クロハシリーズ

クロハシリーズ(2017年10月01日現在)

  1. プラ・バロック
  2. エコイック・メモリ
  1. 衛星を使い、私に
  2. アルゴリズム・キル

このシリーズは警察小説ではあるのですが、SFの雰囲気を漂わせています。まあ、SF好きしか分からないかもしれませんが「サイバーパンク」のイメージ、つまり簡単に言えば、電脳空間との融合を大切な要素とする小説手法を取り入れている、と言えると思います。言い過ぎとは思いますが、名作映画「ブレードランナー」の雰囲気を持った作品を言えば分かりやすいでしょうか。

ただ、この作品はその上に少々グロさが付け加わります。殺人現場の描写など手足が散らばっていることは当たり前で、それ以上の描写が加わっているので、そのような描写が苦手な人はやめた方が良いでしょう。

でもその点を除けば、主人公の成長の描写もなかなかに引き込まれ、他の登場人物との絡みも私は面白くというか、興味を持って読み進めることができました。名前がカタカナで展開する独特の手法など、これまでの警察ものとは一線を画しています。

上記は出版年順ですが、内容を時系列でみると連作短編集である「衛星を使い、私に」が一番最初に来ます。

結城 充考

1970年香川県生まれ。妹はクラシックギタリストの坪川真理子。2009年現在東京都在住。
2004年『奇蹟の表現』で第11回電撃小説大賞の銀賞を受賞。
2005年に『奇蹟の表現』が電撃文庫より刊行され、作家としてデビュー。
2008年、有栖川有栖、石田衣良ら選考委員から絶賛され、『プラ・バロック』で第12回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。
2009年、光文社より『プラ・バロック』刊行。
2010年には短編作品『雨が降る頃』が第63回日本推理作家協会賞候補。
2011年8月、初の短編集である『衛星を使い、私に』を刊行。
2012年4月、『別册文藝春秋』にて初の連載小説『クロム・ジョウ』の連載を開始。
2013年11月、『奇蹟の表現』シリーズ以来のSF作品となる『躯体上の翼』を刊行。
2015年、テレビ朝日にて『クロハ 機捜の女性捜査官』のタイトルで、『プラ・バロック』がテレビドラマ化。
(ウィキペディアより)

どこかの本屋さんのメールで警察小説特集というのがあり、その中で紹介されていたのが『クロハシリーズ』の中の「衛星を使い、私に 」だったと思います。

短編集の中の「雨が降る頃」という作品が第63回日本推理作家協会賞候補になったということで紹介してあったと記憶しています。しかし、読んでみるとこの本はシリーズであり、ましてやその第1作は第12回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞していたのです。

結城充考の作品は、これまで読んだどの作品もサイバーパンクの匂いを漂わせた作品ばかりでした。クロハシリーズが「もともとはSF作品として構想していたアイデア」だったらしいので、私がそう感じるのも間違いではなさそうです。

本来、SFの匂いを深く漂わせるその舞台設定は私には決して嫌いなものではなく、むしろ大好物ではあります。ただ、サイバーパンクを苦手とする私にとっては敬遠するであろう作品群なのです。でも、なぜか惹かれます。図書館で見つけると借りてしまうのです。

とはいえ、電脳空間の話が出てきたりしてSFチックかと思っていたら、特に『クロハシリーズ』は結構ダークな雰囲気で、グロい描写もあり、読み手を選ぶと思います。

そうした雰囲気も気にしない人にはお勧めでしょう。誉田哲也姫川玲子シリーズが好きな人なら大丈夫(?)かな。

野性の証明 VOL.1 ~ 4 [ DVD テレビドラマ ]

稀代の推理小説家・森村誠一の名作TVドラマ第3弾。東北地方を舞台に、寒村で起こった大量虐殺事件をめぐる巨大な陰謀を描いたサスペンス。林隆三、三輪里香ほか出演。第1~3話を収録。(「Oricon」データベース -第1巻- より)

 

1979年1月、MBS系列で放映されたDVD全四巻のドラマです。

野性の証明 [DVD 映画]

