黒涙

本書『黒涙』は、『黒警』の続編の長編のノワール小説です。

前巻『黒警』がかなりのめり込んで読んだ記憶があったせいか、本書は今一つ感情移入できずに終わってしまった作品でした。

 

黒社会とつながり、警察内部に“黒色分子”として潜む沢渡。義兄弟の契りを結ぶ黒社会「義水盟」の沈は、インドネシアの青年実業家ラウタンを巻き込み、中国スパイ網の摘発に協力する。やがて3人の前にシンシア・ユンと名乗る謎の美女が現れるのだが…。(「BOOK」データベースより)

 

国家機密の漏洩の疑いがあり、上層部の要請で、公安部外事第二課長の滝口警視正をリーダーとする部署を超えた特別チームが組まることになった。

そのチームに加えられた沢渡から相談を受けたは、南シナ海の巨大組織である「海のネットワーク」のメンバーのラウタンを連れてきて仲間にするのだった。

誰しもが認める男であるラウタンは、早速に日本経済界に顔を広げ、その過程で“運命の女(ファム・ファタール)”と感じたシンシア・ユンと知り合う。

だが、その女の正体に気付きながらも付き合いをやめないラウタンだった。

 

前巻ではヤクザの波多野という男を中心とし、警視庁組織犯罪対策第二課の事なかれ主義刑事である沢渡警部補、そして沢渡の義兄弟である「義水盟」のという男が加わった男の物語として仕上がっていました。

本書『黒涙』では前巻から引き続き登場する沢渡警部補と「義水盟」の沈とは別に、沈が連れてきたラウタンという男の動向が中心になります。

ラウタンは、容姿端麗で、ビジネスマンとしてもインドネシアの実業界で注目されている実業家であり、非の打ち所のないという人物です。

このラウタンを中心とした話が一番大きな流れとなっていて、その点が前巻と異なって本書についての面白さを今一つと感じる理由になっているようです。

 

月村了衛の作品は、いつもであれば物語の客観的な状況をかなり緻密に描き込んでリアリティーを出しているのですが、本書の場合、沢渡に誘導されている警察の存在にリアリティーを感じません。

それは、本書『黒涙』はラウタンの活動を中心に描いてある、という点に原因があるようです。

そのラウタンについての描写が、沈が連れてきた信頼に足る男というだけで、沈や、特に沢渡との間で強固な信頼を築く根拠を示してありません。

読者にとっては、沈の義兄弟だからという一言で三人相互の信頼関係が築かれたことを意識するのは難しく、感情移入して読み進めるには足らないと思います。

また、ラウタンの活動が描かれているとはいっても、その描き方も微妙で、ラウタンという男に惹かれる要素を感じないのです。

 

以上と重なるかもしれませんが、本書は月村了衛の作品ではあるのですが、ストーリーの構成が安易にすぎる点も気になります。

例えば、沈らのグループが滝口に気付かれないように陰ながら警察の動きを助けるというのですが、滝口についてかなりの切れ者というキャラ設定をしていながら、沈らのグループの助けに気が付かないという状況がありうるか、との疑問がわきます。

また、沢渡の台詞などに、どうにも説明的と感じる台詞があったりと、いつもの月村作品では感じない疑問点が少なからず見受けられるのです。

 

出版年月で見ると、本書『黒涙』が2016年です。どうも2015年に書かれた『槐(エンジュ)』以降の数年間に書かれた何冊かが月村作品にしては構成が雑と思える作品が並んでいると思います。

すなわち、『槐(エンジュ)』や『影の中の影』が2015年であり、『ガンルージュ』が2016年であって、面白いのは面白いのですが月村作品の特徴の緻密な描写に裏打ちされた重厚さはありません。

 

 

それからすると、2017年4月の『追想の探偵』からは社会性を増しており、特に『東京輪舞』以降は歴史に題をとった重厚な作品へシフトしていると思われます。

 

 

ただ、明確に書かれた時期で区別できるものではなく、月村了衛という作家にそれぞれの顔があるというべきなのかもしれません。

とはいえ、物語としての面白さはやはりほかの作品ほどではないと言わざるを得ません。

ただ、本書『黒涙』も第四章に入ると沢渡の行動が明記され、沢渡と沈との関係への言及も多くなり、月村了衛のアクション小説だと思える面白さが復活しています。

やはり、本書の構成が今一つだと思うしかなく、今後のシリーズとしての興味も今一つという気がします。

妖の華

本書『妖の華』は、『妖シリーズ』の第一弾の長編のアクションホラー小説です。

シリーズ第二作の『妖の華』で詳しく描かれることになる「三年前に起きた“大和会系組長連続殺害”」の後日譚ということになる物語です。

 

ヒモのヨシキは、ヤクザの恋人に手を出して半殺しにあうところを、妖艶な女性に助られる。同じころ、池袋では獣牙の跡が残る、完全に失血した惨殺体が発見された。その手口は、3年前の暴力団組長連続殺人と酷似していた。事件に関わったとされる女の正体とは?「姫川」シリーズの原点ともなる伝奇小説が復刊。第2回ムー伝奇ノベルス大賞優秀賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

