世は戦国の初頭。松波庄九郎は妙覚寺で「智恵第一の法蓮房」と呼ばれたが、発心して還俗した。京の油商奈良屋の莫大な身代を乗っ取り、精力的かつ緻密な踏査によって、美濃ノ国を“国盗り”の拠点と定めた!戦国の革命児斎藤道三が、一介の牢人から美濃国守土岐頼芸の腹心として寵遇されるまでの若き日の策謀と活躍を、独自の史観と人間洞察によって描いた壮大な歴史物語の緒編(「BOOK」データベースより)
戦国時代、斎藤道三から織田信長、明智光秀という武将を中心とした国取りの物語が描かれた長編の歴史小説です。文庫本では第1、2巻で斎藤道三を、第3、4巻で織田信長を中心とした戦国武将のあり方が生き生きと描かれています。
戦国武将の物語は数多くあるのですが、斎藤道三という人物を正面から描いた小説はあまり無く、他に数人の方が書かれているだけのようです。
それまでは蝮の道三としてあまり良い印象は無かったのですが、この本ではかなり高い評価をしてあり、それ以後斎藤道三を見る目が変わりました。
また、それまで織田信長はそれなりには知っていても、道三については殆ど知らなかったのですが、この本で信長との交流を知ったものです。
こうした戦国期における各武将たちの思惑等、勿論フィクションではありますが、歴史と言うものが、単に歴史の表面に出てくる事実だけではなく、生きた人間の営みの積み重ねであることを考えさせられたことを覚えています。
司馬遼太郎の項の「雑感」にも書いたように、この本に続いて豊臣秀吉から徳川家康へという権力の推移のあり様を「新史太閤記」から「覇王の家」へという著作で著していくことになります。
中国の三国志を読みながら、これは司馬遼太郎の「国盗り物語」からの一連の流れと結局は同じ国取りの物語だと思ったものです。