行きずりの街

女生徒との恋愛がスキャンダルとなり、都内の名門校を追放された元教師。退職後、郷里で塾講師をしていた彼は、失踪した教え子を捜しに、再び東京へ足を踏み入れた。そこで彼は失踪に自分を追放した学園が関係しているという、意外な事実を知った。十数年前の悪夢が蘇る。過去を清算すべき時が来たことを悟った男は、孤独な闘いに挑んでいった…。日本冒険小説協会大賞受賞作(「BOOK」データベースより)

 

かつて女生徒とのスキャンダルで学園を追われた、今は塾講師をしている元教師が主人公のハードボイルド長編小説です。

塾の教え子が失踪し、その捜索の過程でかつて自分が勤務した名門校や自身の過去のスキャンダルに絡む謎も明らかになっていきます。

 

1990年の日本冒険小説協会大賞を受賞し、1992年度の「このミステリーがすごい!」第一位を取得してることをとってもその面白さは保証済でしょう。

読んでから20年近くたっているのでその詳細な内容までは覚えていません。この本より「裂けて海峡」の方が印象に残っているのは否めません。しかし、その面白さには間違いがなく、お勧めです。

 

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飢えて狼

ささやかだが平穏な暮らしが、その日、失われた。怪しい男たちが訪れた時刻から。三浦半島で小さなボート屋を経営していた渋谷は、海上で不審な船に襲われたうえ、店と従業員を炎の中に失う。かつて日本有数の登山家として知られた渋谷は、自らの能力のすべてを投じ、真実を掴むための孤独な闘いを開始する。牙を剥き出し襲いかかる「国家」に、個人はどう抗うことが出来るのか。(「BOOK」データベースより)

 

日本の名作冒険小説と言われる長編小説です。

 

再読してみました。前に読んでからもう30年以上もたっているでしょうか。

 

今は三浦半島で小さなボート屋を営んでいる、かつての日本有数の登山家だった主人公は、ある日突然店を焼かれ従業員も殺されてしまう。

その後、真相解明のために調べ始めるとCIAやKGBといった国家間の諜報戦の様相が見えて来て、その戦いに巻き込まれていくのだった。

 

やはり読み始めたら一気に読んでしまいました。文庫本で430頁余の本を4時間弱で読んだことになります。読む速度が速いのかそれと遅いのかは分かりませんが、やはり引き込まれてしまいました。

勿論本書の時代背景は古く、1976年9月に起きたベレンコ中尉亡命事件をモチーフに、北方領土問題を絡ませた物語なので、昔を知らない人たちにはピンと来ないかもしれません。

しかし、そうした時代背景は知らなくても、今でも最上級の冒険小説としての面白さをもっている本だと、今更ながらに実感しました。

 

途中で国後島での逃避行の描写がありますが、著者の手元にあった資料だけで書いたなどとは思えない迫力です。解説にも書いてありましたが、作家という人種は「見てきたような嘘」をつくのです。

また、志水辰夫氏本人の言として、北方領土問題をスローガンとして終わらせるのでは無く、「いまのうちに、かつての記録を、商業ベースに乗る本にして残しておきたいと思った」と言われています。

そしてこの資料が先にあって、「日本領土でありながら日本支配の及んでいない望郷の島、ここに日本人を潜入させ、高さ四、五百メートルもある絶壁を攀じ登らせたらどうだろう。」ということで本書の主人公の渋谷が生まれたのでそうです。

の発想でこれだけの本が書けるのですから、その才能がすごいとしか言いようがありません。

 

まずはこのあたりの作品を読んでもらうと志水辰夫という作家が分かるのではないでしょうか。

是非読むべき本の一冊です。お勧めです。

さらば、荒野

港町N市にある酒場「ブラディ・ドール」。店のオーナー・川中良一の元に、市長の稲村からある提案が持ちかけられた。その直後、弟の新司が行方不明になっていることを知った川中は、手掛かりを掴むために動き出す。新司は勤務先から機密事項を持ち出し、女と失踪している事が判明した。いったい弟は何を持ち出したのか!?そして黒幕は――。
ハードボイルド小説の最高峰が、ここに甦る。シリーズ第一弾!!( BLOODY DOLL 北方謙三 シリーズ第一弾『さらば、荒野』紹介文 : 参照 )

