秋山 香乃

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物語自体は新選組そのもののお話です。特別に新しい解釈があるわけではありません。ただ、視点が藤堂平助ということであり、それに伴う新しい見え方というものはあります。とくに、秋山香乃という作家独特の新選組の捉え方があり、その捉え方を気にいるかどうか、で本書の評価も大きく変わってくることと思われます。

秋山香乃という作家の個性的な表現として一番に挙げるべきは、藤堂平助と土方歳三との関係が、「新選組の本を読む ~誠の栞~」というサイトの管理人、東屋梢風さんの言う「一種のBL小説とも解釈できそうな」表現でしょう。

例えば、新選組の厳しい隊規に恐れをなして逃亡をはかった隊士を斬首した土方について、藤堂に「非情な土方に藤堂の胸がざわめく。」とか、「背筋が寒くなる思いだが、今なおあの男に魅せられる。」などと言わせています。このような藤堂の心の揺らぎが、随所で繰り返されるのです。藤堂の反発を覚えながらも離れられないこのような心の揺れは、男のそれではなく、男に惚れた女の心の動きと考えれば納得できるのです。

このBL的雰囲気を嫌いでない人には土方にしろ藤堂にしろ、一種のヒーロー像として感情移入の対象になりやすいかもしれません。

物語も後半になると歴史小説としての面白さも満喫できます。物語の流れとして、歴史的事実の解釈も自然であり、違和感なく読み進められます。藤堂の伊東甲子太郎の高台寺党への参画の理由も、前記東屋梢風氏が「義理人情の世界」と説明されているように、種々の打算の結果ではない人間としての行動であったとの解釈も自然です。

この作者には本書『新選組藤堂平助』の他に、鳥羽・伏見の戦以降の新選組、土方を描いた『歳三 往きてまた (文春文庫)』、会津落城以降の斎藤一らを描いた『獅子の棲む国 (中公文庫)』などがあります。初期の三部作のようです。

[投稿日]2015年10月15日  [最終更新日]2015年10月15日
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新選組を描いた作品は数多くあります。以下はその一部です。
新選組始末記 ( 子母澤 寛 )
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壬生義士伝」 ( 浅田 次郎 )
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新選組 幕末の青嵐 ( 木内 昇 )
これまでとは異なり、個々の隊士の視点から、新選組を立体的に描いた作品です。この本は掘り出しものでした。他に地虫鳴くという作品もあります。
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