『図書館の魔女 霆ける塔』とは
本書『図書館の魔女 霆ける塔』は『図書館の魔女シリーズ』の第四弾で、2025年10月に講談社から672頁のソフトカバーで刊行された、長編のファンタジー小説です。
幽閉されたマツリカを救出する一の谷の高い塔の仲間たちの活躍が描かれる、胸躍るロマンに満ちた待望の一冊でした。
『図書館の魔女 霆ける塔』の簡単なあらすじ
図書館の魔女マツリカは、宿敵ミツクビの罠に落ち山峡の獄に幽閉される。砦主らの手厚いもてなしを受けながらも、脱出の糸口を探るマツリカ。キリヒトたちは、彼女を救い出すため、夜ごと激しい雷に撃たれつづける石造りの砦ー「霆ける塔」に向かう。そして物語は2027年、『図書館の魔女 寄生木』へと続く。(「BOOK」データベースより)
『図書館の魔女 霆ける塔』の感想
本書『図書館の魔女 霆ける塔』は『図書館の魔女シリーズ』の第四弾で、これまでと異なり図書館の魔女救出に動く高い塔の仲間たちの冒険の様子に胸躍るファンタジー作品です。
本書冒頭から図書館の魔女が囚われている様子の描写がありますが、この塔こそが『霆ける塔』であり、毎夜「霹靂に撃たれ苛まれる
」塔であって、本書の展開がどうなるのか一瞬で引き込まれました。
この作者の文章の言い回しはなかなかに難しいとはわかっていたのですが、本書の言葉遣いはこれまでになく古風であり、一読するだけでは理解に苦しむ場面が多々あります。
シリーズのこれまでの作品が手元にないので確認はできませんが、古い言い回しが多用はされていても、本書ほどにはなかったような気がします。
例えば、本書冒頭の「1 天鼓(てんく)」の第一頁目には「光耀に眩む目が視覚を失った刹那に、青竹を強(あながち)に割り開くような裂帛が耳を劈(つみさ)き、雷霆が鳴り轟(ほめ)いて円天井を揺るがせた。」という文章があります。
この一文だけで「光耀」「強(あながち)」「裂帛」「を劈(つみさ)」く、「雷霆」、「轟(ほめ)いて」などと、普段使わないような言い回しが多用されているのです。
そもそも本書のタイトル『霆ける塔』からして意味が分かりません。調べると、「(雷が)激しく鳴り響く。」という意味だとありました( Weblio古語辞典 : 参照 )。
それでも、ほとんどの場合は前後の文脈から意味は分かりますので、辞書を引くまでもなく読み進めても支障はありません。
というよりも、本書の内容に惹きこまれてしまい、辞書を引くゆとりもなかったという方が正解でしょう。
なんといっても、本書の面白さの第一は登場人物たちの冒険譚にあります。
とはいっても、よくあるアクションが中心の冒険ではなく、前半はマツリカが囚われている場所の特定に奔走する一の谷の図書館付きの衛兵であるアキームやイズミルといった面々が情報を収集し、ハルカゼやキリンといった司書たちが頭脳を駆使し、次第にその居場所を確定する様子が描かれています。
さらに、本シリーズの第二弾『烏の伝言』で登場してきた剛力のワカンや鳥飼(とがい)のエゴンらが加わり、さらにファン待望のキリヒトが加わるのです。
このキリヒトの登場はネタバレになるかと思っていたのですが、それ以前に本書の「内容解説」や「あらすじ」の紹介に明記されているので問題ないでしょう。
まず、マツリカの幽閉されている場所を特定するための様子が知的好奇心をくすぐります。
そもそも本書の読書は、全編を通して作者の知識の豊富さを見せつけられ、色々な物事についての考え方を改めて教えられるようだと思いながらの読書でした。
なかでも、前半はハルカゼらを中心とした仲間たちがマツリカが囚われている場所を特定するために、少ししかない手掛かりから推論を重ねていく様子そのものが面白さに満ちているのです。
こうした推論の過程を詳細に描くには、地質、植物、気象、言語等々の知識に精通する必要、若しくは資料の読み込みをするにしても関連資料を丁寧に読み込み、理解する必要があるでしょう。
著者は言語学者でありその方面には詳しいでしょうが、地質や気象の方面まで詳しいとは思えず、かなり勉強をされたのではないでしょうか。
ところが、終盤を迎えるあたりから俄然サスペンス感に満ちた展開になってきたのには驚きました。
前半でマツリカの居場所が特定されるまでの静的な描写とは一転し、エゴンらを中心として救出劇に移るのです。
このアクション面が少々短めなのは残念でしたが、それでも壮大な救出劇は読みごたえがありました。
本書『』は読み手にとっては決して読みやすい作品とは言えないと思います。
ですが、私のように全部を理解できなくて読み飛ばすしかないような読者であっても、ストーリーについていけないことはなく、非常に面白い作品として読み終えることができたのです。
それもかなり引き込まれて読み終えた、と言ってよく、今はただ、さらなるマツリカの物語を読みたいと思っています。
なお、図書館で借りて読む派の私が読んだ本にはなかったため分かりませんでしたが、本作の初版の帯には「そして物語は2027年、『図書館の魔女 寄生木』へと続く。」とあったそうです。
続編を読むには、この後丸一年以上を待たねばならないようです。長いですが、待つしかありません。