箱根駅伝を走りたい―そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく…風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」―純度100パーセントの疾走青春小説。(「BOOK」データベースより)
箱根駅伝を題材にした長編の青春小説です。
駅伝最高峰の舞台である箱根駅伝。その箱根駅伝で走る程の才能豊かな人間が一つのぼろアパートに集まっている、という舞台設定はあまりにも都合がよすぎると思われます。
しかし、その点に目をつぶれば物語の中に一気に引き込まれてしまいました。
主人公ハイジが一人の天才ランナーカケルを見つけたことで、ハイジが住む寮に暮らす面々と共に自身の夢であった箱根駅伝に挑戦しようする物語です。
私がもう走れない体になっているので特に思うのかもしれませんが、ただひたすら走るというその行為は人間としての本質であり、とても美しいと思うのです。そのことを改めて思い出させてくれた作品です。
勿論主人公ハイジやカケルの内面の葛藤や、チームが走ることへの障害など、物語もよくできていて、感情移入してしまいました。
箱根駅伝をテーマにした作品と言えば、警察小説でも有名な堂場瞬一のチームがあります。この作品は箱根駅伝本戦出場を逃した大学から、予選会で個人成績が上位に位置した選手が選ばれる学連選抜チームを主題とした作品でした。
また陸上スポーツをテーマとした作品と言えば佐藤多佳子の『一瞬の風になれ』も素晴らしい出来でした。