東京から3時間も飛ばせばたどり着くN市でキャバレーとバーを経営している川中は、レーザーの研究をしている弟が会社から機密資料を盗みだしたとして、色々なところから接触をうけます。莫大な金が絡むその情報を握る弟を助けるべく、川中は行動を開始するのですが、その先に待っているのは思いもかけない事実でした。

この本を読むのはもう何度目のことでしょうか。何度読んでもその面白さは色褪せません。本書は「ブラディドール」シリーズの第一作目の作品です。1983年に本書が出版され、1992年に最終巻の『ふたたびの、荒野』が出るまで、シリーズ全10巻が続きます。

「北方ハードボイルドは“男はこうあらねばならぬ”という生き方を書いている」と言ったのは逢坂剛です。また、「北方ハードボイルドは精神と肉体の軋みを書く」と言ったのは大沢在昌です。共にハードボイルド作家の第一人者ですが、的確な表現はさすがです。

本書でも、主人公の川中は北方謙三の思う「男」を体現しています。更に言えば、キドニー他の本書に登場する男達皆がそうです。その上で、皆が実にキザな言葉を吐きます。ベタなハードボイルドで必ず言いそうな言葉が次々に出て来ます。驚くのは、それらの言葉がから回りすることなく、その場面の雰囲気をきちんと構築し、作品全体として成立していることです。よく考えて見ると、こうした台詞を違和感なく言わせる、そのことこそが作家の力量でしょう。だからこそ面白いし、人気もある。

本書はシリーズの中でも少々異なる一冊のように感じていましたが、今回読み返してみて、その印象は多分間違いないと思っています。というのも、第二巻の『碑銘』からが「ブラディドール」シリーズが本当に始まると思えるからです。それは、キドニーや坂井といった強烈な男達が本格的に動き始めるのが第二巻以降だからでしょう。

勿論、本書でも藤木のような男は既に登場してはいるのですが、本書ではまだ川中個人の問題が物語の中心なのです。ですが、このことは本書が面白さにおいて劣るということを意味しません。面白さの質がちょっと違うと思うだけです。

本書以降、例えば第二巻の『碑銘』では坂井直司が、第三巻『肉迫』では秋山が、それぞれに主人公となり話が進みます。視点の異なるそれらの作品は、また時間を見つけて再度読み返してみようと思わせるシリーズなのです。

蛇足ながら、2016年9月ころから、『ブラディ・ドールシリーズ』がハルキ文庫(角川春樹事務所)から再び刊行されているようです。2017年5月現在で第五巻の「黒銹」までが出版されています。

三国志






これまで「三国志」に関しては、小説では吉川英治の「三国志」と柴田錬三郎の「英雄三国志」を、漫画では横山光輝の「三国志」と王欣太の「蒼天航路」などを読みました。他にも陳舜臣宮城谷昌光他の人たちが書いていますし、漫画では三国志関係という点で言えば多数ありすぎて一々挙げられないようです。エンターテイメント作品という点では柴田錬三郎の作品が一番だったと思います。「蒼天航路」も曹操からの視点で面白く読みました。

(なお、蛇足ですが吉川英治版の「三国志」は、Kindle版では0円で読むことができるようです。)

読み手である私の側のこうした先入観のためか、個人的には北方版三国志については登場人物の書き分けに不満が残り、本書の世界に今一つ感情移入することができませんでした。三国志では多くの登場人物が活躍しますが、その個々の登場人物の個性が似ているように感じたりと、何となくの違和感を持ってしまいまったのです。もしかしたら北方版三国志が三国志の正史をベースにしているということも関係しているのかもしれません。

しかし、三国志という物語自体の面白さは言うまでも無く、北方謙三という作家の三国志の新しい解釈も印象深いものがあります。ベストセラーになっていることからも分かるように、本書の面白さもまた否定できず、読み応えのある本を探している人にはお勧めです。

ただ、別巻を数えなくても文庫本で全13巻という長尺の物語です。気楽に読むことをお勧めします。

かつてやくざな道を歩んでいた滝野は、今はスーパーの経営者として平凡な日常を送っていた。ある日、店に難癖をつけてきた若者を叩きのめしたことからか、眠っていた血が騒ぎ出す。その後、昔の仲間の高安の手助けとして一人の男を国外へ送り出す仕事を請け負い、一和会というやくざともめることとなった。