驚いたのは、本書『妖の華』が誉田哲也のデビュー作品だということです。

とてもこの作品が新人の手によるものだとは信じられません。それほどに物語としての面白さを既に持っているのです。

ただ、確かに現在の誉田哲也の作品の特徴ともいえる一人称での描写も明確ではないし、警察組織の描き方にしても丁寧さに欠けるきらいはあります。

しかし、文章のテンポは悪くないし、ストーリー展開もさまになっていて見事なものとしか思えません。

 

また、後に『姫川玲子シリーズ』の重要な登場人物の一人ともなる井岡博満刑事が重要な役割をもって登場してきたのには驚きました。

よく考えてみれば、本書が誉田哲也のデビュー作だというのですから、井岡の登場もこちらの方が先である筈なのですが、どうも『姫川玲子シリーズ』の方を先に読んでいたこともあり、妙な感じでした。

更にもう一人、監察医の國奥定之助も本書で既に登場しています。

 

 

誉田哲也という作家は物語を、共通の世界で展開させることが少なからずあるため、そうした方策をとっているかとも思いましたが、世界観までは共通というわけではなさそうです。

つまり、本書を習作として警察小説を書くことの面白さを知り、『姫川玲子シリーズ』を書くことになると書いてありました。

従って、本書『妖の華』でキャラクターを作り面白いと感じた井岡を『姫川玲子シリーズ』登場させたのだと思われます。それは國奥定之助にしても同じでしょう。

妖シリーズ

本『妖シリーズ』は、誉田哲也お得意のエロスとバイオレンス満載のエンターテイメント小説です。

本シリーズの特徴を挙げるとすれば、まず挙げるべきは主人公が人間ではないということでしょう。つまり、主人公は四百年という年を経た吸血鬼です。

 

妖シリーズ(2020年09月23日現在)

  1. 妖の華
  2. 妖の掟
  1. 妖の絆
  2. 妖の旅
  1. 妖の群

 

『妖シリーズ』の各巻タイトルは、「小説丸」での誉田哲也インタビュー記事にあった作者の言葉から拾い出したものです。

ですから、第三巻以降は作者誉田哲也の出版予定ということになります。

 

そもそも本『妖シリーズ』の第一巻は、第二回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞し、後に『妖の華』と改題された『ダークサイド・エンジェル 紅鈴 妖の華』というタイトルで2003年に刊行された作品です。

ムー伝奇ノベル大賞は学習研究社刊行の雑誌「ムー」が主催していましたが、第五回まで存続したそうです(以上『妖の華』文庫版 杉江松恋氏の「あとがき」から)。

この第一巻『妖の華』が、作者の誉田哲也のデビュー作だそうですから、才能ある人の作品は最初から見事なものだと感心せざるを得ません。

 

本『妖シリーズ』の主人公は紅鈴(べにすず)と言い、四百年も前に一人の吸血鬼から血分けを為され、不死の身になった女です。

この女が、身長は160センチに満たない、細身の女で長い黒髪に黒々と潤んだ瞳をした黒豹のような女で、体臭が妙に男をくすぐると表現されています。

このエロチックな女がソープで少しの間気絶させた客の男から血を飲んでいるのです。もちろん、ソープですからベッドシーン満載です。

さらに、暴力団とのトラブルを抱えていて、当然のことながらバイオレンス満載の展開となります。

 

本『妖シリーズ』の吸血鬼、紅鈴は西洋の吸血鬼とは異なる純粋の和物である「闇神(やがみ)」です。

ですから、十字架もニンニクも紅鈴たちには何の影響もなく、ただ、太陽の光、厳密には紫外線に当たると皮膚が焼け、ひどいと死に至ります。

また、単純に人間に噛みついて血を吸ったからといって、その相手が吸血鬼になるわけでもありません。被害者は血が吸い取られるだけで、献血と変わりないのです。

 

伝奇小説、と言えば私にとってまずは 半村良です。その作品での吸血鬼の話と言えば『石の血脈』があります。

吸血鬼や狼男など世界各地に残る各種伝承を織り込みながら、人間の不死性への欲望を絡めて、とにかくスケールの大きなほら話をその筆力で一気に読ませている作品です。

それまでにも吉川英治の『鳴門秘帖』や国枝史郎の『神州纐纈城』などの作品はありました。

しかし、個人的には 半村良の『石の血脈』や『産霊山秘録』などの作品が伝奇SF小説の魅力を教えてくれたと思っています。

 

 

その後、エロスとバイオレンスの伝奇小説となると、 夢枕獏菊地秀行を避けては通れません。

夢枕獏には「サイコダイバーシリーズ」とも呼ばれる『魔獣狩りシリーズ』があります。

このシリーズは『魔獣狩りシリーズ』と『新・魔獣狩りシリーズ』と名を変えて続き、それが全体として「サイコダイバーシリーズ」となり祥伝社ノン・ノベル版で全二十五巻あります。

 

