あさのあつこの『バッテリー』、森絵都の『DIVE!』と並び称される、極上の青春スポーツ小説。
主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。(「Amazon」商品説明より)
作者は陸上スポーツは未経験者だそうです。私が「一瞬の風になれ三部作」を最初読んだときは、当然、陸上スポーツ経験者であると思っていました。トラック競技をやっていたわけではない私ですが、その隣で楕円形のボールを追いかけていたので、汗の香りは知っているつもりです。それほどに登場人物及びその舞台の描写は真に迫っていました。
単に客観的な描写が見事というだけではなく、登場人物の微妙な心理描写がホントにそうなんだろうな、と思わせるのです。
私が読んだ陸上の世界をテーマにした小説では、他に駅伝を描いた三浦 しをんの風が強く吹いている、堂場瞬一の「チーム」という作品があります。それ以外では小山ゆうの漫画「スプリンター」が思い浮かぶくらいでしょうか。
文章のタッチも軽やかでさわやかな読後感のこの物語は是非お勧めです。