J・ヴァーリイ 雑感
1947年テキサス州オースティン生まれ。74年に短編「ピクニック・オン・ニアサイド」で作家デビューし、たちまち高い評価と人気を獲得した。これまでにヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞のトリプルクラウン2作、ヒューゴー賞とローカス賞のダブルクラウン1作、ほかにローカス賞7作(うち短編集部門4作)という受賞歴を持つ(日本の星雲賞も2回受賞)、70-80年代を代表するアメリカSF作家の一人である。長編に『へびつかい座ホットライン』(1977)、『スチール・ビーチ』(1992)など。(出典:「東京創元社」)
ジョン・ヴァーリイと言えば「八世界」です。異星人により地球の正統な後継者とはみなされなかった人類はほとんど抹殺されたものの、一部の人間は太陽系の各地(水星、金星、月、火星、タイタン、オベロン、トリトン、冥王星)へと脱出し、生き延びます。この八つの世界を舞台にした物語を称して「八世界」と言います。その際のテクノロジーとなったものが「へびつかい座」から送られてきた種々の情報でした。この「八世界」を舞台にした長編が『へびつかい座ホットライン』です。
また、「八世界」をベースにしている第一短篇集『残像』で1978年にネビュラ賞、1979年にヒューゴー賞及びローカス賞を受賞というトリプルクラウンを果たしています。
ハインラインを尊敬していて、ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』に出てくる月世界のコンピューターを思わせるセントラル・コンピュータ(CC)が多くの作品に登場します。
ただハインラインとは異なり、この作者の作品に出てくるガジェット(仕掛け)として、人間の肉体の改変に対する禁忌は無いという点が挙げられます。更に言えば「性」でさえも自由に変換可能なものとなっているのです。
この点でコードウェイナー・スミスの「人類補完機構シリーズ」を思い出してしまいました。「人類補完機構シリーズ」では、動物を改造して作られた「下級民」が人類の下僕として登場します。その世界感は異なりはしますが、微妙に似たものを感じているのは私の記憶違いでしょうか。
このあとの時代に登場する「サイバーパンク」の香りを少しではありますが感じ、その点で若干の距離を置いた記憶があります。
しかしながら、「古き良き」SF小説作家であることに間違いは無く、後述の大野万紀氏も言うように「四倍角の大文字で書くべき『SF』作家である。そのヴィジョンは伝統的なSFの力に満ちている」のです。