この作者の作品らしく、第一巻と同様にあいかわらず読みやすく、そして心温まる作品集でした。
結局、この作品は個人の他の人への配慮、というか’思いやり’について書かれているようです。
剣道の達人キヨ、武闘派の柔道家シゲ、危ない頭脳派ノリ。あの三人が帰ってきた!書店での万引き、ゴミの不法投棄、連続する不審火…。ご町内の悪を正すため、ふたたび“三匹”が立ち上がる。清田家の嫁は金銭トラブルに巻き込まれ、シゲの息子はお祭り復活に奔走。ノリにはお見合い話が舞い込み、おまけに“偽三匹”まで登場して大騒動!ますます快調、大人気シリーズ第二弾。(「BOOK」データベースより)
本書を読んで、あらてめて有川浩という作家の作品は「人情もの」として仕上がっていると思いました。
個人的には「人情もの」というのは人と人との心の繋がりを勝てる物語だと思っています。
例えば第二話はある書店の店主と万引きをした中学生との話ですが、店主は三匹のおっさん達が捕まえた万引きをした中学生に対し語りかけ、その後、万引きをした中学生による店主への応えが示されます。
中学生のその後の行いは、ともすればきれいごととしてかたずけられてしまうかもしれませんが、この作家の文章は気負うことなく自然な流れの中で語られており、納得の物語として読み手の心に落ち着くと思うのです。
確かに小説の中でしかあり得ないきれいごとに過ぎないかもしれないのですが、せめて心地よい文章と、その文章で語られる物語の世界に浸るのも良いものです。
有川浩という作家は、この心地よいひと時をもたらしてくれる作家さんだと思います。
おまけとして載っている「好きだよと言えずに初恋は」という短編は、私の好きな歌手村下孝蔵の「初恋」の歌詞の中のフレーズなのでしょう。
内容も少女の初恋の話で、引っ越しを繰り返す少女の初恋が若干のセンチメンタリズムに乗せられて語られています。
植物に絡めた好短編です。私が読んだのは文庫版ではありませんでしたが、文庫になる時はこの作品も掲載されるのでしょうか。