本書『いくさ中間』は、紀之屋玉吉残夢録シリーズの第二弾となる長編の痛快時代小説です。
父親としての玉吉の姿が垣間見える一編で、読みがいのある面白さ満載の作品でした。
深川は門前仲町の芸者置屋「紀之屋」の玉吉は、何者かに襲われ息絶えようとする浪人から、この金を娘に、と託される。届けに行った先で出会ったのは、たった十歳で天涯孤独になってしまった娘、ちづ。玉吉はかつて御家人だった頃に失った自分の娘とちづを重ね、浪人が殺された理由を調べ始める。その裏には、奉行所も頭を悩ませるある事件がからんでいるのだった…。苛烈な過去を持つがゆえに心優しき幇間が江戸を奔る、シリーズ第二弾。書き下ろし長編時代小説。(「BOOK」データベースより)
今回は幇間としての玉吉は影をひそめています。遊び人が好奇心から事件の背景を探る、という設定でも行ける程です。
しかし、たまに主人公玉吉の過去が垣間見え、やはり玉吉の物語ではあります。その玉吉の過去が少しずつ見えてくる点でも読み手としてはその後の展開に期待が持てます。
本書『いくさ中間』の作者水田 勁 雑感でも書いているように、この作家については何も分かりません。
しかしながらその分隊はなかなかにテンポの良く、とても気持ち良く読むことができます。続刊が出るのが待ち遠しいほどです。
そのリズムの心地よさについつい本が置けずに一気に読んでしまいました。
この文章のどこにそのテンポ良く感じる原因があるのか、私には分かりません。ちょっとゆっくりと分析してみたい気もするのですが、残念ながらそんな分析能力もないことに気付きました。
楽しく読めれば十分でありそれを解析する必要などない、という気もします。
ただ、読んでいて思ったのは時代背景や場面説明などの書き方のタイミングが良く、またその説明も簡潔で小気味良い、ということです。
そうした文章の過不足の無い簡潔さも心地よいりズを作っている原因の一つではないでしょうか。
とにかく、面白い小説です。今後の展開を待ちたいです。