 

また、 菊地秀行には異世界のクリーチャーと戦う、エロスとバイオレンス満開の作品である『バイオニック・ソルジャーシリーズ』などがあります。

 

 

本書『妖の掟』の主人公は、『全国妖怪事典』(千葉幹夫・編)という書物に書いてあった山姫という妖怪をヒントに作り上げたキャラクターだそうです( 小説丸 : 参照 )。

ここで「吸血鬼」と言えばブラムストーカーのトランシルバニアのドラキュラ伯爵が有名ですが、今では スティーブン・キングの『呪われた町』の方が名が知られているかもしれません。

 

 

本来、本書の続編を書く予定はあったのだと作者は述べられています。

それが十七年後に『妖の掟』として結実し、さらにその後のシリーズの展開までも言及されています。

最終巻は一作目『妖の華』の後日談であり、近未来SFになるということなので、それまで楽しみに待ちたいと思います。

 

飛べないカラス

本書『飛べないカラス』は、出所したばかりの元売れない役者を探偵役とする、長編のミステリーです。

ミステリーとは書きましたが、そう言い切っていいのか疑問もあるほどに物語の謎自体は深くはありません。にもかかわらず、物語としてはかなりの面白さがある不思議な小説です。

 

俺の幸運は、不幸の始まり…のはずだった。元売れない俳優で、元企業経営者。元犯罪被害者で、元受刑者。納得しようのない罪での服役を終えた加納健太郎への奇妙な依頼は、彼を運命の女へと導いた。規格外のニューヒーロー誕生!笑い、驚き、涙するすべてが詰まった究極の娯楽作!(「BOOK」データベースより)

 

主人公は加納健太郎という元売れない役者です。この男が、ある理由から入った刑務所から出所するところからこの物語は始まります。

シナリオライター界の重鎮である大河原俊道から、自分の娘かもしれない村上沙羅という女が現在幸せでいるかどうかを調べてきてほしいと頼まれます。

その女村上沙羅はあっさりと見つかりますが、加納健太郎は、逆に「私のこと、わかりませんか。」と問われる始末でした。

さらに、そのすぐ後に知り合った前田慎也という男は、その数日後死体となって発見されるのです。

 

読みはじめは、一人称での語りだというこもあり、また物語の内容が人探しであることもあって、本書『飛べないカラス』はハードボイルド小説だと思い読み進めていました。

ところが、そうかからないうちにどうも話がハードボイルド小説とは異なり、どちらかというと、軽いミステリータッチの探偵小説のように進んでいることに気が付きます。

たしかに、主人公は生き方にこだわりを持っているようであり、腕っぷしも強く、襲い掛かる正体不明の暴力に対してもこれを軽くいなしてしまいます。

しかし、ハードボイルドをにおわせるのはそれだけであり、正体不明だと思っていた暴力の正体はすぐに明らかになります。

 

それどころか、探す対象の女はすぐに見つかり、その女は主人公を知っていて、私のことを覚えていないのかと、逆に問われてしまうのです。

そこで、自分とその女とのかかわりを探すことになるのですが、そこは主人公のこだわりを貫く姿勢が描写されるわけでもなく、少しずつ判明してくる情報をもとに正解にたどり着く、それだけのことです。

 

でも、そこ過程が結局は主人公の加納健太郎の過去を振り返ることにもなり、また役者加納健太郎としての役者論、演劇論の端をかじるような描写もあって、なかなかに読ませます。

それは勿論、本書『飛べないカラス』を書いている木内一裕という作者の力量だと思うのですが、読みこめば深さを感じさせるような内容を軽く感じる文章で描いてあり、とても読みやすいのです。

 

ただ、本書で唯一つといっていいのかもしれませんが、不満点を挙げるとすれば、宮下日菜という女性についての書き込みがあまり無いということです。

この女性は本書でかなり重要な役目を担っているはずなのですが、宮下日菜という女性がどのような人物なのか、その背景は全くと知っていいほどに書いてありません。

例えばキャバ嬢のアルバイトをしていたとか、キャバクラの共同経営の話でトラブっているとかの表面的な事実は書いてあっても、何故にこうも深く加納健太郎に関わるのかなど、宮下日菜個人を深く知る情報は無いのです。

もう少し、加納健太郎に関わる事情を書いてあればと読み進めながらなのも思ったものです。

 

何はともあれ、木内一裕という作家の作品は、会話文の使い方のうまさ、ストーリー運びのうまさなど、私の好みにうまく合致しているようです。

もっとも、木内一裕の作品全体としてみるとき、何となく世界観が狭い印象はあります。

それが悪いということではなくて木内一裕が作り出す物語として大好きなのですが、例えば 大沢在昌の『新宿鮫シリーズ』のような物語などと比べると、物語世界の広がりが狭いと感じるのです。

 

 

この作家の作品は文章のテンポがいいだけに、じっくりと読みこむとのではなく、ストーリーの流れに乗っていくことが楽なのではないでしょうか。

そのことが、物語の中でのいろいろな意味での距離感を、空間的にも、また人間関係においても広く感じさせていない、とも思えるのです。

 

