開発途中の物質過去射出機“クロノス・ジョウンター”には重大な欠陥があった。出発した日時に戻れず、未来へ弾き跳ばされてしまうのだ。それを知りつつも、人々は様々な想い―事故で死んだ大好きな女性を救いたい、憎んでいた亡き母の真実の姿を知りたい、難病で亡くなった初恋の人を助けたい―を抱え、乗り込んでいく。だが、時の神は無慈悲な試練を人に与える(「BOOK」データベースより)
梶尾真治が一番得意とする、時間旅行ものの連作短編のSF小説です。
「クロノス・ジョウンター」とは「時間軸圧縮理論」を採用したタイムマシンであり、過去に戻ればその反発で戻った過去の分以上の未来へ飛ばされてしまうという欠点を持っています。
この欠点のために、愛する人のために過去へ飛ぶと、最終的には自分は未来へと飛ばされてしまう、という自己犠牲の舞台が出来上がっているのです。
本書は全6話の短編集になっているのですが、各話毎にこのタイムマシンも改良されながらも欠点は欠点のまま残っています。
この手の時間旅行の話はこの作者のお手のものであり、多数の作品がありますが、この短編集は舞台設定のうまさでもあるのか、最も好きな作品のひとつです。
現在は徳間書店から文庫が出ているのですが、他にソノラマ文庫版もあります。
本書に収録されている短編作品「鈴谷樹里の軌跡」をもとに、伊藤英明、ミムラという役者さんで映画「この胸いっぱいの愛を」が製作されていますが、かなり改変されているようです。未見です。
また、アサミ・マートの画によりコミック化もされており、更には演劇集団キャラメルボックスによる舞台化もなされているそうです。残念ながらコミックも舞台もともに私は未見です。