もと自衛隊員・味沢岳史は大量虐殺事件の唯一の生き残りである少女・長井頼子を引き取り、平和に暮らしていたが、町を牛耳るボス・大場一成とその息子・成明の度重なる非道についに立ち上がる。しかし、味沢を抹殺すべく現れたのは、かつての上官・皆川率いる特殊部隊だった…。薬師丸ひろ子鮮烈デビュー作。高倉健が男の野性を爆発させる壮絶なバトルアクション大作!(「Oricon」データベースより)

 

薬師丸ひろ子の映画デビュー作ではなかったでしょうか。高倉健は相変わらずかっこいいし、特に夏八木勲が思いのほか存在感がありました。ベタとはいえ、終盤も印象的な映画でした。

人間の証明 [ DVD-BOX フジテレビ版テレビドラマ ]

2004年7月~9月、フジテレビ系列にて放送された、森村誠一原作の社会派ミステリー「人間の証明」を映像商品化。1977年に松田優作、岡田茉莉子出演で映画化された「人間の証明」のドラマ版。今作では竹野内豊が、主人公である刑事役を熱演する。(「Oricon」データベースより)

人間の証明 [ DVD 映画 ]

“キスミーに行くんだ”ハーレムを飛びだした黒人青年ジョニーは、東京のホテルのエレベーターの中で鮮血に染まってしまう。“西条八十詩集”と“ストウハ…”という最後の言葉を残して。棟居刑事らはニューヨーク市警と共に事件を捜査する。キスミーとは?ストウハ…とは?父と子、母と子、男と女の愛が見えない意図に絡みあい、そして感動のラストシーンが―。(「Oricon」データベースより)

 

西条八十詩集の中の文言と共に、ジョー山中の主題歌が印象的でした。

人間の証明

「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」。西条八十の詩集を持った黒人が、ナイフで胸を刺されて殺害された。被害者は「日本のキスミーに行く」と言い残して数日前に来日したという。日米合同捜査が展開され、棟居刑事は奥深い事件の謎を追って被害者の過去を遡るが、やがて事件は自らの過去の因縁をも手繰り寄せてくる―。人間の“業”を圧倒的なスケールで描ききった、巨匠の代表作にして不朽の名作。(「BOOK」データベースより)

 

角川映画で映画化され一大ブームとなった、長編の推理小説です。

 

森村誠一といえばこの作品は外せないと思うのですが、正直、この作品も映画の印象が強すぎて小説の印象があまり残っていません。

映画では松田優作という私が好きな役者さんが主演をしていたことと、ジョー山中の主題歌がとてもよくて印象が強かったのです。

 

 

その少ない記憶の話で申し訳ないのですが、個人的には大御所の松本清張の『砂の器』と比較してしまいます。

そして推理小説としては、『砂の器』に軍配を上げてしまい、本書の推理小説としての面白さの印象がないのです。

 

 

森村誠一の推理小説作品としては『密閉山脈』や『高層の死角』の方が面白いのではないでしょうか。

 

 

ただ、推理小説を離れた物語としてみると、この作品もかなりの評価があると思います。

勿論これは私個人の印象です。大方の人は推理小説としても面白いと言われるのであれほどのベストセラーになったのではないでしょうか。

この『人間の証明』は他の『野性の証明』『青春の証明』とあわせて証明3部作と称されています。

 

密閉山脈

“K岳山頂から灯火を愛の信号にして送る”山麓で待つ恋人・湯浅貴久子にそう約束して山頂を目指した影山隼人だったが、送られてきたのは遭難信号だった!翌朝、山仲間の真柄慎二と救援隊により影山の遺体が発見された。事故か、他殺か?遺されたヘルメットは何を物語る!?北アルプスの高峰に構築された密室で起きたこととは―。山岳ミステリーの白眉!(「BOOK」データベースより)

 

送られてきたのは愛の信号ではなく救難信号だった。山を舞台に繰り広げられる、長編の山岳推理小説です。

 

