神様のカルテ

本書『神様のカルテ』は、『神様のカルテシリーズ』の第一弾で、文庫本で271頁の長編小説です。

現役の医者が描き出す「ロウソクの炎のような」「小さな灯火がともるような物語」で、第十回小学館文庫小説賞を受賞し、第七回本屋大賞2位に入っています。

 

『神様のカルテ』の簡単なあらすじ 

 

栗原一止は信州にある「二四時間、三六五日対応」の病院で働く、悲しむことが苦手な二十九歳の内科医である。職場は常に医師不足、四十時間連続勤務だって珍しくない。ぐるぐるぐるぐる回る毎日に、母校の信濃大学医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば最先端の医療を学ぶことができる。だが大学病院では診てもらえない、死を前にした患者のために働く医者でありたい…。悩む一止の背中を押してくれたのは、高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。二〇一〇年本屋大賞第二位、日本中を温かい涙に包み込んだベストセラー、待望の文庫化。(「BOOK」データベースより)

 

本書『神様のカルテ』は、目次では第一話「満天の星」から第二話「門出の桜」、第三話「月下の雪」まで短編集のような構成になっています。

しかし、先に書いたように連作というよりも一編の長編小説となっている作品です。

本書の主人公栗原一止は、松本平の中ほどにある「本庄病院」に勤務し五年目になる二十九歳の内科医です。

第一話では、栗原一止を始めとする登場人物や、一止の住む「御嶽荘」を紹介しています。

そして、新章に至る本『神様のカルテシリーズ』の主題ともなっている、一止は大学病院へ行って大学でしか学べない高度医療を学び、経験を積むべきだという同期の医師砂山次郎の言葉が聞かれます。

その後第二話では、胆のう癌で入院している早くに夫を亡くした、七十二歳で身寄りのいない安曇さんという孤独な患者を中心に描かれます。

大学病院で、あと半年の命でもう治療ができないので好きなことをして生きるように言われ、本庄病院に入院したいといてきた患者さんです。

一人で怒り、悩む一止を温かく包み込む妻のハルとの馴れ初めや、「学士殿」の引き起こした事件なども語られます。

最後の第三話では、地域医療の現場で一止を待つ患者さんと、将来の地域医療や一止のことを考え大学病院へ行くことを考えるよう勧める先輩医師や次郎などがいて、一止は一つの決断を下すのです。

 

『神様のカルテ』の感想

 

本書『神様のカルテ』の主人公は、「本庄病院」という基幹病院に勤務する、夏目漱石を熟読するあまり、話し方までも古風となってしまった栗原一止という内科医です。

この人物が、本庄病院消化器内科部長の大狸先生や副部長の古狐先生、それに救急部の外村看護師長、病棟主任看護師の東西直美、新人看護師の水無陽子、学友だった外科医の砂山次郎といった人たちに助けられながら勤務しています。

一止はまた、現在、信濃大学医学部付属病院からの医局に入らないかという誘いに悩んでいます。

通常、六年間の医学部での勉強を終えた医学生は八割が大学の医局に属し、残りの二割がどこかの病院に就職するそうです。一止はその二割に属し、直接「本庄病院」に就職した変わり者です。

医局制度には、山崎豊子の『白い巨塔』に描かれているような批判もありますが、医局制度のおかげで地域医療が成り立っていると言っても過言ではないと作者は言います。

個々の病院が急な医者の退職などに対応することは難しく、医局という医者をプールしている組織から派遣される医者がいなければなり立たないのだそうです。

結局、人事権を握っている医局が力を持ち、その長である教授が絶大な権力を握ることになるのです。

 

 

とはいえ、最先端の医療を学ぶことができるのも大学病院であり、そうした医療を学ぶことが、結局は地域の患者さんたちを助けることになる、と次郎は言います。

しかし、一止は大学病院に行くことは、現在病気で苦しんでいる患者さんたちを見捨てることではないか、と結論が出ないでいるのです。

 

