桐野 夏生

村野ミロシリーズ

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親友の耀子が、曰く付きの大金を持って失踪した。被害者は耀子の恋人で、暴力団ともつながる男・成瀬。夫の自殺後、新宿の片隅で無為に暮らしていた村野ミロは、耀子との共謀を疑われ、成瀬と行方を追う羽目になる。女の脆さとしなやかさを描かせたら比肩なき著者の、記念すべきデビュー作。江戸川乱歩賞受賞!(「BOOK」データベースより)

 

村野ミロという女性を主人公とした、ミロシリーズ第一作の長編のハードボイルドミステリー小説です。

 

本書の主人公は普通の一般人です。広告会社をやめ、貯金を食いつぶしていた毎日だったところで、成瀬により探偵もどきの行動をすることになっただけです。

つまり、恋人である筈の広瀬という男が預けた大金を持ったまま耀子が失踪したというのです。そこで、親友のミロが行方を知っているだろうと、広瀬と共に耀子の行方を探すことになります。

この主人公のミロは、夫を自殺という形で亡くしており、いまだその衝撃から抜け出すことができないでいる、普通の女性です。

とはいえ、理不尽な要求に対しては立ち向かうだけの向こうっ気の強さは持っており、また、父親譲りの調査業のうまさも持っているようです。

しかし、エンターテインメント小説としてみると、私の好みの物語とは微妙にずれています。それは多分物語のテンポだと思われます。

つまり、女性を主人公にした小といえば、 大沢在昌の『魔女シリーズ』や 月村了衛の『ガンルージュ』といった作品を思い出しますが、これらの作品とは明らかに物語のリズムが異なるのです。

 

 

本書の場合、人物の行動を緻密に描き出しているのですが、同時に心象をも丁寧に描写しています。

行為の客観面のみを描く厳密な意味でのハードボイルドの手法ではなく、主観面をも描写していく本書の描き方は、行動に伴うミロの内面に重きを置いているようです。

そのうえで、自分の信念はぶれることなく、信じるところに従って突き進むという生き方の意味でのハードボイルド小説と言えるでしょう。

 

ハードボイルド小説とはいえ、主人公のミロは腕っぷしが強いわけではありません。ともに行動することになる成瀬からはかなり暴力的な扱いも受けています。

それでもなお、ミロは自分自身のために、失踪した親友の耀子を探し続けますが、その過程でアクションが展開されることはありません。

ただ、耀子の恋人で会った広瀬と共に、または広瀬の目を出し抜いて新たな手掛かりを見つけ出し、そして意外な事実を見つけ出すのです。

 

決して派手な展開ではないこの物語は、私の好みにピタリと合致するものではありませんが、主人公のミロのこれからが妙に気になる物語でもあります。

続編を読んでみたいものです。

[投稿日]2019年07月01日  [最終更新日]2019年7月1日
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桐野夏生 | ダ・ヴィンチニュース
1951年、石川県生まれ。93年、『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。著書に『柔らかな頬』(直木賞)、『OUT』(米国エドガー賞候補)など多数。

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