神谷警部補は、警視庁捜査一課の敏腕刑事だったが、伊豆大島署に左遷中。彼に本庁刑事部長から神奈川県警に出頭命令が下る。その特命は、連続婦女暴行殺人事件の犯人を誤認逮捕した県警そのものを捜査することだった。本庁、大阪、福岡などから刑事が招集されチームを編成。検証を進めるうち、県警の杜撰な捜査ぶりが…。警察内部の攻防、真犯人追跡、息づまる死闘。神谷が暴く驚愕の真実!警察小説。(「BOOK」データベースより)
何らかの失策により伊豆大島署に左遷されていた神谷警部補が、その腕を見こまれ再び警視庁本庁に特命チームのメンバーとして復帰し、過去の自分の失策にも絡む誤認逮捕事件を調査することになります。
このチームのメンバーが警察庁の永井管理官をリーダーとし、尋問能力に長けた大阪府警監察室の島村、体力バカの福岡県警捜査一課の皆川、北海道警の婦警である保井凛、それに神谷警部補というメンバーなのですが、このチームの個々人の書き込みをもう少し丁寧に描いてくれていたらもっと私好みの物語になったのではないかという印象はぬぐえません。
とは言え、当初はバラバラだった彼ら特命班が、個々に抱える闇を暴かれることに対する恐れを抱いていたりしながらもそれぞれに個性を発揮し活躍するという、決して目新しい設定ではないのですが、個人的には面白く読みました。そこはやはりこの作者の上手さと言うべきなのでしょう。
このようなチームで活躍する警察小説と言えば、まずはエド・マクベインの『87分署』を筆頭に挙げるべきでしょう。美文調で知られるマクベインのタッチで、アメリカ東部に位置する都市アイソラを舞台に、スティーブ・キャレラを筆頭とする87分署刑事課の刑事達が様々な事件に立ち向かう様子を描いています。黒沢明の映画『天国と地獄』もこのシリーズの『キングの身代金』が基になっていることでも有名です。
近時の日本の小説で言えば、今野敏の『安積班シリーズ』が思い浮かびます。今野敏のテンポのいい文体に乗せられて、人情味豊かな安積警部補率いる刑事課強行犯係安積班の面々が力を合わせ事件を解決していく人気シリーズです。佐々木蔵之介主演でテレビドラマ化もされ、かなりの人気を博しているそうです。
警察小説とは全く関係ない話で恐縮ですが、私は、このような分野ごとのプロが集まってチームを作り特定の目的を達成するという構図は、どうしても『プロフェッショナル』という結構古い映画を思い出してしまうのです。バート・ランカスターや リー・マービンといった往年のスターが出ているアクション映画で、銃や馬、追跡などのプロが活躍する1966年の西部劇映画です。本書とは全く関係のない映画の話でした。