そうした医局の持つマイナス面や、現在の地域医療制度に対する様々な点への問題提起も含みつつ、個々の患者と医者などの人間ドラマを描き出しているのが本『神様のカルテシリーズ』です。

そのシリーズの中心にいるのが変人と言われる栗原一止という医者であり、本『神様のカルテ』を第一巻とする『神様のカルテシリーズ』なのです。

一止の医者としての懊悩をもユーモアを交えて描き出してある心の底から惹き込まれるシリーズです。

 

患者として忘れてはならないのが七十二歳の胆のう癌の安曇さんという患者さんです。

やさしげな笑顔で、いつも人の心配をしている、一止の方が心洗われる人であり、北アルプスの山々をなん時間も眺めるのが好きな人です。

一止の名前を「正しい」という字だと指摘したのも安曇さんでした。

「一止」という名前は、そのままくっつけると「正」という字になります。一止の父親が遊び心でつけたものでした。

この安曇さんを巡り、悩み、涙を流し、一止は一つの区切りをつけるのです。

そこで寄り添う妻のハルさんもまた実に魅力的な人物です。

 

本書『神様のカルテ』の解説を、『鹿の王』で2015年本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞された上橋菜穂子氏が書かれています。

その解説の冒頭で書かれていたのが、「ロウソクの炎のような、小さい静かな灯火が本からそっと移ってきて胸の底に灯され、・・・」という文章です。

まさに本書『神様のカルテ』は「ロウソクの炎のような」「小さな灯火がともるような物語」であり、他に言葉はいりません。

私の大好きな、大切なシリーズです。

神様のカルテシリーズ

『神様のカルテシリーズ』は、現役の医師が描き出す、地域医療や医師と家族、患者と先端医療などの問題、それに「命の重さ」などについて考えさせられる、しかし面白く心に沁みる物語です。

 

神様のカルテシリーズ(2021年02月07日現在)

  1. 神様のカルテ
  2. 神様のカルテ2
  1. 神様のカルテ3
  2. 神様のカルテ0(短編集)

新章 神様のカルテシリーズ(2021年01月04日現在)

  1. 新章 神様のカルテ

 

『神様のカルテシリーズ』の概要

 

本『神様のカルテシリーズ』の主人公は、信州の病床数四百床を有する地域の基幹病院である「本庄病院」に勤務する栗原一止というる五年目の内科医で、夏目漱石の「草枕」をこよなく愛し、話し方までもいささか古風な、変人と呼ばれている人物です。

この「本庄病院」は、「24時間、365日対応」という看板を掲げているため、救急車の音が途切れません。特に、一止が当直の時は患者数が多いのが有名であり、「引きの栗原」と呼ばれています。

本『神様のカルテシリーズ』では、第一義に医師のあり方、医療への関わり方が問われています。具体的には、医療現場での患者への誠実な対応と先端治療の勉強という二律背反の問題です。

勉強するには現場を離れなければならず、患者に向き合うと勉強ができないという問題に直面する主人公栗原一止の姿が描かれています。

そして各巻ごとに例えば一巻目では地域医療や終末医療の問題などのテーマも取り上げられています。

 

「神様のカルテ」と銘打たれたこのシリーズは、勿論医療現場の描写も分かりやすく、医師や看護師らの命に対する取り組みは、現役の医師ならではの雰囲気と臨場感とをもたらしています。

つまりは現役の医師だという著者自身が日常的に直面しておられる問題が小説にも反映していると思われます。

こう言うと重そうなテーマのようですが、優しく軽妙な語り口と、主人公やその妻ハル、彼らの住んでいる特殊なアパートの同居人たち、そして勤務先の医師や看護師といった登場人物らのユーモアに満ちた人物造型は、とても読みやすい物語として成立しています。

 

このシリーズは短編集の『神様のカルテ 0』も含めて全四巻で一旦終わり、2019年1月、新たに『新章 神様のカルテシリーズ』が始まりました。

新章は、一止が本庄病院の医師としての立場はそのままに、信濃大学病院の院生として医局に入り、最先端の医療技術を学びながらも院生としての研究をしなければならないという忙しい立場にいます。

