の内心を考察するのですから当然その人物像を詳しく語ることになり、且つその者の眼を通して他者を語らせることを繰り返すことで、結果的には様々なフィルターを通した新選組という組織の描写になっているのです。

 

勿論、山南敬助の脱走事件や伊東甲子太郎の「油小路事件」などの定番の事件も簡潔かつ丁寧に描写されており、エンターテインメントとしてのかたちも抑えてあります。

前述の手法は、時代の変革期にその命をかけて生き抜いた若者たちの青春群像劇を際立たせることにもなり、こうした定番の事件もまた新たな視点で読むことが出来ました。

 

この作者の丁寧な文体はまた読み手にも優しく、実に読みやすい文章でリズム感がよく引き込まれました。

特に項の終わりを現在形で止める文章は、単なるリズムだけでなく、読み手にとりその項の視座を持つ人物の心根に思いを馳せることになり、余韻を持たせて心地よく感じました。

 

本書で新しい解釈が為されているという訳ではありません。語られている事柄自体は通説的なことだと思うのです。それでも、なお実に新鮮に感じられ、評判もかなり良いことを感じます。

面白い一冊でした。新選組という題材自体の持つセンチメンタリズムを越えたところで展開される本書は是非お勧めです。

[投稿日]2015年04月09日  [最終更新日]2019年3月30日
Pocket

おすすめの小説

新選組を描いた小説

壬生義士伝 ( 浅田 次郎 )
輪違屋糸里」「一刀斎夢録」の新選組三部作。小気味いい文体と、人の心のつぼを熟知した浅田節が炸裂する、絶対お勧めの三部作です。
黒龍の柩 ( 北方謙三 )
新選組と言うよりは、新たな土方歳三を描いた、北方謙三作品らしい男の夢を描いた作品です。
新選組藤堂平助 ( 秋山 香乃 )
藤堂平助を主人公とした作品で、物語自体に新解釈はありませんが、藤堂平助の視点での新しい見え方はあります。とくに、秋山香乃という作家独特の新選組の捉え方があり、その捉え方を気にいるかどうか、で本書の評価も大きく変わってくることと思われます。
新選組秘帖 ( 中村彰彦 )
他の作家は描きそうもない新選組隊士を描く、新しい切り口の新選組の物語です。他の小説では名前すら出てこないような人々を中心に据えて、それらの人々そのものを描き出そうとした試みは斬新です。
沖田総司 ( 大内 美予子 )
子母澤寛の「新選組三部作」や司馬遼太郎の「燃えよ剣」などに影響を受けながらも独自の沖田総司像を作り上げ、この作品以降の沖田総司像を作り上げたと言っても過言ではない作品です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です