私は、この作家では『矢能シリーズ』の大ファンでもあります。

本書の主人公加納健太郎も『矢能シリーズ』の矢能のように面白いキャラクターだけに、本作があの『矢能シリーズ』のように膨らんでくれればと思います。

でも本書で加納健太郎の人生の核心に踏み込んでいるので、多分そうはならないでしょう。

 

孤狼の血シリーズ

本『虎狼の血シリーズ』は、広島の暴力団担当の刑事を主人公とした長編の警察小説です。

作者自らが映画「仁義なき戦い」が好きで、「任侠のルールが残っている世界」を描いたという衝撃作です。

 

孤狼の血シリーズ(2020年09月01日現在)

  1. 孤狼の血
  2. 凶犬の眼
  3. 暴虎の牙

 

本『孤狼の血シリーズ』は警察小説、ということになっています。しかし、中身は警察小説というよりは義理人情はどこかへ行ってしまった「極道小説」と言った方が当たっているかのようです。

作者は「任侠小説」を書きたかったそうですが、任侠というよりもやはり暴力団の世界を描いていて、「極道小説」という方が正確だと思えます。

任侠小説と言えばいろいろありますが、まずは古典として尾崎士郎の『人生劇場 残侠篇』(下掲下段は Kindle版)の飛車角の物語を挙げるべきです。飛車角と吉良常の物語は映画化もされています。

 

 

 

先に書いた『仁義なき戦い』という映画は広島ヤクザの抗争を描いた作品でしたが、本書はヤクザの一部を警察に置き換えただけと言っても過言ではありません。

ただ、主役がヤクザまがいとはいっても警察官であり、一般市民生活を守ることを至上命題とし、そのためには何でもする警察官というキャラクターを設け、そのキャラをうまく動かしているところがこの作者のうまいところだと思います。

ヤクザそのものと言われる警察官はありがちの設定です。ただ、その警察官の背景を掘り下げ、ヤクザとの深いつながりを描き、大上という魅力的な人物を作り上げているのです。

 

うまいのは、主に本『孤狼の血シリーズ』第一巻の話ではありますが、その大上に正義感の塊のような日岡という新人を張り付け、大上の暴力や暴力団との癒着の現場を見せることで日岡の正義感と大上の無法ぶりとを対立させているところです。

その上で、第一巻『孤狼の血』で日岡との入れ替わりを示し、第二巻『凶犬の眼』で日岡を独立させています。この第二巻『凶犬の眼』は物語として若干迫力に欠けるところがあったのですが、さらに第三巻『暴虎の牙』で以前の大上と成長した日岡を共に読者の前に見せてくれます。

読み手の一人として、大上の物語ももう少し読みたいと思っていたし、日岡のその後も知りたいと思っていたその欲求を共に満たしてくれたことになります。

 

うまい、という他ないのです。そうした極道の世界を女性が、これだけ迫力をもって描けるのですから見事です。

できることであれば本シリーズをまだ続けてほしいのですが、それは読者の身勝手な希望でしかないのでしょう。これ以上の展開は大上も、日岡も傷つけることになると思われたからこそ最終章とされたのでしょうから。

それでもなお、読みたいと思ってしまう身勝手な読者です。

 

ちなみに、本『孤狼の血シリーズ』の第一巻『孤狼の血』は役所広司が大上を、松坂桃李が日岡を演じ映画化されています。また、第二巻『凶犬の眼』も映画化が決まっているそうです。

 

暴虎の牙

本書『暴虎の牙』は、『虎狼の血シリーズ』第三巻で最終巻でもある長編の警察小説です。

個人的にもう一度読みたいと思っていた大上の話とたくましく成長した日岡の物語を共に読める作品として仕上げられており、おもろく読んだ作品でした。

 

博徒たちの間に戦後の闇が残る昭和57年の広島呉原。愚連隊「呉寅会」を率いる沖虎彦は、ヤクザも恐れぬ圧倒的な暴力とそのカリスマ性で勢力を拡大していた。広島北署二課暴力団係の刑事・大上章吾は、沖と呉原最大の暴力団・五十子会との抗争の匂いを嗅ぎ取り、沖を食い止めようと奔走する。時は移り平成16年、懲役刑を受けて出所した沖がふたたび広島で動き出した。だがすでに暴対法が施行されて久しく、シノギもままならなくなっていた。焦燥感に駆られるように沖が暴走を始めた矢先、かつて大上の薫陶を受けた呉原東署の刑事・日岡秀一が沖に接近する…。不滅の警察小説シリーズ、令和でついに完結!(「BOOK」データベースより)

 

本書『暴虎の牙』ではプロローグで三人の若者の殺しの場面が描かれ、続く第一章で昭和五十七年六月との年代表示のもと、ヤクザを相手に借金の取り立てをする三人の若者の姿が描かれています。

