金子 成人

付添い屋・六平太シリーズ

イラスト1
Pocket


浅草元鳥越に住む浪人・秋月六平太の稼業は、付添い屋。裕福な商家の子女が花見や芝居見物に出かける際、案内と警護を担い身を立てている。血の繋がらない妹・佐和と暮らす居宅と、相惚れの仲である髪結いのおりきが住む音羽を往復しながら、借金三十両の返済に頭を悩ませる日々だ。信州十河藩藩士だった六平太は、十二年前、権力抗争に巻き込まれ家中を追われた。その原因ともなった義理の母の弟、杉原重蔵が江戸で目撃された。脱藩者で反逆者の杉原を、十河藩江戸留守居役小松新左衛門が許すはずもない。日本一の人情時代劇、風雲急を告げるシリーズ第三弾!(「BOOK」データベースより)

付添い屋・六平太シリーズ第三弾です。

●第一話 敵討ち
神田の口入れ屋「もみじ庵」から1日2両という破格の付添い仕事が舞い込む。依頼人は、塚原七兵衛という老年の侍。塚原は二年前、息子の敵を討つために信州から江戸へやってきた。六平太は敵討ちの付添いを頼まれる。
●第二話 用心箱
口入れ屋「もみじ庵」の斡旋した女が、奉公先の武家屋敷から金を盗んだという。逃げた女を見つければ、人宿組合から三両の礼金が入ると言われ、六平太は探索を引き受ける。犯人とされる女は、片方の眉がないという。
●第三話 安囲いの女
谷中に住む、おようという香聞きの師匠が付き添いを求めているという。おようは、月に三度か四度、麻布谷町へ行き、二日ばかり滞在して谷中に戻る。実は、谷中で煙草屋の隠居の妾をやりながら、麻布では三人の男からそれぞれ月に一両二分の手当てで囲われていた。
●第四話 縁切り榎
六平太は、材木商の飛騨屋の娘・お登世と、その友人であるおしのの灌仏会見物に付き添った。おしのは諸国産物を商う大店、日本橋「久野屋」の娘で、大名家の江戸屋敷に奥女中として奉公している。最近、お殿様の目にとまってしまい、このままでは寝所に行かされてしまうというのだ。(「内容紹介」より)

シリーズも第三弾ともなると、若干物語のペースに慣れてきたのでしょうか。作者の物語の作り方が上手いためなのか、若干、あまりのまとまりのよさに違和感を感じてしまったほどです。

でもこれは物語の世界観がきちんと成立しているということであり、上手くまとめればまとめたで文句を言う読者(私)もいい加減なものだと我ながら思ってしまいます。

ただ、世界観が出来すぎという感想は、若干マンネリを感じていることに通じるのではないかと危惧もしているのです。本書の場合、六平太の顧客でもある「飛騨屋」との繋がりの中に、六平太の旧藩とのしがらみを忍ばせる展開もあるようで、多分その心配はないのでしょう。

[投稿日]2016年11月06日  [最終更新日]2017年12月17日
Pocket

おすすめの小説

おすすめの痛快時代小説

軽く読める作品を上げてみました。どの作品も難しいことは考えずに、ただただ楽しいひと時を過ごすことのできる小説だと思います。
用心棒日月抄 ( 藤沢周平 )
青江又八郎は藩の政争に巻き込まれ、脱藩せざるを得なくなり、江戸へと逃亡する。用心棒稼業で暮らしながらも追手との戦いも待ち受けるのだった。
酔いどれ小籐次シリーズ ( 佐伯泰英 )
風采の上がらない身の丈五尺一寸の五十男の、しかしながら来島水軍流遣い手である赤目小籐次が、旧主の恥をそそぐために、単身で大名四藩に喧嘩を売る、爽快感満載の痛快活劇時代小説です。
紀之屋玉吉残夢録シリーズ ( 水田勁 )
門前仲町の芸者置屋「紀之屋」の幇間である玉吉を主人公とした、軽いハードボイルドタッチの読み易いシリーズです。
夜叉萬同心シリーズ ( 辻堂魁 )
北町奉行所隠密廻り同心である萬七蔵(よろずななぞう)は、一刀流の免許皆伝という腕前を買われ、奉行直属の隠密御用を命じられている「殺しのライセンス」を持つ同心です。
泣き菩薩 ( 田牧大和 )
若き日の歌川広重である定火消し同心の安藤重右衛門を主人公とした痛快時代小説で、同じ定火消し同心である西村信之介と猪瀬五郎太という仲間と共に事件を解決します。。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です