冲方 丁 雑感
1977年生まれ。早稲田大学中退。1996年、『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞し作家デビュー。2003年、『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞を受賞、ベストSF 2003国内篇第1位に輝く。小説の他にゲーム、コミック原作、アニメ制作と活動の場は幅広い。他の著書に『ばいばい、アース』『テスタメントシュピーゲル』などがある。( 楽天ブックス|著者インタビュー : 参照 )
「物心ついたときに読んでいたのが…79年版の『デイリーコンサイス英和和英辞典』。ネパールに住んでいた11歳から13歳くらいまでの頃、これが唯一身近にあった日本語だったので、ひたすら読んでいた」というほどですから、子供のころから言葉に非情な関心があった方なのでしょう。とにかく日本語の本は大人の物であろうと手当たり次第に読んだと書いてありました。
ただ、「「ガンダム」の「ポケットの中の戦争」のビデオを手に入れた人がいたので、1から全部、セリフと情景を翻訳しました。それが12、13歳の頃。これはすごく大変で、1年がかりで訳しました。」とか、帰国してからの高校時代などに「ヘーゲルの『哲学史講義』とか。キェルケゴールの『死に至る病』は何を言っているのか分からないので、全部書き写しました。」( 以上 WEB本の雑誌 : 参照 )とあるように、その言語感覚は普通の人とは異なっていたようです。
そうした来歴を持っている方なので「日本のコンテンツの海外輸出」について、日本人は「どんな文化も日本的なものとして吸収してしまう能力には非常に長けている」「日本語というのは、世界でも類を見ない“6種類の文字を使う”言語なんですよ」「その結果、情報的にも情緒的にも密度の濃い表現を際限なく広げていくことができるようになったわけです」( UGOI JAPAN : 参照 )という視点を持つにいたったのでしょう。
子供時代をグローバルな環境で育ち、日本語について貪欲であっただけに、言葉を丁寧に扱うと共に、この人なりの視点が生まれたのでしょう。「二次創作解禁」などというユニークな試みも同様の視点の延長線上にあると思われます。(ぶらりずむ黙契録 – 公式ブログ : 参照 )
この人の仕事も、プロフィールを見ても分かるようにとても多岐にわたっています。まだ『天地明察』しか読んではいませんが、本来は私の好きなジャンルであるSFを書かれている作家さんなので、日本SF大賞を受賞した『マルドゥック・スクランブル』を始め、読んだいない作品ばかりなので楽しみです。