30数年ぶりに読み返しました。

さすがに途中の細かい内容は覚えていませんでした。でも、ラストが近付くにつれ思い出してきて、先の展開が分かるのです。それでもなお引き込まれました。志水辰夫の「飢えて狼」と共に読みなおしたのですが、両方ともに相変わらず面白く読むことが出来ました。

「日常」から飛び出して、非日常の世界で命の限りを生きる、この両方の本を読んで思ったことです。文字通り命の限りを燃焼させて生きることなど普通の人間には無いことですし、仮にそのような機会があっても出来るものではありません。それを頭の中で疑似体験させてくれるのがこれらの著者の作品だという気がします。言わずもがなのことではありますが。

脇役がまたいいのです。昔の仲間の高安も深いところで繋がる男を感じさせるいいキャラだし、探偵の平川、老漁師の太郎丸の親方もそうです。しかし、何よりも「老いぼれ犬」こと高樹警部が渋く、滝野というやくざな主人公を生かす敵役の型破りの刑事として配置されています。この配置が滝野の決して賢いとはいえないその生きざまを描き出しているのです。普通の気の弱い小市民である私などが夢想だに出来ない男の姿が描き出されます。

近時、新宿署の佐江という刑事が出てくる大沢在昌の『狩人シリーズ』を読みながら、はっきりとした年齢は分からないまでも、この「老いぼれ犬」の高樹警部を思い出していました。佐江という刑事は容姿も小太りであり、持つ雰囲気も高樹警部に感じるダンディさは無いものの、同じように一匹狼として他人を頼らずに行動する姿は同じであり、同様の「孤高さ」を感じたのでしょう。

ちなみに、この「老いぼれ犬」を主人公として「傷痕」「風葬」「望郷」の三部作が書かれています。

第2回日本冒険小説協会大賞の国内部門大賞受賞作品で、北方謙三の短いセンテンスで描き出されるハードボイルドの名作です。じっくりと男の生きざまを読みたい方には最良の一冊だと思います。

ブラディ・ドール シリーズ

港町N市にある酒場「ブラディ・ドール」。店のオーナー・川中良一の元に、市長の稲村からある提案が持ちかけられた。その直後、弟の新司が行方不明になっていることを知った川中は、手掛かりを掴むために動き出す。新司は勤務先から機密事項を持ち出し、女と失踪している事が判明した。いったい弟は何を持ち出したのか!?そして黒幕は――。
ハードボイルド小説の最高峰が、ここに甦る。シリーズ第一弾!!( BLOODY DOLL 北方謙三 シリーズ第一弾『さらば、荒野』紹介文 : 参照 )

とある港町N市を舞台に、酒場「ブラディ・ドール」のオーナー川中良一をめぐり、キドニーと呼ばれる弁護士の宇野や、その他ピアニスト、画家、医者、殺し屋などの男たちが各巻毎に登場し、語り部となり、物語が展開していきます。

この作品こそが北方謙三作品の根底に流れる色を代表しているのではないでしょうか。


背景にジャズが流れているほの暗いバーでバーボンを飲む、その主人公は絵にかいたようなタフガイ、などという実にベタな設定です。ところがこのベタな設定が何の違和感も、勿論厭味も感じさせること無く、そのまま物語の舞台として成立しているのですからたまりません。男同士の絆。「友情」などという言葉で語っては全く異なる話になってしまうような、そんな「絆」の物語かもしれません。一番好きな作品です。

こうした雰囲気を持っているハードボイルド小説と言えば、やはりハメットやチャンドラーを抜きにしては語れないでしょう。共にハードボイルドという文学の形態を確立した作家として高名です。ハメットには『マルタの鷹』などの小説で活躍するサム・スペードがいますが、本書の川中は探偵ではありませんが、その人物像としてはチャンドラーの名作『長いお別れ』などで活躍するフィリップ・マーロウのほうが近いかもしれません。

