『黒く塗れ』とは
本書『黒く塗れ』は『髪結い伊三次捕物余話シリーズ』の第五弾で、2003年9月に文藝春秋から刊行され、2006年9月に文春文庫から350頁の文庫として出版された連作の人情時代小説集です。
『黒く塗れ』の簡単なあらすじ
お文は身重を隠し、年末年始はかきいれ刻とお座敷を続けていた。所帯を持って裏店から一軒家へ移った伊三次だが、懐に余裕のないせいか、ふと侘しさを感じ、回向院の富突きに賭けてみる。お文の子は逆子とわかり心配事が増えた。伊三次を巡るわけありの人々の幸せを願わずにいられない、人気シリーズ第五弾。(「BOOK」データベースより)
『黒く塗れ』について
本書『黒く塗れ』は『髪結い伊三次捕物余話シリーズ』の第五弾の連作の人情時代小説集です。
伊三次とお文の間には一人目の子が、不破家には龍之介に次いで二人目の子が生まれ、それぞれの家庭の姿が描かれます。
とくに、不破家の龍之介の成長が印象的な本編です。
第一話目 「蓮華往生」
この話は、天啓寺の不正という一件よりも、てやと喜久壽という女の立場の違いを描き出した一編でした。
第二話目 「畏れ入谷の」
江戸時代という封建時代ならではの事情を背景に、夫婦相互の想いを記した一編です。
伊三次との子をお腹に抱えたお文と、二番目の子を産んだばかりのいなみ、そして、高木茂助とその妻という三組の夫婦のそれぞれのありようが心に沁みる一編で、龍之介が最後に叫んだ言葉が耳に残ります。
第三話目 「夢おぼろ」
「夢おぼろ」はほのぼのとした話です。竜之介が思いのほかに成長している姿がありました。
第四話目 「月に霞はどでごんす」
この話は事件もさることながら、お文の初産の苦労、そして夫伊三次の所在なさが描かれています。お文の子は逆子であり、伊三次はもちろん、子が生まれたばかりの友之進も、そして緑川も喜久寿も、お文の身体を心配しているのです。
第五話目 「黒く塗れ」
タイトルの「黒く塗れ」はストーンズの名曲「黒く塗れ」からとったというタイトルだそうで、だとすればこの話はタイトルが先にありきだったのでしょうか。
と思ったら、著者本人の「あとがき」によれば、そもそもは矢沢永吉の「黒く塗りつぶせ」という楽曲のタイトルがあり、しかし小説のタイトルとしては「黒く塗れ」の方がふさわしいということで決めたそうです。
話自体は捕物帳としての色合いの方が濃い作品ですが、犯罪の手段や処理の仕方そのものが私の好みではない話でした。
第六話目 「慈雨」
浅草で掏摸をしていた直次郎という男が再び伊三次の前に現れます。ただ、直次郎という男は本書の前の巻で登場する男なのですが、シリーズの順を飛ばして読んだためこういうことになります。
でも、コロナ騒ぎでの図書館閉館による電子図書での再読ですので、それも仕方ありません。
