中山 祐次郎

泣くな研修医シリーズ

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やめるな外科医』とは

 

本書『やめるな外科医 泣くな研修医』は『泣くな研修医シリーズ』の第四弾で、2022年4月に299頁の文庫本書き下ろしで出版された長編の医療小説です。

外科医となって六年目の雨野隆治ですが、まだまだ患者の看取りに泣き、手術の失敗に落ち込む日々を描いてある、リアルな作品です。

 

やめるな外科医』の簡単なあらすじ

 

雨野隆治は三十歳の外科医。受け持ち患者が増え、大きな手術も任されるようになった。友人の癌患者・向日葵は相変わらず明るく隆治を振り回すが、病状が進行しているのは明らかだった。ある夜、難しい手術を終えて後輩と飲みに行った隆治に、病院から緊急連絡が入り…。現役外科医が生と死の現場を圧倒的リアリティで描く人気シリーズ第四弾。(「BOOK」データベースより)

 

雨野隆治が当直のある日、救急外来は夕方から混雑していたものの、あいにく研修医もいない日であるために一人で診なければならなかった。

そんな日に同時に二台の救急車が到着してしまったのだ。患者は二人とも高齢の女性で、ベテラン看護師の吉川佳代は、七十九歳の普通そうな上田さんと、七十八歳の下品な下澤さんと呼んでいる。

印象のとおり、上田さんは応対も丁寧であったが、見た目も派手な下澤さんは横柄な対応しかできない人のようだった。

二人ともに腸閉塞の診断で入院したその翌日、隆治はひさしぶりに恋人のはるかとレストランへ行くが、病院からの緊急の呼び出しがかかってしまう。

そんな中、隆治の勤務する牛の町病院にも新任の医師がやってきたが、その中に籠島大学時代の同級生だった消化器内科の遠藤須古雄がいた。

 

やめるな外科医』の感想

 

本書『やめるな外科医』は、主に腸閉塞の診断で入院した上田さん下澤さんという二人の患者の話と、前巻の『走れ外科医』で登場してきた向日葵という癌患者の話題が中心になっています。

 

 

もちろん、主人公である雨野隆治の六年目の外科医としての日常も詳しく描いてあり、腹腔鏡手術を任せられたものの途中で指導医であった佐藤玲に「取り上げ」られたりしています。

この「取り上げ」とは、どうしても手術が進まなかったり、危ないと判断された場合などに一時的に術者が交代することを言うそうです。

経験を積んだ先輩医師が立ち会う手術で、後輩医師の手術の手際が悪いと判断されたことになります。

また、入院患者への病状の説明も医師の重要な仕事の一つであり、今回の隆治は上品な上田さん、下品な下澤さんについて、患者本人、またその家族への説明をすることになりますが、これがまた何かと問題が立ちふさがるのです。

 

本書『やめるな外科医』ではまた、前巻から登場してきている向日葵の話がもう一つの話になっています。当然ですが、そこでは隆治の後輩医師である西桜寺凛子もともにかかわることになります。

余命が限られている葵とのデートや、隆治自身の恋人との関係性の話なども絡み、どうにもプライベートなことでも悩み多き隆治です。

 

そうした隆治の物語が、もちろん医師としての活動を中心に語られているのですが、適度な会話文を交えながら進行していきます。

読みやすく、そして語られている内容はかなり濃い話です。

でありながら、作者自身の経験でしょうが目線は暖かく、叱咤するような言葉と共に、応援する心情も見て取れるのです。

医者として成長していく隆治の姿が、まさに青春小説としての物語でありながらも、現役の医師が描く医者の成長の物語として、かなり読みがいのある作品となっています。

[投稿日]2022年07月09日  [最終更新日]2022年7月9日
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