町田 そのこ

イラスト1
Pocket

新刊書

小学館

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 宙ごはん [ 町田 そのこ ] へ。


宙ごはん』とは

 

本書『宙ごはん』は、ある母娘の姿を描いた、王様のブランチで紹介されていた2022年5月に刊行された365頁の長編小説です。

母でいることのできない母親とその娘の姿を、一人の料理人のおいしそうな料理を作る姿を挟みながら描く、感動的な家族小説です。

 

宙ごはん』の簡単なあらすじ

 

宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。(内容紹介(出版社より))

 

 

宙ごはん』の感想

 

本書『宙ごはん』は、町田そのこという作者の作品らしく、ほとんどの登場人物たちはその家庭に問題を抱えているものの、みんなその中で強く生きようとする姿が描かれている感動的な物語です。

物語の設定自体はその全部をそのままに受け取ることができにくい、出来すぎた感のある状況ではありますが、主人公の悩みはストレートに読者に迫ります。

 

本書の主人公は川瀬宙という女の子で、彼女の五歳から十七歳までの人生を描き出してあります。

宙の母親がイラストレーターの川瀬花野であり、その花野の妹が宙を六歳まで育て上げて宙からママと呼ばれている日坂風海です。

そして、重要なのが洋食店を営む佐伯恭弘という存在で、花野の後輩にあたります。この恭弘が宙の相談に乗り、またいろいろな料理を教えてくれるのです。

 

本書は『宙ごはん』とのタイトルからして、おいしそうな料理を軸にした心温まる家族小説だと思って読み始めました。

ところが、そこはやはり町田そのこという作家の作品です。描かれているのは様々な家族の話であり、人生の話でした。

つい先日、本書の作者町田そのこの2022年本屋大賞候補作である『星を掬う』という作品を読んだのですが、この作品も本書とおなじように様々な形の問題を抱えた家族の話でした。

幼い頃に主人公を捨てた母親と再び共に暮らすことになった女性の話で、この作品に登場する人物それぞれがDVであったり、家族に問題を抱えていたりします。

そして、主人公の母親も含め、登場人物のそれぞれについての隠された事情が明らかにされていくのです。

 

 

同じことは本書『宙ごはん』についても言うことができ、花野やその妹の風海、そして恭弘やそのほかの登場人物についての事情が明らかにされていきます。

それぞれの行動に至らざるを得なかった理由や、そのことを他言できなかった理由などが明らかにされていくなかで、宙に対する母親の愛情などが示されていくのです。

そして、その示されていく過程が感動的な場面として読者の前に提示されます。その展開の仕方はさすがという他ありません。

例えば恭弘と宙との会話で、好きな人と共に歩むことの意味を分かり易く話してくれる場面などがありますが、このような心に迫る文言、会話が随所に散りばめられています。

そうした心温まるほっこりする話は実に楽しく、幸せなひとときであり、こうした読書の時間をこそ持っていたかったのだと思うのです。

 

ただ、そんな気持ちの反面、普通の人間がこうした例え話などができるはずはないと思ってしまう、普通の人間にこうした気の利いた会話ができるはずがないと思ってしまう自分がいます。

まったくもって作者に失礼な個人的なダメ出しだと思うのですが、これが本心でもあります。

上記の場面の後に描かれている宙の彼からのメールなども同様です。出来すぎです。

 

