佐藤多佳子デビュー作で、表題の「サマータイム」他3篇からなる(連作の)短編集です。
佳奈が十二で、ぼくが十一だった夏。どしゃ降りの雨のプール、じたばたもがくような、不思議な泳ぎをする彼に、ぼくは出会った。左腕と父親を失った代わりに、大人びた雰囲気を身につけた彼。そして、ぼくと佳奈。たがいに感電する、不思議な図形。友情じゃなく、もっと特別ななにか。ひりひりして、でも眩しい、あの夏。他者という世界を、素手で発見する一瞬のきらめき。鮮烈なデビュー作。(「BOOK」データベースより)
「サマータイム」は主人公進とその姉佳奈、二人の友人の広一とその母友子との物語。短編夫々に語り部が交代していきます。
そして、全編を通してその底に流れるのがあの「サマータイム」というジャズの名曲です。
進と佳奈の成長物語としても読めそうで、幼き頃の思い出から、青春のほろ苦さまでよくもこうまで美しく表現できるものだと感心しました。