『血は争えない』とは
本書『血は争えない』は2026年4月に双葉社から472頁のハードカバーで刊行された、長編のアクション・エンタメ小説です。
新宿は歌舞伎町を舞台にしたあるヤクザの人生を描いた作品ですが、この作者の作品にしては今一つのめり込めない作品でした。
『血は争えない』の簡単なあらすじ
ページをめくるたび死の匂いが強まるー令和最高のヤクザ・アクション・エンタメ小説!1970年、母を亡くした15歳の不破隆次は、新宿・歌舞伎町の支配者である実父・王大偉に会いに行くが、相手にもされなかった。絶望の底で異母兄のヤクザ・近藤に拾われた不破は、王一族を守る「盾」として、血と暴力の道へと身を投じる。対立組織を拳ひとつで壊滅させ、一般人すら容赦なく蹂躙するその凶暴性から、いつしか「歌舞伎町の狂王」と呼ばれる。昭和から平成、王一族に害をなすヤクザ・警察官・政治家を次々と葬り死刑判決が下された史上最悪のヤクザだったが、その体に流れる「王の血」には、決して暴いてはならない禁忌の秘密が隠されていたー。(「BOOK」データベースより)
『血は争えない』の感想
本書『血は争えない』は、新宿歌舞伎町を背景とした不破隆次というヤクザものの人生を描いた作品です。
この作者お得意のバイオレンス作品ですが、物語としては今一つの面白さでした。
とはいえ、双葉社の文芸総合サイト「COLORFUL」では2025年の年間ランキング1位を獲得し、累計177万PVを突破した話題作だそうです( COLORFUL : 参照 )。
でも、同じ深町秋生のヤクザものである『ヘルドッグス 地獄の犬たち』などと比べると、物語のスケールも登場人物のキャラクターも及ばないと感じたのです。
確かに、『ヘルドッグス 地獄の犬たち』は警察小説でもありジャンルは異なるのかもしれませんが、物語の舞台はヤクザの世界であり、暴力、それも過剰な暴力描写があふれている点では同様です。
しかし、本書の場合、主人公の暴力が小さくまとまっているように感じたのです。
多分、それは暴力自体を物語の中に特別に位置づけていない『ヘルドッグス 地獄の犬たち』と異なり、本書の場合、不破隆次の生き方が王一族を守るという目的に縛られていることからくるのではないかと思います。
王一族は歌舞伎町を牛耳る総帥で政界やヤクザとも黒い繋がりを持つ台湾出身の権力者の王大偉を家長とし、その父の元で企業の経営を任されている長男の王英輝と次男の智文がいます。
ほかに、主人公の不破隆次が王大偉に会いに行ったとき放り出されそうになっていたのを助けてくれたのが、王大偉が正妻以外の女に産ませた暴力団岡谷組若頭の近藤傑志です。
これらの登場人物は個性的ですが、人気投票をしたら多分一番になるであろう人物がこの近藤です。
本書の主人公の不破隆次は、癌で死んだ場末のストリッパーだった母親の有紀子から、父親は新宿の「王大偉」であることを聞かされて育っていました。
隆次は、幼いころ土地の子供たちから石を投げられて左目の視力を失ってもいましたが、現在では歌舞伎町の裏社会を支配する王一族の一員であることに誇りを感じ、一族の力になるために必死で生きているのです。
そして、昭和45年、昭和53年、昭和62年、平成8年、平成14年、令和6年と時代は移り、それに合わせ主人公もまた成長し、王一族もまた数々の出来事に見舞われることになります。
その過程で、自分の生き方を王一族の守護という生き方に限定したものと思われます。
話は変わりますが、私は昭和45年大学浪人のために早稲田大学近くの新宿外山町にあった箱根山のふもとに下宿し、新宿三丁目末広通りにあった郷土熊本のラーメンチェーン店でアルバイトとしてラーメンを作っていたのです。
まさに本書と同じ時代の新宿で青春を送っていたのであり、本書でコマ劇場をはじめとする新宿の街の描写はなつかしさでいっぱいでした。
その新宿の街で繰り広げられる物語は、私の個人的な感想にもかかわらず、それなりに評価され、人気を博しているクライムストーリーです。
バイオレンス物語が好きな人にはたまらない物語なのかもしれません。