石田 衣良

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楽天Booksは キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇 (文春文庫) [ 石田衣良 ] へ。


誰にだって忘れられない夏の一日があるよな―。高校時代のタカシには、たったひとりの兄タケルがいた。スナイパーのような鋭く正確な拳をもつタケルは、みなからボスと慕われ、戦国状態だった池袋をまとめていく。だが、そんな兄を悲劇が襲う。タカシが仇を討ち、氷のキングになるまでの特別書き下ろし長編。(「BOOK」データベースより)

「池袋ウエストゲートパーク(IWGP)」シリーズの番外編です。

池袋のキングこと安藤崇(通称タカシ)の誕生秘話が、いつもの通り主人公である真島誠(通称マコト)の語りで記されています。

「池袋ウエストゲートパーク(IWGP)」シリーズは、真島誠を語り手とする青春ハードボイルド小説であり、2000年の4月から6月まで、TOKIOの長瀬智也主演で放送されたテレビドラマの原作です。

シリーズを通してその時代の社会的問題をテーマとして取り上げ、池袋のトラブルシューターであるマコトのもとに持ち込まれる事件を、タカシらの力を借りて解決していく形式の物語です。

本書はシリーズの番外編であり、主人公であるマコトとタカシの青春時代、タカシが如何にして池袋のGボーイズのキングになったのか、が描かれています。

タカシの兄タケルは、不良の名門校として有名であったマコトとタカシの母校でもある都立豊島工業高校のボクシング部の部長をしていました。人望も強さも兼ね備えていたタケルは、数十もあった池袋のチーマーたちを一つにまとめようとしていたのです。

群れるのが嫌いなマコトらは、興味本位でハシヅメとうい男がリーダーのオレオレ詐欺のグループに近づきますが、一日でやめてしまいます。二人の落とし前をタケルに取らせようとしたハシヅメは、タケルの足首に怪我をさせてしまいます。

その後、新宿を制覇した埼玉のチーマーのグループが、池袋にやってこようとしてタケルと衝突をするのでした。

こうして見ると、ヤンキーもののコミックのようでもあります。例えば渋谷のチーマーたちの争いを描いた山本隆一郎の『サムライソルジャー』(全27巻)というコミックがあります。まあ、この手のヤンキーものは漫画の人気分野の一つでもあり、ストーリーも似たものが多いのですが、本書のカラーギャングの設定に似た、それなりに読み応えのあるコミックの一つとして挙げて見ました。

もう一作、ヤンキーもののコミックを挙げると、実写映画化もされた高橋ヒロシの『クローズ』(完全版全19巻)があります。この作品も登場人物が高校生でありながらも授業風景や、先生たちの姿は全くと言っていほどに出てこず、常に高校生たちの喧嘩三昧の日々が描かれているのですが、ある種実録ものに至る前の東映ヤクザ映画の、任侠の世界に似た世界観が人気になっているように思われます。

他にも多分面白い作品はあるのでしょうが、この手のコミックを私があまり知らないため、範囲が限定される中での選定です。

こうしたヤンキー漫画を取り上げたのも、本書『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇』が、そうした雰囲気を持っているからであり、後のマコトが主人公としてハードボイルドタッチの物語として登場する「池袋ウエストゲートパーク(IWGP)」シリーズとは微妙に雰囲気が異なるところにあります。

本書ではシリーズ本編の持つ社会的なメッセージは後退して、血の気の多い若者の成長譚になっているのです。即ち、ギャング同士の抗争の末に兄タケルの代わりにとなって、タカシがGボーイズのボス、キングとして登場することになる裏話なのですが、タカシの話であると同時に、マコトの成長譚でもあるのです。

「池袋ウエストゲートパーク(IWGP)」シリーズの面白さの一つの側面を切り取った物語とも言えるかもしれません。

[投稿日]2017年11月20日  [最終更新日]2017年11月20日
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IWGPは私たちの物語だ 『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇』
人気があって当然だ、と思った。何故ならそれは、私たちの小説だったから。
石田衣良 IWGP|文藝春秋|オフィシャルサイト
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