短編なのですが、私が梶尾真治の作品で一番最初に読んだ小説です。もともと「地球はプレインヨーグルト」という短編集に納められていました。
この作品が梶尾真治の作家としてのデビュー作なのですが、表題作の「」の互いに異なる時間の中に生きる恋人同士が対面する場面での涙の描写は素晴らしいものがあります。安直なロマンチシズムと言ってしまえばそれまでなのですが、この作家の本質はこの作品にあるのだと思っています。
というのも、梶尾真治と言えばロマンティシズムとタイムトラベルを得意とする作家ですが、異なる時間軸に存在する恋人同士という設定そのものが、メルヘンチックなタイムトラベルの変形と言えるからです。
30年も前に読んだ短編を未だに覚えているのですから、相当私の波長にあったのでしょう。
ちなみに、この作家はロマンチックな作品だけではなく、「フランケンシュタインの方程式」や「地球はプレインヨーグルト」などちょっとブラックな笑いを持つ短編も書いているので是非一読してみてください。
本書は、2016年12月20日付で新版が出ましたので、本書リンクイメージも新版に差し替えました。なお、それまでの『梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇』は右に掲載しています。