藤原 伊織

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ひまわりの祝祭』とは

 

本書『ひまわりの祝祭』は、1997年6月にKADOKAWAからハードカバーで刊行され、2009年9月に角川文庫から544頁の文庫として出版された、長編のハードボイルド小説です。

 

ひまわりの祝祭』の簡単なあらすじ

 

妻が妊娠をかくしたまま自殺した。ショックで隠遁生活を送る秋山に、元上司から奇妙な依頼が来た。「一晩で500万、カジノで負けてくれ。」その日から、妻に似た謎の美女、やくざ、闇社会の大物などが現れ、執拗に付けまわされる。謎を解く鍵は、ゴッホの名画「ひまわり」だったー。直木賞・乱歩賞受賞第1作。名作『テロリストのパラソル』に並ぶ、疾走感溢れる展開と緻密な構成が秀逸なミステリの傑作。(「BOOK」データベースより)

 

ひまわりの祝祭』の感想

 

本書『ひまわりの祝祭』は、藤原伊織の長編ハードボイルドミステリーです。

 

妻の死以来怠惰な日々を送る主人公の前に、あるカジノで死んだ妻そっくりの女性が現れます。

その後、何かと面倒なことが起き始めますが、それらの出来事の中心にはゴッホの「ひまわり」があるらしいのでした。

 

ゴッホの8枚目の「ひまわり」の謎に加え、主人公の死んだ妻の死にまつわる謎もからめ、様々な個性的な人物が登場し、物語は展開します。

本作品は、この作家の会話の妙が十分に堪能できる作品であることに加え、エンタテイメント作品としての面白さがあります。

郷原宏氏の言葉を借りれば、本書の魅力とは「正確で美しい日本語、時代性を刻印した軽妙な会話、魅力的で彫りの深い登場人物群、奇想天外でしかも臨場感に満ちた物語展開」にあるのです。

また、誰かが本書を評して「愛の物語」と書いていましたが、まさにその通りではないでしょうか。

面白い小説として自信を持ってお勧めできます。

[投稿日]2015年04月19日  [最終更新日]2024年12月3日

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