新宿を舞台とする、長編のアクション小説です。
状況設定にいまひとつ現実感を感じられないために物語に感情移入がしにくく、作品の欠点ばかりが目に付いてしまう小説でした。
宵闇の新宿。雑踏に色とりどりの風船が浮かび、大音響とともに爆発した!「十二神将」を名乗る爆弾テロリストの、それが東京への宣戦布告だった。さらに浅草寺、六本木ヒルズ、新丸ビルを襲撃後、突如、犯人は企業へと標的を変えた。「怒れる神々」と称する犯人の「怒り」はどこまで拡大するのか。東京が騒然とする中、一人のペルー国家警察テロ対策本部捜査官が新神戸駅に降り立った…。(「BOOK」データベースより)
これまで一人の死者も出していなかったテロリスト「十二神将」が、突然、特定の企業に対しテロを仕掛けてきます。
その頃、神戸でスポーツクラブを経営している田代慎吾は、日本に来ていたペルーの国家警察テロ対策本部の捜査官であるミゲル・ヤマグチと共にファンとサンチョの二人を探していました。
「十二神将」が特定の企業へとテロの対象を変えた理由は何か、また、田代達が探すミゲルとサンチョは「十二神将」との関わりはあるのか、田代達の探索が始まります。
話は、田代ら二人、それに「十二神将」、警察、マスコミなどと視点が結構変わります。その視点の変化を少々わずらわしく感じてしまいました。
このことは、以前読んだこの作者の『特殊警備隊ブラックホーク』という作品でも同様でした。本書『ハイ・アラート』よりも二年以上も前に出された作品で、設定は面白いと感じた作品だったのですが、小説としては今一つ面白さを感じられなかったのです。
本書『ハイ・アラート』も同じです。筋立てそのものは面白そうなのですが、具体的な物語になると雑さを感じます。言いかえると、詰めが甘く感じられ、小説としてのリアリティーが無くなってくるのです。
例えば、警察が正体を掴めないでいるテロリスト「十二神将」があまりにも素人すぎるのに、これだけの事件を引き起こしたテロリストについて警察が何の手掛かりもつかめないという設定は受け入れがたいものがあります。
読み手を納得させられるだけの状況を見せてくれなければ物語の世界に入っていけません。勿論、福田和代という作家の評判は悪いものではなく、私の個人的な好みの問題ですが、完成度は今一つと感じた小説でした。