とはいっても、そうした言葉を否定していたのでは本書のような作品は成立しないでしょうことは理解できます。

そして、本書『宙ごはん』は多くの人に感動を与えるだろうし、また多くの人の心をつかむだろうことは考えるまでもなくわかります。

それほどに読者の心をつかむ作品だと思います。

ただ、町田そのこの作品が、パターンが似ていることが若干気にはなります。

でも、とてもいい本だということは否定できず、琴線に触れる作品だったと思います。

[投稿日]2022年07月16日  [最終更新日]2022年7月16日
Pocket

おすすめの小説

家族をテーマにした小説

そして、バトンは渡された ( 瀬尾 まいこ )
親子、家族の関係を改めて考えさせられる2019年本屋大賞にノミネートされた長編小説です。血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった森宮優子、十七歳。だが、彼女はいつも愛されていた。身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作。
52ヘルツのクジラたち ( 町田そのこ )
本書は、2021年本屋大賞にノミネートされた、新刊書で260頁の長編の現代小説です。家庭内虐待を取り上げ、声を上げても聞いてもらえない女と文字通り声をあげることのできない少年との交流を描いた作品で、好みではないが、しかし読むべき作品でした。
キネマの神様 ( 原田マハ )
原田マハ著の『キネマの神様』は、映画に対する愛情がいっぱいの、ファンタジックな長編小説です。「映友」に映画に関する雑文を書いていた歩は、父親が書いた映画に関する文章を映友のサイトに載せて見ました。すると、とある人物との問答が大反響を呼び、大人気となったのでした。
小さいおうち ( 中島 京子 )
中島京子著の『小さいおうち』は、東京郊外の私鉄沿線の町に住む平井家の女中をするタキという女性がを主人公とする、第143回直木賞を受賞した小説です。昭和を生き抜いたひとりの女性の一途な思いを描いた、回想録の形をとった人間ドラマ、と言っていいと思います。
海の見える理髪店 ( 荻原 浩 )
第155回直木賞を受賞したいろいろな家族の在り方を描いた全六編からなる短編集です。表題作の「海の見える理髪店」は、この物語が予想外の展開を見せるなかで、何気ない言葉の端々から汲み取れる想いは、美しい文章とともに心に残るものでした。特に最後の一行は泣かせます。

関連リンク

『宙ごはん』町田そのこ|小学館
『宙ごはん』町田そのこ|小学館 公式サイト オリジナルムービー あり
町田そのこ『宙ごはん』 | 小説丸
孤独の持ち主たちが擬似家族を形成し、回復していく姿を描き出した初長編『52ヘルツのクジラたち』で二〇二一年本屋大賞を受賞した町田そのこが、最新長編『宙ごはん』で...
全国の書店員さん大絶賛! 町田そのこ最新刊『宙ごはん』の最新情報はここでチェック!!
2021年本屋大賞受賞『52ヘルツのクジラたち』、2022年本屋大賞ノミネート『星を掬う』に続く、町田そのこさんの最新作『宙ごはん』が本日5月27日に発売されま...
【著者インタビュー】町田そのこ『宙ごはん』
本屋大賞受賞作家が「食」をテーマに一見歪な家族を描いた、とても優しい、救いと再生の物語。作品に込めた想いを著者に訊きました。
階段を駆け上がって見えた世界 | 町田そのこ、三浦しをん
2016年のデビューからわずか5年で本屋大賞を受賞した町田そのこ氏。第15回「女による女のためのR-18文学賞」でデビュー作の選考委員を務めた三浦しをん氏をお招...
「読みながら何度も何度も、涙がこぼれた」「一番、読んでほしい!」全国の書店員さんが大絶賛! 町田そのこ最新刊『宙(そら)ごはん』小学館より本日発売!!
2021年本屋大賞受賞『52ヘルツのクジラたち』、2022年本屋大賞ノミネート『星を掬う』に続く町田そのこさんの最新作『宙ごはん』を小学館より本日発売しました。
2021年本屋大賞受賞作家、町田そのこ氏の最新書籍『宙ごはん』が教えてくれる、食べるということ、生きるということ
2021年本屋大賞受賞『52ヘルツのクジラたち』や2022年本屋大賞ノミネート『星を掬う』でも知られる、町田そのこ氏の待望の最新作『宙ごはん』が好評発売中です。
“食卓”が紡ぐ一風変わった母娘の成長を描く 『宙ごはん』町田そのこインタビュー
2021年本屋大賞受賞作『52ヘルツのクジラたち』、続く『星を掬う』と、傷つき孤独な女性たちの再生を描き、多くの人の心をつかんでいる町田そのこさん。5月27日に...
本屋大賞作家・町田そのこ氏が新作を語る「泥沼から立ち上がる瞬間や気付きを伝えたい」
昨年の本屋大賞受賞作『52ヘルツのクジラたち』のモチーフとなった、仲間にも届かない周波数で鳴く鯨のように、弱くとも誇り高き者達の声なき声に耳を傾け、小説の形で問...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。