武士道シリーズ

武士道シリーズ(2017年08月01日現在)

  1. 武士道シックスティーン
  2. 武士道セブンティーン
  3. 武士道エイティーン
  4. 武士道ジェネレーション

剣道に打ち込む女子高校生を主人公とした王道の青春小説です。

この作家の他の作品にみられるホラーテイストは微塵も無く、空はどこまでも青く澄み渡っている青春世界です。

これはどの作家にも言えることだと思うのですが、本作品は女子高校生が主人公なのにその心理描写などどうしてあんなによく書けているのでしょう。いや、私が女子高生の心裡が分かる筈もないので、書けていると思われると言うべきなのでしょうか。

私は昔ちょっとだけ剣道をかじったこともあり、個人スポーツ(武道)としては剣道が最高のスポーツ(武道)だと思っているのですが、その剣道の辛さ、素晴らしさ、なども含め良く書けているなあ、と感心するばかりです。

剣道というと、藤沢周 の『武曲(むこく) 』という作品
などがあります。アル中コーチ矢田部研吾の人間描写と、現代っ子の高校生羽田融(はだとおる)が剣道にのめり込んでゆく姿を描いた作品です。この作品は綾野剛と村上虹郎というキャストで映画化されるそうです。


他方で、若干猟奇的な描写も入る人気の警察小説である『姫川玲子シリーズ』や『あなたが愛した記憶』のようなノンストップホラーも書くのですから何も言えません。

ストロベリーナイト [TV]

連続ドラマ版「ストロベリーナイト」では描ききれなかった、誉田哲也原作の姫川玲子シリーズがスペシャルドラマとして映像化!それは、あの“雨”の日の後の物語。映画「ストロベリーナイト インビジブルレイン」で描かれる姫川班“最後の事件”の後日譚が5本の短編で描かれる、それぞれ対峙する新たな事件とは…。(「Oricon」データベースより)

2013年1月に土曜プレミアム特別企画として放映された、映画版の後日譚をそれぞれ姫川、菊田、葉山、井岡・日下、勝俣を主人公にオムニバス形式で描いています。

このドラマを見たのが最初でした。思いのほか面白かったので映画も見ようと思い立ったのでした。それまでのドラマも見ればよかったと思ったものです。

ストロベリーナイト [連続ドラマ版]

誉田哲也のベストセラー小説をTVドラマ化!息もつかせぬサスペンスに満ちたストーリーだけではなく、登場人物の悩みや悲しみ、葛藤も深く描く。ノンキャリアで成り上がり系の警視庁捜査一課の女性刑事・姫川玲子を竹内結子、ライバル刑事“ガンテツ”を武田鉄矢、姫川玲子を支える部下を西島秀俊、姫川班の刑事を小出恵介、丸山隆平(関ジャニ∞)など豪華キャストで演じる。DVD-BOX。(「Oricon」データベースより)

2012年1月からフジテレビ系列で放映された連続ドラマ版です。

ストロベリーナイト [TVパイロット版]

美しく強くミステリアスな女刑事を描いたサスペンスドラマ。溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。警視庁捜査一課殺人犯捜査係、唯一の女性係長である姫川玲子警部補は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉“ストロベリーナイト”の驚愕の意味とは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった―。(「Oricon」データベースより)

2010年11月にフジテレビで放映されて『土曜プレミアム』特別企画のスペシャルドラマ版です。

ストロベリーナイト [DVD]

竹内結子主演による人気刑事サスペンスの劇場版。誉田哲也原作の姫川玲子シリーズ「インビジブルレイン」を基に、連続殺人事件の謎を追う女刑事・姫川玲子と、彼女率いる姫川班を待ち受ける最大の試練を描く。共演は西島秀俊、大沢たかおほか。(「キネマ旬報社」データベースより)

映画の予告編を見てレンタルで見るつもりだったのですが、テレビで放映されました。映画の二時間強という時間の制約の中で、予想以上に良くできていました。

映画のタイトルは「ストロベリーナイト」ですが正確にはシリーズ中の「インビジブルレイン」が原作です。映画はより男と女に焦点を当ててあり、大沢たかおの牧田が少々気にならないでは無かったのですが、原作の陰鬱な雰囲気も壊すことなく、竹内結子の演技も光っていて満足出来た映画でした。

