『夜鳴きめし屋』とは
本書『夜鳴きめし屋』は、2012年03月に光文社から刊行され、2024年1月に光文社文庫から344頁の新装版の文庫として出版された、短編の人情物語集です。
『夜鳴きめし屋』の簡単なあらすじ
本所五間堀の鳳来堂は長五郎が営む居酒見世。夕方から朝まで開けていることから“夜鳴きめし屋”と呼ばれている。いわば江戸版・深夜食堂のこの見世には、母親譲りの腕前の肴を目当てに、大店の二代目、職人、武士から夜鷹まで、さまざまな客が訪れる。ある日、常連客のひとりで、かつて恋仲だった芸者・みさ吉の八歳の息子が現れーー。料理と酒と人の温もりが肚に沁みる人情譚の傑作! 巻末エッセイには山口恵以子氏が寄稿。内容紹介(出版社より)
『夜鳴きめし屋』について
本書『夜鳴きめし屋』は、本所、深川という江戸情緒あふれる土地を舞台に繰り広げられる、一膳めし屋を舞台にした宇江佐真理らしい人情劇です。
六編からなる物語ですが、これはもう長編というべきでしょう。
本所五間堀にある「鳳来堂」は、もともと今の店主長五郎の父親の音松がやっていた古道具屋でした。
しかし、音松亡き後、道具の目利きもできない息子の長五郎ではそのあとを継ぐこともできず、めしと酒を出す見世を出すことにします。
しかし、母も逝き、ひとり身となった長五郎は次第に見世を開ける時間も遅くなり、店の開くのが八つ(午後8時頃)で朝方までやっている「夜鳴きめし屋」となったのです。
この店には長五郎の人柄もあって、常連さんを始め様々な人たちも訪れ、色とりどりの人情劇が繰り広げられるのですが、そのうちに長松と惣助という七、八歳位の子供が食事に来るようになります。
そのうちの一人が、むかし、長五郎と思いを交わした娘の子らしく、長五郎はその子らの来るのが楽しみになり、何かと好みの料理を作り始めるのでした。
こうした、市井の人たちの人情を描かせたら宇江佐真理という作家さんはやはりうまいものです。
ただ、本書『夜鳴きめし屋』は宇江佐真理という作家の作品の中では決して出来が良いほうには入らない、どちらかと言えば平均的な物語だと思うのです。
それでもなお、その平均値がとても高いところにあって、物語としての面白さは十二分にもっているのが、宇江佐真理の作品だと思います。
