付添い屋で身を立てる浪人秋月六平太は、旧知の北町奉行所同心・矢島新九郎から、「打ち首獄門にかけられる罪人の、市中引き廻しに同道していただきたい」と依頼される。引き廻しにされるのは、兇盗で知られる犬神の五郎兵衛。半年前、四谷の塩問屋に押し入って五百両を盗み、殺しも働いていた。三月前、隠れ家を密告する投げ文があり、捕縛されたという。だが隠し金の在処は白状していない。五郎兵衛は死を前に六平太へ不思議な言葉を残す。五郎兵衛一味の残党たちが、六平太の身辺をうろつきはじめるのに、時間はかからなかった。日本一の王道時代劇第九弾! (「BOOK」データベースより)
第一話 犬神憑き
付添い屋の秋月六平太は、北町奉行所の同心・矢島新九郎から「打ち首獄門にかけられる罪人の、市中引き廻しに同道していただきたい」と依頼される。隠れ家を密告され捕らわれた兇盗・五郎兵衛は、奪った金五百両の隠し場所を、打ち首と決まっても白状せずにいた。五郎兵衛は、死の直前、不思議な言葉を六平太に告げる。
第二話 宿下がりの女
新川の味噌屋「出羽屋」の娘・寿美は、つい最近、奉公していた武家屋敷から宿下がりをした。その直後から、編笠を被った侍に付け狙われるようになったという。寿美は、側室と家臣の密通をはからずも目撃してしまっていた。
第三話 となりの神様
六平太は鰻屋「兼定」の主人定松から、店で無銭飲食をしたまま出ていった亀助という男の居所を調べてほしいと依頼させる。亀助はどこの店に行っても金を払わない。だが、彼が長く滞在する店は必ず繁盛するというのだ。
第四話 嘘つき女
代書屋「斉賀屋」に勤める博江に呼び出された六平太は、ある少女が代筆を依頼した不穏な手紙の内容について相談される。一方、市中引き廻しとなった兇盗・五郎兵衛の一味の者たちが、六平太の身辺をうろつきはじめる。(「内容紹介」より)
付添い屋六平太シリーズの第九弾です。
罪人の市中引き回しの付添い(第一話)から、側室の密通を目撃した武家屋敷から宿下がりをした娘(第二話)、その男が店に来ると繁盛するという噂の男の物語(第三話)、博江に代筆を頼んだ娘に絡んだ人情話(第四話)と、六平太が活躍する場面の目立つ作品となっています。
そして物語の構成の面から見ると、第一話は本書全体を通して見え隠れする五郎兵衛の隠し金の発端となる話が、第三話ではファンタジックな話、第三話と第四話では心が豊かになる人情話と、バラエティに富んだつくりになっています。
その上で、全体を通して盗賊の五郎兵衛が残した金をめぐった物語が展開されるのです。
本書で特筆すべきは、何故か行方不明となっていた六平太が付き合っていた“おりく”の消息が少しですが判明します。
今後、新たに登場している博江という存在もあり、おりくとの仲がどのようになるものか、こちらも関心の対象となってくるのでしょう。