ストロベリーナイト

いま注目の作家・誉田哲也の「女性刑事・姫川玲子シリーズ」第1作をコミック化!
全身に無数の切創、ズタズタに切り裂かれた腹部、そしてカッターナイフで
ノドをスッパリ切られた異常な惨殺体が発見された。
警視庁捜査一課殺人犯捜査係主任警部補・姫川玲子率いる姫川班は捜査を続けるうち、同じ手口で惨殺された遺体を発見する。連続殺人事件のカギを握るのは、
インターネット上の謎のサイト『ストロベリーナイト』だった!(Amazon紹介文より)

姫川玲子シリーズ

本『姫川玲子シリーズ』は、女性刑事姫川玲子を主人公とする、ミステリーというよりはサスペンス色の強い作品が多い長編がメインの警察小説です。

作者誉田哲也の作品の中でも登場人物のキャラクター設定がとてもよく、またテンポ良い文章が物語世界に入り込み易い作品で、ベストセラーとなるのも納得のシリーズです。

 

 

主人公姫川玲子は男勝りの性格で、直観に従い班長として菊田和男巡査部長らを始めとする部下の男たちを引っ張って行きます。

また部下たちも、暴走しがちでどことなく危なっかしい姫川玲子をサポートしながら事件を解決していくのです。

ひたすら感覚で犯人を追い詰める姫川は、天敵ともいうべきガンテツこと勝俣健作警部補から、犯人と同じ思考方法をとる姫川は危なっかしいと指摘されたりもしています。

しかし、レイプという悲惨な過去を持つ主人公の姫川は、その過去をトラウマとして抱えながらも自分を支えてくれ、後に殉職してしまった女性警察官を思いながら職務に邁進していくのです。

 

本『姫川玲子シリーズ』ではポイントポイントで人情もののような心の交流をも描きながら物語が進んでいくので、読者としても気楽な気持ちで読み進めることができます。

ただ、猟奇的と言っても良い場面があるのでグロいシーンが駄目な人は少々注意が必要かもしれません。

時には、誉田哲也の他のシリーズ『ジウサーガ』とシンクロする遊びがあったりするのも楽しみの一つです。

 

 

テレビドラマ、また映画も、竹内結子が主演として姫川玲子を演じ、菊田を西島秀俊、井岡を生瀬勝久という同じキャストで作成されていて、個人的にはなかなか良くできていたという印象のドラマでした。

ただ、ガンテツこと勝俣を武田鉄矢が演じていたのは少々イメージ違いかと思っていましたが、見ているうちに武田鉄矢こそがふさわしいと思えてきたのですから、役者さんは大したものです。

 

 

更に、2019年4月からは新たな姫川玲子の物語として『ストロベリーナイト・サーガ』と題したドラマがフジテレビで放映されました。

しかし、キャストが姫川役を二階堂ふみというのはまあいいのですが、個人的には菊田和男をKAT-TUNの亀梨和也が演じるということでしたので、結局見ることもありませんでした。

 

 

なお、これまで『姫川玲子シリーズ』の第五弾として記載していた『感染遊戯』は、『姫川玲子シリーズ』としてはカウントしないこととするそうです。

というのも、「将来的に勝俣健作(かつまたけんさく)を主人公とする作品が刊行された場合、『感染遊戯』は「勝俣健作シリーズの第一作」と紹介されるであろうから」だということです( Book Bang : 参照 )。

蝦夷地別件

十八世紀末、蝦夷と呼ばれるアイヌ民族は和人の横暴に喘いでいた。商人による苛烈な搾取、謂れのない蔑みや暴力、女たちへの陵辱…。和人との戦いを決意した国後の脇長人ツキノエは、ロシア人船長に密かに鉄砲三〇〇挺を依頼する。しかし、そこにはポーランド貴族マホウスキの策略があった。祖国を狙うロシアの南下政策を阻止するべく、極東に関心を向けさせるための紛争の創出。一方で、蝦夷地を直轄地にしようと目論む幕府と、権益を死守しようとする松前藩の思惑も入り乱れていた。アイヌ民族最後の蜂起「国後・目梨の乱」を壮大なスケールで描きだす超大作。(上巻:「BOOK」データベースより)

 

1789年に実際に起きたアイヌの反乱を題材に書かれた、文庫本で全三巻になる長編小説です。

 