山で影山眞柄の二人に助けられた貴久子は、二人からプロポーズを受けることになったが、影山を選んだ。

しかし、その影山は落石事故でその命を落としてしまう。その時影山がかぶっていたヘルメットを調べると落石事故ではありえない損傷があるのだった。

 

読んだのが三十年以上昔であるため、内容をあまり覚えていません。

ただ、森村誠一氏自身が山がお好きなのだろうと、山が好きだからこそ山をトリックの舞台として作品を書き上げたのだろうと思っていました。

とにかく山そのもの描写に惹かれ、そのために他に山を舞台にした作品はないかと色々読み漁っていたものです。

森村誠一の作品の中では『虚無の道標』や『日本アルプス殺人事件』などが山を舞台にした作品としてあげることが出来ると思います。

 

 

他の作者で言えば、山岳小説と言えば新田次郎がいます。

孤高の登山家と言われた加藤文太郎をモデルにした『孤高の人』(新潮文庫上下二巻)や、もと中央気象台(今の気象庁)職員という著者の経歴を生かした富士山頂の測候所建設の様子を描いた『富士山頂』などを始め多くの作品があります。

 

 

他では、笹本稜平の作品に、第一級の山岳小説と冒険小説が合体した作品である『天空への回廊』や、奥秩父の山を舞台にした人間ドラマを描いた連作短編集である『尾根を渡る風』などがあります。

 

 

高層の死角

東京の巨大ホテルの社長が堅牢な密室で刺殺された。捜査線上に浮かんだのは、事件の夜に刑事の平賀とベッドをともにしていた美しき社長秘書。状況証拠は秘書と事件の関係を示していたが、間もなく彼女も福岡で死体となって見つかった。なぜ彼女は社長殺しを計画し、東京から遠く離れた福岡で殺されたのか。愛した女性の真実を求め、平賀の執念の捜査が始まる―。鮮やかなアリバイ崩しが光る、江戸川乱歩賞受賞の傑作。文庫書き下ろし短編収録!(「BOOK」データベースより)

 

東京の巨大ホテルを舞台に描き、江戸川乱歩賞を受賞した長編のミステリー小説です。

 

東京のあるホテルの部屋で、そのホテルのオーナーが殺されます。ところが、その部屋と寝室夫々に鍵がかかっており、二重の密室になっていたことから刑事達の苦悩が始まります。

ホテルマンであった森村誠一氏は、本作はまさに腕の振るいどころであったろうと思われます。実際、江戸川乱歩賞の締めきりに間に合わせるために数日で書きあげたとどこかに書いてありました。

ホテルの内実の面白さもさることながら、物語としてかなり面白く読んだ記憶があります。

 

内容をはっきりとは覚えていないので断言できないので申し訳ないのですが、謎解きメインでは無かったと記憶しています。

森村 誠一

ホテルマンという前身をもつ森村誠一氏はその初期にはホテルを舞台にした推理小説を数多く書かれていました。

1970年を超えたあたりから、東京の西新宿に超高層ビル群が次々と出来つつあり、その最初が京王プラザホテルだった筈です。そのホテル人気と森村誠一氏の前身のホテルマンとが重なり、タイミングが良いと思っていました。

後に角川書店の戦略にも乗り、証明シリーズが映画と共に大ヒットしました。

1969年に「高層の死角」で第15回江戸川乱歩賞を、1973年には「腐食の構造」で第26回日本推理作家協会賞を受賞され、近年は2011年に第45回吉川英治文学賞を受賞されています。

この作家の作品は初期の作品はその殆どを読んでいます。そして、どの本も面白く、角川が力を入れる筈だと納得したものです。

しかし、1980年代に入ると何故か森村誠一氏の作品は殆ど読まなくなりました。本当に理由は不明です。他に新刊が次々と出るのでそちらで手一杯だったといういことが一番でしょう。近年まで人間の証明で活躍していた棟居刑事がシリーズものになっていることや、時代小説をも書かれていることなども知らなかったほどです。

近年の森村誠一の作品は読んでいないのですが、あちこちの評判を聞くと相変わらず面白い物語を書かれていると思います。また、時代小説も含めて読んでみたいものです。