風野 真知雄

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戦国時代末期。越中の佐々成政は、天下取り最中の秀吉の野望を挫くため、孤軍奮闘していた。八方ふさがりの中、成政は、秀吉に対する徹底抗戦を家康に懇願しようと決意。敵地を避けて家康に会うには、厳冬期の飛騨山脈を越える必要があった。何度でも負けてやる―天下ではなく己の目前の道を見据えた、愚直な戦国武将。その悲哀と苦悩、誇り高き生き様を描いた本格歴史小説。第21回中山義秀文学賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

佐々成政が徳川家康に対し本格的な秀吉との戦いを持続するように依頼するために、厳寒の立山連峰を越えて浜松まで行った史実を描いた物語です。

 

信長亡き後天下を手にした秀吉と対立する成政は、生き残る道は徳川家康に願い織田家再興を促すしかない、と考える。

しかし、西には秀吉の意を汲んだ前田利家がおり、東に上杉景勝がいて身動きが取れない。とすれば、厳寒の立山連邦を越えるしかないのだった。

 

佐々成政の立山連峰越えという話は、これまで他の戦国期を描いた小説の中でたまに触れられてはいました。しかし、その事実があったことを記してあるだけで、その意味までを考察した文章は無かったように思います。実際、本書を読むまでその意味を考えたことはありませんでした。

そこに、いかにもこの作者らしい独特な視点で歴史を捉えた作品ということで期待は膨らみました。しかし、本書がその答えを示してくれているか、と言えば、先に述べた織田家再興を願う、ということしかありません。個人的にはその点をこそもっとはっきりと示してほしかったのですが残念でした。

佐々成政という武将の性格を実に真面目な一徹者であることを強調してあるところなどがその理由づけの補強なのでしょうが、個人的には納得できませんでした。

 

作者としても、山越えをするという事実だけでは物語としては寂しいと思われたのでしょう。佐々成政の城にもぐりこんでいる間者を洗い出す場面など、種々の色付けが為された物語として仕上がっていて、勿論面白い小説です。

ただ、これまで読んできた風野真知雄という作家の作品にしては少々普通の小説になっている、という印象がします。この作者独特のちょっとひねった筋立ては影を潜めているのです。その点は、先に述べた山越えの理由づけと共に、欲張りな読み手としてはもの足りませんでした。

 

著者の自由に描けるフィクションではなく、史実をもとにした歴史小説だということを考えると、素人の過大な要求なのかもしれません。

[投稿日]2015年04月09日  [最終更新日]2018年12月5日
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