18世紀後半における江戸幕府及び豪商のアイヌの人たちに対する搾取の状況の描写はアイヌの反乱を予期させるものとして書かれたのでしょうが、その描写をも超える歴史的な現実を感じさせます。

この作者の「夜のオデッセイア」とは異なり、読み通すにはかなりの体力を要します。

 

 

勿論、作者が船戸与一なのですから面白いことは間違いありません。

ただ、ロシア革命まで見通す歴史描写と松平定信や松前藩、アイヌの人たちという多数の登場人物の描写が、1800枚という大長編の中で詳細に語られるので息つく間がなかなか無いのです。

しかし、この手の濃密な物語が好きな人にはたまらない作品でしょう。

ちなみに、この作品は第14回日本冒険小説協会大賞を受賞しています。

 

蛇足ながら、同じアイヌをテーマにした壮大な歴史小説として川越宗一の『熱源』という作品が第162回直木賞を受賞しています。

こちらは本書とは異なり正面からの冒険小説では無く、ヤヨマネクフという樺太アイヌとブロニスワフ・ピウスツキというポーランド人という実在した二人の人物を主人公とする、壮大な長編の歴史小説です。

 

夜のオデッセイア

客の罵声を浴びながらリングに転がる。八百長ボクシングで金を稼ぐおれは、トレーナーの野倉と大型ワゴン“オデッセイア”でアメリカ大陸を漂泊中、ベトナム帰りの二人のプロレスラーと合流。イラン人への手紙をマイアミに届ける過程で、パーレビ国王の隠し財産を巡る闘いに巻き込まれていた。CIAやモサド、マフィアと闘う一匹狼達の群れ。(「BOOK」データベースより)

 

ボクサー崩れとそのトレーナーの二人とベトナム帰りの元プロレスラーの二人とが、頼まれものの手紙をCIAやモサド、マフィアに襲われつつ、「オデッセイア」と名付けられたワゴンに乗ってマイアミまで届ける、ロードムービー小説版です。

 

この作家の他の作品と比べると何となくの能天気さがつきまとっている点は異色かもしれませんが、如何にもこの作家らしい冒険活劇小説です。

登場人物夫々のキャラクターが十分に書き込まれ、テンポよいアクションに引き込まれること間違いなし、の物語です。

 

この作品『夜のオデッセイア』は、南米三部作に対抗して『炎流れる彼方』『蟹喰い猿フーガ』と共に北米三部作と読んでもいいかもしれません。(下掲の『炎流れる彼方』はKindl版です)

 

 

なお、本書は古書しか無いようで、更には文庫本の写真もありません。そこで、書籍写真は新刊書のものを借りていますので、写真のリンク先は新刊書になっています。

山猫の夏

舞台はブラジル東北部の町エクルウ。この町では、アンドラーデ家とビーステルフェルト家が、互いに反目し合い、抗争を繰り返している。ある日、アンドラーデ家の息子・フェルナンとビーステルフェルト家の娘・カロリーナが、駆け落ちする。その捜索を依頼された謎の日本人・山猫。ブラジル版ロミオとジュリエットに端を発した、山猫による血で血を洗う追跡劇が始まる。冷酷非道な山猫の正体と思惑、そして結末に明らかにされる衝撃の事実とは…?冒険小説の第一人者が描く、手に汗握る怒涛のストーリー。究極のエンタテイメント小説が復刊(「BOOK」データベースより)

 

名作といわれる長編の冒険小説です。

 

舞台はブラジルのエクルウという田舎町。エクルウでは抗争中の2つの家の息子と娘が駆け落ちをし、「山猫」と名乗る日本人が追跡者として雇われることとなる。

エクルウでバーテンダーをしていた日本人の「俺」は「山猫」の通訳兼助手となり、「山猫」の語り部として共に行動することになるのだった。

黒沢明の「用心棒」のような設定のアクション小説で、第3回日本冒険小説協会大賞と第6回吉川英治文学新人賞を受賞しています。

 

 

本作『山猫の夏』と『神話の果て』『伝説なき地』とで南米三部作と呼ばれています。(下掲の二冊はKindl版です)

 

 

本作『山猫の夏』はこの作家の初期作品のうちの一冊ですが、舞台設定や登場人物の書き込みは情報豊富で、なお且つ痛快さを持っています。

 

軽く読める本ではありませんが、いわゆるライトノベル好きな人にも読み易い本かもしれません。30年近くも前の作品ですが、古さは感じないと思います。