水上 勉 雑感
改めては何も言うことも無い巨匠です。その作品は多数にのぼり、直木賞を始め主な文学賞を総なめと言って良いでしょう。
最初に読んだ作品は映画に触発されて読んだ「飢餓海峡」で、社会派の推理小説作家という認識だったのです。しかし、その後三島由紀夫の「金閣寺」を読んだとき、その対比として「金閣炎上」という作品をを知りました。水上勉という作家はこのような作品も書くのだと新たな側面を知った気になり、その後「五番町夕霧楼」「越前竹人形」「越後つついし親不知」と立て続けに読んだものです。
ただ、それ以外読んでいないのも事実で、追いかけて読むには少々暗すぎたのです。歳をとった今なら読めるかもしれませんが、まだ若かった私には救いを見つけることが出来なかったのでしょう。
それももう30年以上も前のことで、読み終えた数少ない本の内容までははっきりとは覚えてはいません。しかし、特に「越前竹人形」はその文章の格調の高さに驚き、美しい日本語といえば三島由紀夫と言われていた時代に、この作品の文章の方が美しいのではないかと思ったものです。
水上勉の幼少期は決して恵まれてはおらず、貧乏故に寺へ修業に出されて大変な苦労をし、その頃の体験が「雁の寺」等に生かされていると、多分あとがきだったか解説だったかに書いてあったと思います。
決してライトノベルを軽んじるわけではないのですが、ライトノベルでは味わうことのできない感動がここにはあります。じっくりと読み込んでもらいたい作家の一人です。
[投稿日] 2015年04月20日 [最終更新日] 2015年5月23日