更には、愛妻ハルとの間に娘小春が生まれており、新章が始まるまでの二年という期間が感じられるのです。

 

『神様のカルテシリーズ』の登場人物

 

登場人物としては、本庄病院関係では、まず一止のいる消化器内科の部長の大狸先生と副部長の古狐先生がいます。共に超ベテランであり、驚くべき内視鏡のテクニックの持ち主です。

看護師として、救急部看護師長の外村さん、三十何歳かで独身で有能な美人看護師です。

次いで病棟主任看護師の東西直美がいます。二十八歳で主任となった極めて優秀な看護師で、いかなる場面でもその冷静な対応には定評があります。

そして、新人看護師の水無陽子砂山次郎がいます。一旦は外科医局に入ったものの大学病院の人事により、本庄病院の外科へと派遣されてきました。

 

一止の私生活面では、「御嶽(おんたけ)荘」をまず紹介しなければなりません。築五十年を超える幽霊屋敷の二階建ての木造家屋であり、元は旅館であった建物を今は下宿として利用されている建物です。

その「御嶽荘」二階の「桜の間」に、一年前に結婚した世界的にも名の知られた山岳写真家である妻のハルさんと共に住んでいます。

その「桜の間」の直下にある「桔梗の間」に通称「男爵」がおり、二階奥の部屋の「野菊の間」の通称「学士殿」が住んでいます。

「男爵」は年齢不詳でありいつも古風なプライア―をくゆらせている、鬼才の絵描きです。一方「学士様」は、いかにも君子然としていて、信濃大学文学部哲学科、大学院博士課程に所属し、ニーチェ研究に没入している博識の青年です。

この「御嶽荘」の仲間が一止のもう一つの人生の顔を見せてくれる場所でもあります。

 

医者が主人公の物語は数多く、一昔前は山崎豊子の『白い巨塔』がありましたし、今では海堂尊の『チーム・バチスタの栄光』をはじめとする一連の物語があります。

 

 

他にコミックでも『ブラックジャック』、『ブラックジャックによろしく』、『ドクターX』『医龍』などキリがありません。これらの作品を原作としてテレビドラマでも多数作られています。

 

 

テレビドラマと言えば大人気となったアメリカの『ER 緊急救命室』は、私にはめずらしくけっこうはまって見ました。

医療関連のテーマと人間ドラマとがよく描かれていたのです。こうして見ると、日本の医療ドラマは見ていない私ですが、実際見ると面白いのかもしれないと思えてきました。

 

 

ちなみに、本『神様のカルテシリーズ』は、櫻井翔主演で2011年と2014年に映画化されています。

妻ハルを宮崎あおいが、砂山次郎を要潤が演じ、二作が作られました。なかなかの出来だったと記憶しています。
 

 
また、、2021年2月からは福士蒼汰主演で、 清野菜名、大島優子という役者さんたちによりテレビ東京でテレビドラマ化されるそうです。

 

 

また、石川サブロウや本多夏巳の手によって、コミック化もされています。

 

夏川 草介

夏川 草介』のプロフィール

 

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書で2010年本屋大賞第2位、映画化もされた。他の著著に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『本を守ろうとする猫の話』がある。
引用元:夏川草介 | プロフィール | Book Bang -ブックバン-

 

夏川 草介』について

 

この夏川草介作家には2021年05月現在、シリーズ作品としては『神様のカルテシリーズ』が0から3までの四冊と、『新章 神様のカルテシリーズ』と銘打たれた新シリーズが一冊出ています。

この『神様のカルテシリーズ』の一巻目は本屋大賞の二位を受賞していますし、各巻とも数十万部の発行数を誇っていますから、このシリーズの面白さは保証済みと言えるでしょう。