読み手がこの年代の指示にあまり意味を見つけられないままに本書を読み進めると、暴力の臭いが満ちた雰囲気の中、突然と大上章吾が登場します。

あの大上章吾は第一巻『暴虎の牙』で消えたはずなのにと思っていると、冒頭の昭和五十七年六月という年代指定が意味を持ってくることに気がつくのです。

 

読者は、この『虎狼の血シリーズ』が暴力に満ちた物語であることは知っているはずですが、冒頭からの残虐な殺しの場面やヤクザと渡り合う若者の姿を見せつけられることで、あらためて本シリーズの性格を思い知らされます。

そして、そこにに大上章吾が登場することになるのです。作者のエンターテイメント小説の書き手としてのうまさを見せつけられたと言っていいのだと思います。

 

そうした「暴力」の物語であるという流れの中、冒頭から沖虎彦という人物が登場します。

暴力団員であった父親からの暴力を日常のものとしていた母親と幼い沖ですが、長じた沖はある日その父親に対して殺意を抱くに至ります。

当初は本書『暴虎の牙』では、大上と日岡という第一巻と第二巻のそれぞれの主人公を再度登場させるために、沖というどうしようもないワルを登場させたのだと思って読み進めていました。

しかし、どうもこの物語の主人公はこちらの沖ではないかと思えてきました。

破滅に向かってまっしぐらに突き進む、しかし素人には決して手を出さない沖の姿は、大上、日岡らを再登場させるためのキャラクターを超えて独り歩きし始めたようにも思えたのです。

でも、物語としては大上というキャラクターと、その跡を継いだ日岡という存在の物語だというべきなのでしょう。そうした二人を背景として、破滅へ向かう若者の姿が描かれている、それが本書『暴虎の牙』という作品なのだろうと今では思えます。

 

破滅に向かって突き進む若者と言えば、映画ではありますが『仁義なき戦い 広島死闘篇』が頭に浮かびました。もしかしたら、作者の柚月裕子本人が『仁義なき戦い』が好きで、これを目指したと言っているほどですから、この『広島死闘篇』が頭にあったのかもしれないなどと思ってしまいました。

この作品は、北大路欣也演じる山中正治という若者の暴走と破滅とを描いていましたが、本作はの沖と映画の山中とがとても重なって見えたのです。

蛇足ですが、この映画では千葉真一が演じた大友勝利という男の印象も強く、役者という意味では千葉真一の方が印象に残ったかもしれません。

 

 

話を元に戻すと、本書『暴虎の牙』においては第一巻で消えた大上の雄姿を再び見ることができたことは非常にうれしいことです。

その上、大上のあとを継いだ日岡がまるで大上が生き返ったかのようなキャラクターになり、戻ってきているのですから喜びも倍増です。

さらに付け加えると、この物語のラストが妙に心に残りました。「えつ!?」というそのラストは微妙な余韻を残し、終わってしまったのでした。

 

本書が最終巻ということなので、これ以上このシリーズはありません。それが非常に残念です。

アルバイト・アイ 命で払え

本書『アルバイト・アイ 命で払え』は『アルバイト探偵シリーズ』の第一巻目であるハードボイルド連作短編作品集です。

探偵と言えば、チャンドラーが生み出したフィリップ・マーロウでしょうが、彼のような渋さを漂わせた男ではなく、ユーモア満載の、「適度な不良高校生」とその軽い父親を主人公とした物語です。

 

冴木隆は広尾に住む適度な不良高校生。父親の涼介はずぼらで女好きの私立探偵。噂によると元諜報員で凄腕らしいのだが…。そんな父に頼まれて隆はアルバイト・アイ(探偵)として街を駆け巡る。若い未亡人からの依頼は死んだ夫・康吉が遺していた娘の捜索。遺産を分け与えたいと言う。だが康吉は戦後最大の強請屋で、あらゆる有力者の弱点を握り、その情報=遺産は日本を揺るがす力を秘めていた!(『相続税は命で払え』)。(「BOOK」データベースより)

 

簡単なあらすじは以下のとおりです。

アルバイト・アイは高くつく
隆の家庭教師である麻里さんの友人で、半導体の会社を営む宗田の世話になっている桜内舞が行方不明だという。隆の調査で神という男が浮かんできたが、宗田のもとには、宗田の会社がM重工に納めている特殊電子部品を持って来いと言ってきた。

相続税は命で払え
戦後最大の強請屋と呼ばれた鶴見康吉の未亡人の鶴見英子という女が、相続人である娘の向井康子を探してほしいといってきた。ところが、調査を始めるとすぐに何者かに康子を探すなと脅されるのだった。

海から来た行商人
島津と名乗る男が、父親の涼介の仕事のあいだ自分たちとともにいるようにと言ってきた。涼介と会った隆は、涼介の過去の仕事にからんだことでとある男が自分を殺しに来ると聞かされる。

セーラー服と設計図
優等生の鴨居一郎が、名門女子高校生の富樫江美を妊娠させてしまい、江美の父親から、鴨井一郎の父親が書いているアメリカの重要施設の設計図を盗むように脅されたからと、探偵である涼介に依頼したいといってきた。

 

