長月 天音

イラスト1
Pocket


ほどなく、お別れですシリーズ』とは

 

本『ほどなく、お別れですシリーズ』は葬儀場で働く女性を主人公としたお仕事小説のシリーズであり、大切な人との別れの場を描くヒューマンドラマシリーズです。

死者と語ることができる特殊能力を用いて知った亡くなった方の本心をもとに、心温まる葬儀をプロデュースするチームの姿が描かれる連作中編の感動作です。

 

ほどなく、お別れですシリーズ』の作品

 

『ほどなく、お別れですシリーズ』(2023年03月25日現在)

  1. ほどなく、お別れです
  2. ほどなく、お別れです 2 それぞれの灯火
  3. ほどなく、お別れです 3 思い出の箱

 

ほどなく、お別れですシリーズ』について

 

本『ほどなく、お別れですシリーズ』は直接的に「命」をテーマとすることで、医療小説にも似た趣きを持っていると言えます。

だからこそ、惹句にも『神様のカルテシリーズ』の夏川草介の言葉が引用されているのでしょう。

ただ、個人的には『神様のカルテシリーズ』ほどの感動作とは思えませんでした。

まだ第一作を読んだだけなのですが、続編を読むかどうか微妙なところです。

 

 

この『ほどなく、お別れですシリーズ』の登場人物は、葬儀場「坂東会館」で働く清水美空という女性です。彼女は就職活動がうまくいかないでいるところにバイト先であった「坂東会館」に就職することになります。

彼女には、彼女が生まれる直前に亡くなった美鳥という姉がいたのですが、その美鳥の存在を感じることがある霊感の強い人でした。

また、「坂東会館」には漆原という葬祭ディレクターがおり、美空の能力に目をつけ、自分の担当の葬儀を手伝わせることとします。

この漆原の友人で漆原が担当するの葬儀の多くでお勤めをしているのが里見道生という光照寺の僧侶です。

それに、先輩社員の赤坂陽子が美空をかわいがっており、何かと美空の世話を焼いてくれる存在として登場しています。

 

ここで漆原が持つ「葬祭ディレクター」とは、「厚生労働省が認定している資格制度で、ご葬儀についての知識や技能を示すと同時に、ご葬儀のスペシャリストである証明」だそうです。

詳しくは下記サイトを参照してください。

 

この漆原、里見、そして美空のトリオが特別な事情をもつ葬儀を担当する様子が描かれているのがこのシリーズですが、死者との対話をテーマにした作品と言えば、辻村深月の『ツナグ』という第32回吉川英治文学新人賞を受賞した作品があります。

死者との再会を通して様々な人間ドラマを描き出す感動の物語であり、テレビドラマ化もされています。

また川口俊和の『コーヒーが冷めないうちに』もあります。

ただ、この作品はタイムトラベルものの変形であり、今という時間で死者と意思を通じる物語とは言えないかもしれませんが、通じるものはあると思います。

 


 

これらの作品と本書とを比べてみても、本書は物語の奥行きをあまり感じられなかったので、続編を読むかどうか迷うところなのです。

けっして浅薄な内容の作品というわけではなく、それなりに心惹かれて読み終えた作品ではあるので、微妙に迷っているというのが正直なところです。

[投稿日]2023年03月25日  [最終更新日]2024年3月26日
Pocket

おすすめの小説

読後感が心地よい小説

しゃべれどもしゃべれども ( 佐藤 多佳子 )
しゃべることが苦手な様々の事情を持つ登場人物が、二つ目の落語家である主人公のもとへ話し方を習いに来る物語。恋物語があったり、心温まる物語です。
博士の愛した数式 ( 小川 洋子 )
80分しか記憶が持たない数学者と家政婦とその家政婦の息子が織りなす物語。短期間しか記憶が持たないために種々の不都合、不便さが付きまとう中、三人は心を通わせていくのです。
カフーを待ちわびて ( 原田マハ )
本書は『暗幕のゲルニカ』で直木賞候補になった原田マハの小説家デビュー作品だそうで、第1回日本ラブストーリー大賞を受賞している長編恋愛小説です。
西の魔女が死んだ ( 梨木 香歩 )
小学校を卒業したばかりの少女まいの、その祖母のもとでの夏のひと月ほどの体験を描いた、ファンタジーでもなく、童話でもない中編小説です
春を背負って ( 笹本 稜平 )
山小屋を訪れる人々の人間ドラマを描いた、感動な物語であると共に清々しさも漂う、爽やかな読後感を持つ物語です。

関連リンク

『ほどなく、お別れです』長月天音著 葬儀場を舞台に心温まる小説
「別れて深まる愛もある」。6年間にわたる夫の闘病生活を支え、死別から2年の歳月をかけて本書を書き上げた著者の言葉です。物語の舞台は、スカイツリー近くの葬儀場「坂...
「ほどなく、お別れです」の作者 長月天音さんが考えるお葬式の未来
核家族化や少子化、未婚化など社会の変化とともに、葬儀のスタイルも変わってきた。将来のお葬式の姿はどうなっていくのだろう。東京・下町の葬儀場を舞台に、大切な家族を...
夏川草介『新章 神様のカルテ』× 長月天音『ほどなく、お別れです』スペシャル対談
長野県で地域医療に従事する医師である夏川草介は、2009年に様々な患者と向き合う内科医の姿を描いた『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞し、作家活動を...
「大切な人が隣にいなくても、私たちは生きていかなければいけません」――『ほどなく、お別れです  思い出の箱』長月天音さんインタビュー
たとえ天寿を全うした大往生だったとしても、「永遠の別れ」はやはり悲しくて寂しい。それでも亡くなった方が残していく想いを受け取り、残された方が別れを乗り越えて生き...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です