警視庁鑑識課に勤める原麻希は、ある日、子供を預かったという誘拐犯からの電話を受ける。犯人の指示のもと、箱根の芦ノ湖畔へと向かった麻希だが、そこには同じく息子を誘拐されたかつての上司、戸倉加奈子の姿があった。殺人現場に届く「アゲハ」からのメッセージの意味は?誘拐は、麻希と加奈子の運命を変えた八年前の事件が関係しているのか―!?女性秘匿捜査官・原麻希が社会の闇に挑む、長編警察ミステリー。(「BOOK」データベースより)
ノンストップの痛快警察ミステリー小説として、楽しく読むことができる長編の警察小説です。
誘拐犯からの子供を預かったとの電話を受けた原麻紀が指示の場所に行くと、そこには原麻紀同様に自分の息子を誘拐された麻希かつての上司の戸倉加奈子がいました。早速捜査を始めようとする二人でしたが、何故か麻希の行動は犯人に筒抜けであり、犯人の指示以外の行動をしようとするとすぐに犯人に伝わるのです。
麻希の身近に内通者がいるとしか考えられない状況ではあるものの、その存在は全く分かりません。そこで二人は、誘拐犯の指示に従うようにと指示されながらも、事件の背景を調べていくのですが、そこにはかつて彼女らがかつて追い、そして敗北したとある事件と、壊滅したはずのテロ集団「背望会」の影が見えるのでした。
本書は痛快警察小説として、実に小気味いいタッチで進んでいきます。主人公の原麻紀というキャラクターが、「フルネームで呼ぶな」などとときにはコミカルに、そして時には警察官としてシリアスに犯人を追いつめます。
本書は単純に物語の流れを楽しむ小説でしょう。単純に作者の敷いたレールに乗っていけば楽しいひと時を過ごせる、そんな物語だと思います。
ですから、少々の設定の強引さ物語構成の甘さなどは無視して読むべきでしょう。例えば、自ら罪を認めている強姦犯人が嫌疑不十分で釈放されるとか、鑑識課員が捜査し尽くした筈の現場であるのに新たな証拠品が見つかるなどの疑問点は、一応そんなものとして話を読み進めるべきです。
そうすれば、シリアスな場面が展開するなかに、ときにコミカルな進行があったりする工夫も気楽に楽しめ、面白く読み進めることができます。そして、「背望会」についての謎の解明についてもそれなりに興味を持つことができ、ミステリアスな展開も楽しめると思います。
言ってみれば、ノンストップの痛快警察ミステリー小説であり、文句なしに楽しめる小説です。