本書『命で払え』の主人公び冴木隆は、ボクシングをかじっている「適度な不良」の高校二年生です。

この高校生が大人顔負けの腕っぷしと度胸で、犯罪者や国家機関を相手に奮闘する姿が描かれます。

とにかく、ある意味では茶化し過ぎではないかと思えるるほどにこの主人公の高校生は大人です。それも、単に年齢の設定が高校二年生というだけで、その行動は完全なプレイボーイです。

同時に、度胸の坐り方も尋常ではなく、そのことは、もと女暴走族のアタマであった隆の家庭教師でもある麻里さんや、女番長である康子にしても同様です。

犯罪者のふところに飛び込むのは普通で、逆に犯罪者をやっつけてしまったりもします。

こうした高校生を主人公にしたハードボイルド小説と言えば、東直己の『ススキノ・ハーフボイルド』という作品があります。

本書『アルバイト・アイ 命で払え』と同じく、高校生を主人公にしたハードボイルド小説で、『ススキノ探偵シリーズ』のスピンオフ作品ともいえる小説です。

ただ、本『アルバイト探偵シリーズ』ほど荒唐無稽でもなければ、アクション性もありません。どちらかというと青春小説に近い作品です。

 

 

それに比べれば本書『命で払え』は全くの痛快小説です。同じように高校生を主人公とし、ユーモアに満ちた物語であっても、処理の仕方でこうも変わるかと思われます。

ともあれ、本書『アルバイト・アイ 命で払え』は全く気楽に、物語の流れに乗って楽しむ作品です。シリーズの第一巻目が連作短編小説集であることはさらに読みやすいといえます。

今後どのように展開していくかは分かりませんが、2020年8月の段階では六巻が出ており、それで終わりの印象はあります。

アルバイト探偵シリーズ』の幸で書いたように、Amazon の Kindle版 で『アルバイト・アイ シリーズコンプリート版【全6冊合本】 (角川文庫) 』も出ているので間違いないでしょう。

 

アルバイト探偵シリーズ

『アルバイト探偵シリーズ』は適度な不良高校生冴木隆とその父親で市立探偵の冴木涼介との活躍を描くハードボイルド小説です。

とはいっても、シリアスな作品ではなく、ユーモアに満ちた、ハードボイルド小説のパロディというべきでしょう。

 

アルバイト探偵シリーズ(2020年08月29日現在)

  1. 命で払え
  2. 毒を解け
  3. 王女を守れ
  1. 諜報街に挑め
  2. 誇りをとりもどせ
  3. 最終兵器を追え

 
主な登場人物

冴木 隆 高校二年生 適度な不良高校生
冴木涼介 隆の父親らしい 女好きの私立探偵で元凄腕工作員らしい
圭子ママ 隆父子の住む「サンタテレサアパート」の大家 ハードボイルドマニアであり、一階の「麻呂宇」というカフェ・テラスを経営
星野さん クリストファー・リーのような風貌を持つ「麻呂宇」の老バーテンダー
倉橋麻里 隆の家庭教師で元女暴走族のアタマだった過去を持つ
島津さん 冴木涼介の過去の友人であり仕事仲間の『フクシツチョー』

 

先に本シリーズ『アルバイト探偵シリーズ』は、ハードボイルド小説のパロディ作品であると書きました。しかし、パロディという言葉が風刺、批判を内包する言葉であるとするならばパロディというべきではないかもしれません。

しかし、もし愛情をもってする文体の模倣を含むとするならば、本シリーズはパロディだといえると思います。

 

まず本シリーズ『アルバイト探偵シリーズ』の主人公は高校二年生です。

高校二年生でありながら、彼のまわりには元女暴走族のアタマや高校の女番長といった女性が集まり、腕っぷしもボクシングをやっているだけあってそこらのヤクザにも負けません。

また、女たらしの腕も父親に負けず、待ち合わせまでに時間があるからと六本木で十九歳のハマッ娘を拾い、彼女とホテルでことを済ませて待ち合わせに向かう、などの生活をしているほどです。

 

加えて、主人公である隆の父親冴木涼介が元ナイチョーのベテラン捜査員だったらしく、かつての仲間のフクシッチョーらと対立することになります。

またこの父親は、大家でありカフェ・テラス「麻呂宇」のオーナーである圭子ママからの誘いを回避しつつ、隆の家庭教師である麻里さんを落とそうと狙っています。

 

こうした現実にはあり得ない主人公親子が、国家レベルの事件に首を突っ込み、ジェームズ・ボンドさながらの活劇を繰り広げるのですから、これはパロディという以外ないでしょう。

とは言いながらも、隆と涼介父子のユーモア満載の会話、涼介や隆のそれぞれの振る舞いなど、本書はハードボイルド以外の何物でもありません。

 

本『アルバイト探偵』シリーズは、その第一巻目『アルバイト探偵』(現在の『アルバイト・アイ 命で払え』)の1986年という出版年度を見ても分かるように、バブル期(直前)に書かれた作品であり、何となくの景気の良さと、登場するアイテムの古さが目につきます。

