俺、28歳。金もなけりゃ、女もいない。定職にも就いてない。同い年の喜彦とつるんでは行きつけのバーで酒を呑み、泥酔したサラリーマンから財布を奪ったりしてはソープランドへ直行する日々。輝いて見えるものなど何もなかった。人生はタクシーに乗っているようなもので、全然進まなくても金だけはかかってしまう。そんな俺たちに今日も金の臭いがするトラブルが転がり込む。第11回大藪春彦賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
何とも、ただ猥雑としか言いようのない本でした。
作者の東山彰良氏は『流』という作品で2015年の直木賞を受賞しています。ただその事実だけで、他の作品を読んでみようと、どうせ読むならば第11回大藪春彦賞を受賞しているこの作品を読んでみよう、という思いだけで手に取った作品です。
千葉の船橋を舞台に、まったく普通の二人のチンピラの行動を、ただただ追いかけている、そんな物語です。あらすじめいたものが何もないこの物語は、しかしながら選者のひとりである馳星周氏の「どれだけ技巧を凝らしたミステリも、・・・・・・頭に浮かんだことをただ綴っていった物語に蹴散らされてしまった。」という絶賛の言葉がありました。
つまりは、「二人の行動を、ただただ追いかけている、そんな物語」だと言う私の印象そのものは外れてはいないのですが、その評価は全く違うのです。
大藪春彦賞の選考委員四人全員の満場一致で決まったらしく、プロの目で見ると「才能豊か」となるのですから、いかに私の読みこみが薄いものか、思い知らされました。実際、東山彰良というこの作者は、その数年後には『流』で直木賞を取る作家となるのです。
馳星周氏に代表される(と言っていいかは不明ですが)ノワール小説という分野を、私はあまり知りません。だからなのかもしれませんが、本書『路傍』は、若干受け付けないところがあったのかもしれません。
でも馳星周氏が言うように「語り口の心地よさ」を感じていたからこそ、それほど苦でもなく最後まで読みとおしたのでしょう。そうだと思うことにしておきます。