ほかに医療関係の作品として『神様のカルテシリーズ』で書くには重すぎるとして別に書かれた『勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~』という終末医療を扱った作品があり、さらに現在進行のコロナ診療の最前線の姿を描いた『臨床の砦』という作品があります。

医療関係以外の作品として、『本を守ろうとする猫の話』という作品は「本」の大切さを訴えた作品であり、またほかに民俗学を通して学ぶこと、生きることの意味を考える『始まりの木』という長編小説があります。

 

このように、医療関係以外の作品も書かれている夏川草介という作家さんですが、その根底に流れる“生きる”ということの大切さを様々なかたちで訴えておられるようです。

そしてそのためには読者が楽しく読める作品である必要があるとして、医療の重く、暗くなりがちな現場も、ユーモアを交えた希望の持てる作品として仕上げられているようです。

こうして、夏川草介という作家の特徴でもあるユーモラスな、そして美しい信州の風景も交えながらの小説は映画やテレビドラマ、コミックといったほかのメディアでも取り上げられるようになっています。

 

先にも述べたように夏川草介という作家は医療関係とは異なる『始まりの木』のような、民俗学をテーマにした作品も書かれています。

そこでは、学問をするということの意味、使命感を持ってしなければ堕落してしまう学問の大切さを、古谷准教授の口を借りた夏川草介という作者の叫びが示されています。

 

 

そして、コロナ禍の現在、『臨床の砦』という作品が、緊急出版されました。

報道で見聞きするコロナ診療の第一線の様子がリアルに描き出されています。

テレビのニュースで見聞きする以上の緊迫した医療現場の様子がそこにはありました。医療には素人の私にも文字通りに命を懸けて治療にあたっておられる関係者の努力が描かれています。

 

 

ところで、夏川草介というペンネームは、著者の大好きな作家の名前からできているそうです。

つまりそれぞれに夏目漱石、川端康成、漱石の「草枕」、芥川龍之介から一文字ずつ取っているとのことで、著者自身、こうしたウィットのあるお医者さんなのでしょう。

このように夏川草介という作家自身がかなりの本好きのようで、だからこそ『本を守ろうとする猫の話』のような、本を読むことの大切さを訴えようとする作品を書かれたのでしょう。

心地よい感動と、読後感をもたらしてくれるこの作者はお勧めです。

 

 

お医者さんでありながら小説をもかかれている人と言えば、森鴎外もいますがこの人は別とすると、まずは「北杜夫」の名前が挙がると思います。

次いで、「渡辺淳一」、そして今の一番は『チーム・バチスタの栄光』などのミステリーが人気の「海堂尊」でしょうか。

他にも久坂部羊中山祐次郎大鐘稔彦知念実希人などいった人たちの名が浮かびます。

このほかにちょっとネットを見ると「帚木蓬生」、「加賀乙彦」、「永井明」などの名前が挙がります。これらの他にもいらっしゃるでしょう。

 

 

ともあれ、そんな中でも夏川草介という作家の作品は私が一番好む作品を書かれているようです。

今後の作品を期待したい作家さんです。

バトル・ロワイアル II 鎮魂歌(レクイエム)

社会現象を巻き起こした大ヒット作の続編であり、深作欣二監督の遺作となったバイオレンスアクション。前作から3年、反BR法組織“ワイルドセブン”を率いる七原秋也を倒すためにBR法が改正。政府は42人の中学生を拉致し、七原秋也のアジトに進入させる。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

本作は高見広春の作品を原作とする映画ではありません。前作の「バトル・ロワイアル」の続編として制作されたものです。ですから、本来はここで挙げるべき性格の映画とは違うのかもしれませんが、一応続編ということで挙げておきます。

 

本作品制作の途中で深作欣二監督が亡くなられ、息子である深作健太が監督を引き継いで完成させましたが、前作ほどの評判にはなりませんでした。

バトル・ロワイアル 特別篇

深作欣ニ監督、ビートたけし出演のバイオレンスアクションに追加シーンを加えた特別編。新世紀教育改革法に基づき、無人島で中学生が殺し合う。“<東映 ザ・定番>”。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

