出所したその日に、利き腕に怪我を負ったスリ。ギャンブルに負けて、オケラになったタロット占い師。思いっ切りツイてない二人が都会の片隅でめぐりあった時、運命の歯車がゆっくり回り始めたことを、当人たちはまだ知らない。やがて登場するもう一人がすべてを変えてしまうことも。「偶然」という魔法の鎖で結ばれた若者たち。能天気にしてシリアスな、アドベンチャーゲームの行方は。
この作品には、もう一つ感情移入できませんでした。少々ご都合主義にすぎるかなという点と、この作者らしからぬ舞台設定と感じたのです。「スリ」という設定の問題ではないと思うのです。読み手がそのテーマを好むかどうかによるかもしれません。
何よりもこの本で何を言いたいのか、作者の意図が良く分かりませんでした。単純に、面白い物語を提供する、でも勿論いいのですが、そうしたニュアンスも伝わりませんでした。「能天気にしてシリアスな、アドベンチャーゲーム」とは言えない、少々哀しみすら感じてしまうこの物語は、個人的には今一つでした。
しかし、本書のレビューを見ると、かなり面白いと評価する人が多いので、やはり以上の考えは個人的なもののようです。