真藤 順丈

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英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!(「BOOK」データベースより)

 

本書はオンちゃんという英雄の失踪という謎を中心とした、1950年代から70年代までの沖縄史を描いた、ミステリータッチの長編冒険小説です。

 

戦後沖縄のコザの町で最高の戦果アギヤーとして英雄と呼ばれたオンちゃんが、嘉手納空軍基地への侵入の後行方不明になってしまいます。

その後、オンちゃんの恋人のヤマコとオンちゃんの弟のレイ、それにオンちゃんの親友であったグスクの三人は、教師やテロリスト、そして刑事にとなり、それぞれの人生を歩んでいますが、それでもオンちゃんの行方を探し求めるのです。

 

沖縄という土地はあらためて言うまでもなく米軍基地が存在し、それ故に様々な問題を抱えています。2019年1月の現在でも普天間基地移設問題などが大きな問題としてなお存在しているのです。

私が大学浪人のために上京したのが1970年で、いまだ大学紛争の熱気冷めやらぬ時代でした。その後、何とか大学にもぐりこんで2年目の1972年に沖縄の返還がなされました。ですから、本書『宝島』で描かれている事件のほとんどは記憶に残っています。かなりインパクトの強い事件ばかりでした。

 

本書はそうした事件の多発していた時代を駆け抜けた三人の若者の二十年間のそれぞれの人生を、強烈な輝きをもって描き出してあるエンターテインメント小説です。

本書を読むと、私が東京で見聞きし、感じていた沖縄の状況は、沖縄に暮らす人たちにとってみればその一部でしかなかったことに気づかされます。

沖縄では、私らが感じていた、沖縄の人の生活の隣に米軍の存在があったのではなく、沖縄の政治も経済も日々の生活自体がまず米軍ありきであって、米軍存在の次に沖縄の人々の生活があったのだと思い知らされます。

本書はそんな沖縄の歴史を、東京生まれの作家が、ウチナーグチと言われる沖縄の方言で書き著した小説です。そこにこそ本書の意義があるという指摘も散見されるほどです。

この文章を書いている途中に第160回直木三十五賞の発表があり、本書『宝島』が受賞しました。

直木賞選考委員の林真理子氏が、沖縄で起きた事件をポップに表現している、として評価されていたように、時代性が重視されたのでしょうか。

 

ポップに描かれているかどうかは別にして、個人的には、本書『宝島』が沖縄の歴史を明確にしたという功績は大きなものがあるとしても、本書の持つエンターテインメント小説としての面白さを忘れてはならない、と思っています。

本書は、どことなく 東山彰良の『逃亡作法』を思い出させる作品でもありました。

それは、共に刑務所を舞台としている場面があることも理由の一つだったのでしょうし、文章がスピーディーであることもそうだったのかもしれません。

ただ、本書『宝島』は『逃亡作法』ほどのバイオレンス性はありませんし、また猥雑な感じもありませんでした。

 

 

個人的には同じ第160回直木三十五賞の候補作である『童の神』のほうがより視覚的であり、私の好みではありました。平安時代を背景に子供のころに聞いたおとぎばなしの登場人物が活躍するのですから感情移入がしやすかったのでしょう。

ともあれ、本書が直木賞を受賞するに値する作品であることは間違いなく、一読すべき作品だとは思います。

[投稿日]2019年01月17日  [最終更新日]2019年1月22日
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