監督深作欣二の手になるアクション映画。

 

ビートたけしが冒頭だけではあるけれども出演していました。第24回日本アカデミー賞では優秀作品賞、優秀監督賞、優秀主演男優賞他を受賞し、第43回ブルーリボン賞の作品賞、そして主人公を演じた藤原竜也個人として同新人賞を受賞しています。映画としてはまあ面白かったと思います。

クエンティン・タランティーノが本作に惚れこんで映画ランキングでも一位を与えています。

 

続編として「バトル・ロワイアルII 鎮魂歌」が製作されています。

 

 

なお、上記「バトル・ロワイアル」のリンクは劇場公開版に追加撮影シーン、未公開シーンを加え、CG修正を施した本編を収録してある「特別編」です。通常の劇場公開版には下のリンクから入ってください。

 

バトル・ロワイアル

西暦一九九七年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。城岩中学三年B組の七原秋也ら四十二人は、修学旅行バスごと無人の島へと拉致され、政府主催の殺人実験を強制される。生還できるのはたった一人。そのためにはただクラスメイト全員を殺害するのみ―。現代日本を震撼させたジェットコースターデスゲーム・ノヴェル、ついに文庫化。( 上巻 : 「BOOK」データベースより )

“死のゲーム”の開始後十八時間、混乱のうちに既にクラスメイトの半数が死亡していた。秋也は中川典子、転校生の川田章吾とともに政府への逆襲を誓うが、その前に殺人マシンと化した桐山和雄が立ちはだかる。生死の狭間で彼らそれぞれが守ったのは、意志か、誇りか、約束か。中高生を中心に熱狂的な支持を得た新世代青春小説の金字塔。( 下巻 : 「BOOK」データベースより )

 

中学生同士の殺し合いというセンセーショナルな内容で話題になった、長編の新世代の青春小説(?)です。

 

極東に存在する「大東亜共和国」という全体主義国家が舞台です。

七原秋也ら本書の登場人物たちは修学旅行のバスの中で眠らされ、とある島で目覚めます。そこで、最後の一人になり生き残るべくクラスメイトを殺さなければならず、生徒の数だけの人間ドラマが展開されます。

 

中学生同士の殺し合いという内容が内容である上に、深作欣二監督による映画化で話題になった小説です。

設定された国家制度そのものは少々現実感が無く、感情移入がしにくいとは感じました。この世界の状況設定をもう少し書き込んでくれていたらとも思ったものですが、背景説明が冗長になっても物語本体のゲーム性が失われそうだし、難しいところなのでしょう。

 

物語の内容自体は少々長いきらいはあり、登場人物が中学生であるために筋立てが少々無理と感じるところもあったりと、小説としての完成度は決して評価できません。しかし、結構面白く読みました。最後のオチもその荒さに目をつむればまあ許せる範囲内ではないでしょうか。

でも、何といっても中学生のクラスメイト同士の殺し合いという設定そのものを受け入れられない人が少なからず居るのと思われますし、そう感じるのが当たり前でしょう。

私は虚構は虚構として、映像でもスプラッターでさえ(あまりグロくさえなければ)受け入れる人間なので、物語自体が面白いかどうか、だけが問題なのです。この設定そのものを面白いと感じる感情こそが問題なのかも知れませんが。

 

本書での救い、と言っていのかどうかは分かりませんが、性描写がないことでしょうか。大人向けの漫画版ではこのエロの要素が増えているそうです。

高見 広春

高見広春という作家は2015年1月現在、「バトル・ロワイアル」一冊しか出版していないようです。

この「バトル・ロワイアル」という作品は第5回日本ホラー小説大賞の最終候補として残ったものの、中学生のクラスメイト同士が殺し合う、というその内容から撰者に拒否され、選に漏れたそうです。

何より、深作欣二監督の手で映画化されたのをきっかけに国会でも取り上げられるほどの社会的関心を集めました。