『イクサガミ 人』とは
本書『イクサガミ 人』は『イクサガミシリーズ』の第三弾で、2024年11月に講談社から528頁の文庫書き下ろしとして出版された、長編のアクションエンターテイメン小説です。
久しぶりの純粋な時代劇アクションエンターテイメントである本シリーズは、三巻目の本書に至ってもなおその面白さを維持していました。
『イクサガミ 人』の簡単なあらすじ
東海道を舞台にした「蠱毒」も、残り二十三人。人外の強さを誇る侍たちが島田宿で一堂に会した。血飛沫の舞う戦場に神と崇められる「台湾の伝説」が現れ、乱戦はさらに加速するー!数多の強敵を薙ぎ倒し、ついに東京へ辿り着いた愁二郎と双葉を待ち受ける運命とは。疾風怒涛の第三巻!(「BOOK」データベースより)
『イクサガミ 人』について
本書『イクサガミ 人』は『イクサガミシリーズ』の第三弾で、シリーズを通しての面白さは三巻目の本書でも持続していました。
というよりも、アクションの側面に関しては一定のレベルの参加者だけが残っている三巻目のほうが派手になっていると言えそうです。
前巻の終盤では、貫地谷無骨も送り込まれていた浜松郵便局での戦いが描かれていましたが、本書ではそこから何とか逃れ出た嵯峨愁二郎たちの姿から始まります。
また、愁二郎たちと別れ、ひとり蠱毒という仕掛けの秘密に迫るために富士の裾野を襲った柘植響陣の姿も描かれ、その響陣もまた後に島田宿での壮絶な戦いへとなだれ込んでいきます。
この島田宿での戦いが本書の中盤の山場です。この場面で中心となって活躍するのが、愁二郎、双葉、進次郎、彩羽らですが、その他にカムイコチャや中国武術の達人である陸乾もともに闘うことになります。
ほかにも、銃の達人である自見隼人、薙刀使いの楓などここまで生き残っている中の十数人の蟲毒参加者が互いに戦うことになるのです。
というのも、ここ島田宿で巻き起こった危険が「台湾の伝説」で神と崇められている眠(ミフティ)がまき散らした毒により引き起こされたものだったので、ともに戦うことになったのです。
単にアクションだけでなく、まさに山田風太郎の作品のように明治期の政治的な抗争をも背景として物語の展開を見せるという伝奇小説的な面白をも見せてくれます。
そもそもこのシリーズでは、当初から参加自体が無謀と思われていた双葉という少女と主役の愁二郎とが共に行動することになったところから、双葉も最終巻まで生き残るであろうところまで想像はつきます。
そのうえで、双葉や進次郎らの成長もまた見どころの一つと言えると思います。この蟲毒という戦いの中で一番に殺されそうな双葉や進次郎がここまで生き残れている理由は愁二郎たちの庇護だけではないところも見せてくれるのです。
そして、物語は本書のクライマックスへとなだれ込んでいきます。
場所は横浜。明治政府の裏面史を絡ませながらも、剣や体術の使い手たちを一堂に集めたこの戦いも終わりに近づいています。
貫地谷無骨、岡部幻刀斎といったバケモノのような強さを持った人物たちももちろん登場します。
東京へ入れるのは九名だけという制限の中で誰が生き残るのか。
そして、全三巻のシリーズものという従来の情報は何だったのか、という気もしますが、これまでの『天』『地』をさらに超える528ページという長さの本書でも収まりきらずに、最終巻として464頁の『神』巻へとなだれ込んでいくのです。
どういう結末になるのか、久しぶりの伝奇アクションエンターテイメント作品への期待はさらに高まっているのです。
