白昼の新宿で起きた連続殺傷事件―無差別に通行人を切りつける犯人を体当たりで刺し、その行動を阻止した男がいた。だが男は、そのまま現場を立ち去り、そして月日が流れた。未解決事件を追う警視庁追跡捜査係の沖田大輝は、犯人を刺した男の僅かな手がかりを探し求めていた。一方、同係の西川大和は、都内で起きた貴金属店強盗を追って、盗品の行方を探っていた。二人の刑事の執念の捜査が交錯するとき、それぞれの事件は驚くべき様相を見せはじめる。長篇警察小説シリーズ、待望の第一弾。(「BOOK」データベースより)
この作者にしては珍しい(と思える)、二人の刑事の活躍を描く長篇警察小説です。シリーズ化されており、その第一作目でもあります。
行動派の沖田大輝と頭脳派の西川大和という二人の刑事が主人公です。沖田は、新宿で起きた無差別殺人犯人を刺して小学生を助けた男を探し、西川は青山で起きた貴金属店強盗を追っています。沖田は時計マニアであって、そのことを通じて西川刑事の追う事件との繋がりが生じてくるのです。
ただ、私が予想する展開になればご都合主義的だと思っていたらその通りになったりと、若干私の好みとは違うところもありますが、それでもなお面白いと思う小説です。それだけ私の好みに合った作家であり、物語だと言えるのでしょう。
ちなみに、西上心太氏の「あとがき」によると、本作品の舞台となる「警視庁追跡捜査係」とは架空の部署ですが、この作品が発表された2009年の11月に「特命捜査対策室」という未解決事件(コールドケース)を専門的に捜査する部署が設けられたそうです。
そしてこの「特命捜査対策室」を舞台とした小説としては、佐々木譲の『特命捜査対策室シリーズ』や、今野敏の『スクープシリーズ』、曽根圭介の『TATSUMAKI 特命捜査対策室7係』などがあります。