『黄泉がえり』とは
本書『黄泉がえり』は『黄泉がえりシリーズ』の第一弾で、2002年11月に新潮文庫から476頁の文庫として出版された、長編のSF小説です。
いかにも梶尾真治の作品らしく、熊本市を舞台としたSF作品で、非常の面白く読んだ一冊です。
『黄泉がえり』の簡単なあらすじ
あの人にも黄泉がえってほしい―。熊本で起きた不思議な現象。老いも若きも、子供も大人も、死んだ当時そのままの姿で生き返る。間違いなく本人なのだが、しかしどこか微妙に違和感が。喜びながらも戸惑う家族、友人。混乱する行政。そして“黄泉がえった”当の本人もまた新たな悩みを抱え…。彼らに安息の地はあるのか、迫るカウントダウン。「泣けるリアルホラー」、一大巨編。(「BOOK」データベースより)
『黄泉がえり』の感想
本書『黄泉がえり』は、梶尾真治お得意の、時間旅行もののホラーチックな長編のSF小説です。
ホラーチックとはいっても、死んだはずの人が生き返る(よみがえる)というだけのことであって、いわゆる「恐怖」ものとは異なります。
本書は草薙剛と竹内結子が主演の、そして柴崎コウの主題歌でも有名になった映画版「黄泉がえり」の原作です。
私にとっては映画の原作と言うよりも、本書『黄泉がえり』という作品があって後に映画化されたと言う方が正解なのです。
映画版と小説とではかなりな部分で違いがあり、映画しか見てない人は是非小説版を読むことをお勧めします。
この作家の特徴の一つとして郷土の熊本が舞台となる作品が多い、ということが挙げられます。
この作品もそうで、私の身近な町名が随所に出てきます。だからというわけではないのですが、この作品も素晴らしい作品です。
内容は改めて言うまでもないでしょうが、人の想いをこれほど身近に、飾らない普通の文章で語る作家も珍しいのではないでしょうか。
ちなみに、2019年の2月には2016年におきた熊本地震をモチーフに、本書の続編となる『黄泉がえり again』が出版されています。