十一代将軍・家斉の治世も四十年続き、世の中の綱紀は乱れていた。浪人・秋月六平太は、裕福な商家の子女の花見や芝居見物に同行し、案内と警護を担う付添い屋で身を立てている。外出にかこつけて男との密会を繰り返すような、わがままな放題の娘たちのお守りに明け暮れる日々だ。血のつながらない妹・佐和をやっとのことで嫁に出したものの、ここのところ様子がおかしい。さらに、元許嫁の夫にあらぬ疑いをかけられて迷惑だ。降りかかる火の粉は、立身流兵法達人の腕と世渡りで振り払わねば仕方ない。日本一の人情時代劇、第二弾にして早くもクライマックス!(「BOOK」データベースより)
「あやかし娘」
味噌問屋浅野屋の娘のお絹の付き添いをしていた六平太は、奔放なお絹の行動に振り回されていた。そのうちに、浅野屋が三五郎という男から脅しをかけられているという。
「武家勤め」
関森藩の藩主の妾腹の子亀太郎を助けたことから、亀太郎の剣術指南をすることになった。しかし、そのことを快く思わないものもいて・・・。
「むかしの音」
六平太は盲目のお琴の師匠秋絵の付き添いをすることになった。その秋絵は、出稽古のの途中、わき道にそれ、ある音を聞いているかのように佇むのだった。
「霜の朝」
前巻の最終話で、六平太の妹の佐和は、呉服商の美濃屋の手代由蔵のもとに嫁ぐことになったのだが、その後の佐和の姿が描かれる。
(別館:「とにかく読書録」より)
本書では六平太の人となりの紹介とでもいうべき作品になっています。
この手の時代小説の定番の構成として、六平太の付き添い屋つまりは用心棒としての仕事の物語があって、それとは別にシリーズ全体を通しての大きな流れとして六平太がかつて仕えていた十河藩絡みの事柄があります。本書の場合は六平太のかつての許婚小萩を妻としている山中伊織が、小萩と六平太との仲を邪推していることです。
それとは別に、六平太と義妹佐和との関係や、六平太のかつての放蕩時期に女に産ませた子との関係や、六平太が日ごろ転がり込んでいる髪結いのおりきとの成り行きなど、現代の人間にも通じる人間関係が付きまとっています。
こうした設定は気のきいた小説であればどれにも設けられている話ではありますが、人気の物語はその設定が物語の世界観を邪魔せずに、うまく収まっています。勿論本書もそうで、前巻から本書にかけてこのシリーズの世界観が十分に展開されているのです。