『昨日のまこと、今日のうそ』とは
本書『昨日のまこと、今日のうそ』は『髪結い伊三次捕物余話シリーズ』の第十三弾で、2014年9月に文藝春秋から刊行され、2016年12月に文春文庫から293頁の文庫として出版された連作の人情時代小説集です。
『昨日のまこと、今日のうそ』の簡単なあらすじ
松前藩主の嫡子・良昌からの再三の申し出に、側室になることを決意した不破茜だが、良昌の体調が刻一刻と悪化していく。一方、才気溢れる絵を描く弟弟子から批判され、自らの才能に悩む伊与太は当代一の絵師、葛飾北斎のもとを訪ねる。人生の岐路に立つ若者たちに、伊三次とお文はなにを伝えられるのか。(「BOOK」データベースより)
『昨日のまこと、今日のうそ』について
本書『昨日のまこと、今日のうそ』は『髪結い伊三次捕物余話シリーズ』の第十三弾の連作の人情時代小説集です。
前巻でも書いたことですが、シリーズも十三巻目の本書ともなると、シリーズ当初の伊三次とお文の二人の話はほとんどなく、代わりにその子供達が主役となっています。
とはいえ、伊三次らも引退したわけではなくそれなりの活躍を見せてくれてはいます。ただ、前巻でもそうであったように、お文の影が薄い印象はあります。
第一話目 「共に見る夢」
第二話目 「指のささくれ」
第三話目 「昨日のまこと、今日のうそ」
第四話目 「花紺青(はなこんじょう)」
第五話目 「空蝉(からせみ)」
第六話目 「汝、言うなかれ」
この作者の、特に本『髪結い伊三次捕物余話シリーズ』は、読んでいる最中も、読み終えてからも、ゆるやかな時間(とき)の流れを感じさせてくれます。
こころ優しさを感じる丁寧な情景描写と共に作中人物の心情が思いやられ、特に、親としての伊三次とお文、不破友之進といなみらの心情を、やはり親としての自らの姿と重ねたりしています。
このシリーズが終わってほしくないと心から思う物語の一つです。
ここに記している文章もまた六年以上も前の文章であり、今後、再読時にあらためて書き直したいと思っています。