でも、決して違和感を感じるものでもなく、当時の世相を反映した作品として楽しむべきとも言えます。

 

本シリーズは、最初は「廣済堂ブルーブックス」として出版されていましたが、後に「廣済堂文庫」や「講談社文庫」を経て、現在(2020年)では「角川文庫」から出版されています。

また、板元が変わるたびに本のタイトルも変更され、現在は上記のようなタイトルになっています。

そして、角川文庫半からはシリーズ名も『アルバイト・アイ』と変わっているようですが、ここでは作者大沢在昌氏の公式サイト「大極宮」にならい、『アルバイト探偵シリーズ』のままとします。

とはいえ、『アルバイト探偵シリーズ』も読みは「アルバイト・アイ」であって、単に表記が変わっただけです。

 

蛇足かもしれませんが、Amazon の Kindle版 では、『アルバイト・アイ シリーズコンプリート版【全6冊合本】 (角川文庫) 』も出ています。

 

 

ちなみに、第六巻『最終兵器を追え』(旧タイトルは『帰ってきたアルバイト探偵』)は、『アルバイト探偵 100万人の標的』 という題で、監督は崔洋一、父親の涼介を椎名桔平が演じ映画化されています。

 

ライアー

本書『ライアー』は、海外での暗殺を任務とする国家機関員である女主人公の姿を描く長編のアクション小説です。

この手の荒唐無稽な作品の第一人者である大沢在昌らしい、ハードボイルド感満載のエンターテイメント小説としてとても面白く読んだ作品でした。

 

穏やかな研究者の夫。素直に育った息子。幸せな家庭に恵まれた神村奈々の真の姿は対象人物の「国外処理」を行う秘密機関の工作員だ。ある日、夫が身元不明の女と怪死を遂げた。運命の歯車は軋みを立て廻り始める。次々と立ちはだかる謎。牙を剥く襲撃者たち。硝煙と血飛沫を浴び、美しき暗殺者はひとり煉獄を歩む。愛とは何か―真実は何処に?アクション・ハードボイルドの最高傑作。(「BOOK」データベースより)

 

「研究所」という国家機関の所員である主人公の神村奈々は、「委員会」と呼ばれる機関が選び出した対象者の処理を行う優秀な暗殺者です。

ある日不審死を遂げた夫神村洋祐の死の真実を知ろうとするななですが、その冷静な対応に違和感を感じた駒形という警察官が奈々の真実を知ろうと近づいてきます。

そうした奈々の行動にあわせて奈々を襲うものが現れますが、奈々は洋祐との間のという小学生の息子を守るためにも戦いを始めるのでした。

 

本書『ライアー』の魅力は、何といっても主人公神村奈々のキャラクターにあります。感情をどこかに置き忘れてきたような女です。夫が不審死に対しても、復讐のためではなく純粋に真実を知りたいというだけ、という女です。

このようなクールに描写されている奈々が自分でも分からない涙を流すなど微妙に変化を見せる姿は、この手の物語としては定番だとしても心惹かれるところです。

 

こうしたキャラクターと言えば同じ大沢在昌の作品で『魔女シリーズ』などがあります。裏世界のコンサルタントを業とする女性が、自分の過去と戦う物語で、かなり面白い作品です。

また、 月村了衛の『ガンルージュ』は、元公安の凄腕の捜査員だった過去を持つ女性が息子を助けるために、女性教師と共に外国の特殊部隊員戦いを挑むアクション小説でした。

 

 

ほかのキャラクターは神村奈々ほどの魅力を持っているわけではありません。神村奈々の直接の上司である大場にしても少々癖がありますがあえて取り上げるほどでもありません。

また、奈々に付きまとう駒形という刑事もいますが、後に神村奈々の正体を知り、事情が見えてきたときには「俺は恐かった。今も恐い。」と正直に言うほどです。少なくとも他のハードボイルド的な小説でしたたかな刑事の発する言葉ではありません。

でも、本書の場合は主人公を含めた世界自体が殺人を当たり前とする世界ですから、そうした世界と普通の世界との差を明確にするためにこのような言葉を言わせたのだろうと思われます。

 

神村奈々のキャラクターの他に本書『ライアー』の持つ魅力としては、本書が描き出す世界観も挙げていいかもしれません。

国家が処理対象と決めた人物を処理する機関、と言えば、アメリカのCIAや全体主義国家の組織、ロシアや中国の相当機関があると思われます。ソヴィエト時代はスペツナズなどの名称が物語の世界ではよく登場していましたが、今はよく分かりません。

とにかく、そうした機関でしか生きることのできない女性を主人公とした物語ですから、ジェイソン・ボーンシリーズなどの諜報員ものに似た世界が描かれるわけです。

ただ、あちらは諜報員であり、こちらは暗殺者という違いがあります。そしてその差がかなり大事だと思われます。

 

 

大沢在昌の小説に限ったことではないのですが、ハードボイルド系統の小説ではアフォリズムを効果的に使ってあり、本書もまた同様です。

そうした言葉の魅力もまた本書『ライアー』の魅力の一つとして挙げていいのかもしれません。

 

