『メスを置け、外科医 泣くな研修医8』とは
本書『メスを置け、外科医 泣くな研修医8』は『泣くな研修医シリーズ』の第八弾で、2025年11月に幻冬舎文庫から310頁の文庫として出版された、長編の医療小説です。
主人公である雨野隆二が外科医としてのメスを置いて、医者がいなくなり困っている復興途上の福島の病院へ院長として赴任することになる話です。
『メスを置け、外科医 泣くな研修医8』の簡単なあらすじ
震災後の福島で医療支援をしていた友が死んだ。志半ばでの友の死に、自分は何もしなくていいのかと自問する外科医・雨野。そんな中、福島のある病院が、院長の急逝で診療を続けられなくなったという知らせが。「ならば俺が行く」。外科医を辞め地域医療の現場に飛び込んだ雨野を待ち受けていたのはー。現役外科医によるシリーズ第八弾。(「BOOK」データベースより)
『メスを置け、外科医 泣くな研修医8』の感想
本書『メスを置け、外科医 泣くな研修医8』は『泣くな研修医シリーズ』の第八弾で、何となくの日常を送っていた雨野隆二が、復興途上にある福島の病院へ院長として赴任することになる話です。
シリーズの第六弾『外科医、島へ 泣くな研修医6』では半年間ではありましたが離島へ赴任した経験を持つ隆治であり、地域医療の現実はそれなりにわかっているはずですが、今度は福島です。
しかし前回と異なり、今回は現在勤務している牛ノ町総合病院をやめ、外科医としてのキャリアは捨てることになります。
つまりは、メスを置いて診療科目はなんでも対処する必要がある地域病院の院長として赴任するのであり、単に患者を診るだけではなく経営の感覚まで要求されることになるのです。
本書においてはそうした経営者としての側面は描いてはあるのですがそれほどに重きは置いてないようです。
それよりも、死を身近にした患者の様子を主眼にした作品になっている点はこれまでと同じと言えます。
外科的な対処というわけではないものの医者として、また人間としての対応が描かれていて、死に直面した患者との物語、という点では医療小説ど真ん中の話です。
そうした点で見ると、確かに先進的な医療機器があるわけではないという地域医療の現実も描いてはあるのですが、通常の医療小説とあまり異なるところはないともいえそうです。
雨野隆二が福島に行こうと思い立った理由は若干あいまいなところがあります。
牛ノ町総合病院での日常に倦んでいるとまでは言わなくても、外科医になりたて当初のような熱意のような気概を感じられずにいる様子は描かれています。
そんな時、高校の後輩で医学生時代ともに学んだ仲間で、医学生時代に医学とは何かと悩み、卒業を待たずに医学部を去った伊佐錦太郎が交通事故で死んだニュースに触れるのです。
隆治が新しく勤務することになった東日本大震災で被害を受けた小さな町の「渡辺病院」での日常が始まります。
そこでは、「三春と呼んで」という明るさ満載の理事長の渡辺三春、事務長の佐藤、何もわからない隆治を何かと導いてくれる冴木綾乃という看護師などが出迎えてくれるのでした。
本書では、意外な終わり方を迎えるのですが、そこは実際読んでもらうしかありません。
今後の展開が楽しみなシリーズです。