『千里眼シリーズ』について
本『千里眼シリーズ』は、元航空自衛官の臨床心理士・岬美由紀を主人公とした長編のアクション小説シリーズです。
本稿は旧・小学館版ではなく、角川文庫版をその対象としています。
千里眼 クラシックシリーズ(2021年08月18日現在)
- 千里眼の死角
- ヘーメラーの千里眼
- トランス・オブ・ウォー
- 千里眼とニュアージュ
- ブラッドタイプ
- 背徳のシンデレラ
千里眼 新シリーズ (「クラシックシリーズ」の続編)(2021年01月12日現在)
- The Start
- ファントム・クォーター
- 千里眼の水晶体
- ミッドタウンタワーの迷宮
- 千里眼の教室
- 堕天使のメモリー
- 美由紀の正体
- シンガポール・フライヤー
- 優しい悪魔
- キネシクス・アイ
まず前提として、本『千里眼シリーズ』は、もとは小学館から発行された全十二巻のシリーズがあったもので、後に角川文庫から「クラシックシリーズ」として「完全版」と銘打たれて再刊されています。
そして、例えば著者自らがクラシックシリーズ第二巻の『千里眼 ミドリの猿』の「著者のあとがき」では、本書は改稿ではなく「大部分を新しいストーリー」として、「旧・小学館版のシリーズとは全く別の作品となります
」と書かれているなど、「クラシックシリーズ」が現時点での正式版だと思えます。
以上の次第で、本稿は角川版のクラシックシリーズを対象としていますし、旧・小学館版のシリーズは未読のままになると思います。
もともと、本『千里眼シリーズ』についてはそのシリーズ名は聞いていたのですが、千里眼千鶴子という名前も取りざたされていたためオカルトものだと勝手に思い込み、読まずにいたものでした。
それはともかくとして、本シリーズの著者松岡圭祐の別作品『高校事変シリーズ』を読んだところこれが非常に面白く、本シリーズもアクション中心のエンタテイメント小説であったことから読み始めたものです。
『千里眼シリーズ』の感想
本『千里眼シリーズ』の主人公岬美由紀は、元航空自衛官であり、不祥事により自衛隊を退職後、動体視力に優れたその能力を生かして臨床心理士として活躍しています。
自衛隊を辞めた美由紀は知人の友里佐知子が院長を務める東京晴海医科大付属病院に勤務することになるのですが、この友里佐知子が患者の心の裡を知る技術に長けていたために「千里眼」と呼ばれていたのです。
後に美由紀が戦闘機のパイロットでもあったため動体視力に優れていたこともあり、人の表情からその内心をも読み取ることに優れていたことから、美由紀自身が「千里眼」と呼ばれるようになったそうです。
本『千里眼シリーズ』第一巻では恒星天球教というオカルト教団が様々なテロ行為を仕掛け、それを岬美由紀が阻止するという流れであり、シリーズの敵役としてこの恒星天球教が設定されているものと思っていました。
ところが、第二巻になると、恒星天球教は存在だけ指摘されるだけで、新たに「メフィスト・コンサルティング・グループ」なる存在が岬美由紀の前に立ちふさがります。
本シリーズの真の敵役はどちらなのか、または他にもいるのかについてはまだ全く分かりません。
また、『千里眼シリーズ』の第二巻『ミドリの猿 完全版』は第三巻『運命の暗示 完全版』に続くとなっています。調べてみるとこの部分だけが二分冊になっているようです。
ほかの巻は、一応個別の巻だけでも読むことができると思われます。
結局、このシリーズの構成も含め、二つの団体の関係や敵役の存在についてはシリーズの続刊を読まなければ分からないようです。
ともあれ、文章のタッチや物語の構成など、『高校事変シリーズ』には若干及ばないものの、本シリーズは本シリーズとして、痛快アクション小説としてかなり楽しみな時間を持てそうです。
続巻を読み進める中で本稿も修正していこうと思っています。