ともあれ、本書『ライアー』は大沢在昌らしいハードボイルドアクション小説として面白い小説であると言い切っていい作品だと思います。

妖の掟

本書『妖の掟』は、『妖の華』に続く『妖シリーズ(?)』の第二巻目となる長編のアクション小説です。

誉田哲也の作品だけにエンターテイメント小説としてそれなりの読みごたえはあったように思いますが、近時の誉田作品の中では今一歩でしょうか。

 

盗聴器の仕掛けがバレてヤクザに袋叩きにあう圭一を気まぐれで助けたのは、坊主頭の欣治と人形と見紛う美貌の持ち主、紅鈴だった。圭一の部屋に転がり込んだ二人にはある秘密が― –このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。(「BOOK」データベースより)

 

本書『妖の掟』は、前作『妖の華』で過去にあったとされる「三年前に起きた“大和会系組長連続殺害”」という記述を物語化した作品で、誉田哲也お得意のエロスとバイオレンス満載のエンターテイメント小説です。

本書の主人公である紅鈴と紅鈴の相棒の欣治がその能力を発揮し三人の組長を殺す、そのための舞台設定をし、すでに刊行されている『妖の華』へとつなぎます。

つまりは私が読む順番を違えたためにこの前提がわからず、本書『妖の掟』では今一つ誉田哲也らしくなく物語の工夫があまり感じられずに、「近時の誉田作品の中では今一歩」と感じたものと思われます。

前巻を読んでみると前巻での組長殺しの状況をかなり詳しく書き込んであるために、本書での自由度が制限されていたためだとわかります。

 

本書『妖の掟』では、主人公紅鈴とその相方欣治とに仲間ができます。辰巳圭一という男で、紅鈴らはこの男の絡みで前述の三人の殺しに関わることになります。

この男は、紅鈴らが吸血鬼だと明かされても動じません。それどころか、吸血鬼が友達だと自慢できる、などというのです。

この愛すべきキャラクターの存在が物語に何となくの哀しみを漂わせています。

 

エロスとバイオレンスの伝奇小説となると『妖シリーズ』の項でも書きましたが、 夢枕獏菊地秀行とが必須です。

夢枕獏には『魔獣狩りシリーズ』という作品が、 菊地秀行には『バイオニック・ソルジャーシリーズ』などがあります。(下掲リンクは文庫版ですが、それぞれにKindle版もあります)

 

 

彼らの作品は人間対異形のものという図式がなり立ちそうで、ラヴクラフトの「太古の神々」にも通じる存在が敵役でした。

 

 

本書『妖の掟』では主人公本人がその異形のものにあたるとも言えそうです。つまりは吸血鬼です。

ただ、その“異形のもの”自体が主人公である点が異なり、そういう意味では映画化もされているアメリカンコミックの『ヘルボーイ』と共通するところがあります。

 

 

紅鈴らは、こうした西洋の悪魔などとは異なる和風吸血鬼である「闇神(やがみ)」と呼ばれる存在です。

身体能力は通常の人間が及ぶものではなく、本書でもその能力を生かして三人の組長の殺しを実行してしまいます。

 

ちなみに、前巻でもそうらしいのですが、本巻でも『姫川玲子シリーズ』の主要登場人物の一人である新宿署の井岡巡査部長がほんの少しだけ顔を見せます。

別のシリーズで独特の存在感を出している人物が別のシリーズに登場することは、何となくそのシリーズにも親しみを感じてしまうのですから不思議なものです。

ともあれ、本書『妖の掟』が誉田哲也の作品としてベストを選ぶ際に入るかと言われれば疑問ですが、本書は本書としてかなり面白い作品であることは間違いありません。

ただ、未読の前作『妖の華』を読み、また作者が断言している未だ書かれざる本書の続巻、少年だった欣治と紅鈴との出会いの話の『妖の絆』、いろいろな時代の紅鈴&欣治コンビの話の『妖の旅』、一作目の後日談となる近未来SFの『妖の群』を読んだ後では、また評価が変わるかもしれません。

 

ちなみに、前巻でもそうらしいのですが、本巻でも『姫川玲子シリーズ』の主要登場人物の一人である新宿署の井岡巡査部長がほんの少しだけ顔を見せます。

別のシリーズで独特の存在感を出している人物が別のシリーズに登場することは、何となくそのシリーズにも親しみを感じてしまうのですから不思議なものです。

ともあれ、本書『妖の掟』が誉田哲也の作品としてベストを選ぶ際に入るかと言われれば疑問ですが、本書は本書としてかなり面白い作品であることは間違いありません。

ただ、前作『妖の華』を読み、また作者が断言している未だ書かれざる本書の続巻、少年だった欣治と紅鈴との出会いの話の『妖の絆』、いろいろな時代の紅鈴&欣治コンビの話の『妖の旅』、一作目の後日談となる近未来SFの『妖の群』を読んだ後では、また評価が変わるかもしれません。