日本国内でハードボイルドと言えば、まず挙げられるのは生島治郎でしょうが、かなり古く私も若い頃に『追いつめる』を読んだことがあるだけで、今は内容も覚えていません。他に大藪春彦志水辰夫といった人たちもいますが、本書の設定に似たタイトルで東 直己の『探偵はバーにいる』を思い出します。「ススキノ探偵シリーズ」として人気がある小説で、大泉洋主演で映画化もされています。

なお、本書同様の色合いを持った作品として「約束の街シリーズ」があります。「ブラディ・ドール」シリーズは終了したのですが、この「街」シリーズの中に「ブラディ・ドール」シリーズの主人公川中が登場し、両シリーズは統合されたようです。

北方謙三を読むのなら、外してはいけない作品だと思います。

2016年9月ころから、『ブラディ・ドールシリーズ』がハルキ文庫(角川春樹事務所)から再び刊行されているようです。2017年5月現在で第五巻の「黒銹」までが出版されています。

ブラディ・ドールシリーズ(完了)

  1. さらば、荒野
  2. 碑銘
  3. 肉迫
  4. 秋霜
  5. 黒銹
  1. 黙約
  2. 残照
  3. 鳥影
  4. 聖域
  5. ふたたびの、荒野

約束の街シリーズ(2017年5月01日現在)

  1. 遠く空は晴れても
  2. たとえ朝が来ても
  3. 冬に光は満ちれど
  4. 死がやさしく笑っても
  1. いつか海に消え行く
  2. されど君は微笑む
  3. ただ風が冷たい日
  4. されど時は過ぎ行く

逆襲

本書『逆襲』には色々なジャンルの短編が収められていて、その中の「逆襲」が「ゴマスリ探偵法間シリーズ」の第一作となる短編小説です。

この本が全編法間シリーズものだと思っていたら表題作だけがそうでした。

しがない探偵・法間謙一は我知らず大事件の渦中にいた!?発端は市議会議員・師山史輔からの依頼だった。彼は娘の縁談を反古にするため、婚約者・柿俣正吾の弱みを探ってほしいと頼む。ところが、調査中、法間は何者かに襲われ、監禁されてしまった!彼が触れてしまっていた禁忌とは!?(表題作)。真剣でユーモラスで哀切感漂う、ハードボイルド小説登場。(「BOOK」データベースより)

 

「春休み」「気楽な女」「人ごろし殺人事件」「本物」「渋多喜村UFO騒動」「守護神」「安売り王を狙え」「逆襲」

 

「春休み」は、ちょっと突っ張った少年のとある行動が描かれていますが、そのちょっとした行動の向く先がヤクザ絡みです。突っ張った少年少女の考えなしの行動だとは言っても、相手がヤクザ絡みであれば躊躇すると思われ、そういう意味では現実感を感じられません。

とは言っても、そうした点も物語の世界として全く現実感が無いかというとそうも言えず、東直巳の世界としてそれなりに成立するところがまた面白く、東直巳らしいと言えるのでしょう。

「気楽な女」は、よく居そうなチンピラが、飲み屋の女に頼まれ、ある男をその女の店まで連れてくるという単純な作業の顛末が描かれます。その単純な作業に向かうチンピラの内心の描写が面白いです。そして、話は意外な結末へ向かいます。

「人ごろし殺人事件」は、終盤になると結末が予測できないわけでもない物語でした。でも、そうした印象は読み終えてからの後付けかもしれません。少々ホラー小説な味付けの物語です。

「本物」は、老人ホームに居る元刑事の回想です。目の前に居る介護士の指に光るイミテーションの指輪、それは本物だよと知らせるべきなのか。元刑事は悩みます。そして・・・。

「渋多喜村UFO騒動」は、個人的には今一つの物語。とある田舎のUFO騒ぎの顛末です。

「守護神」はまた”老人もの”です。この頃物忘れが激しい、というより記憶を維持できない老人の、家族に対する熱い思いの発露が描かれます。

「安売り王を狙え」はコメディと言って良いのでしょうか。若干頭の弱い二人組の物語。

 

この作者東直己の書く物語は登場人物の行動が少々無茶をし過ぎであり、現実にはあまりいないのではないでしょうか。

何しろ、主人公の探偵の設定がユニークです。とにかくゴマをすりまくって相手の懐に飛び込んでしまい、その本音を引き出してしまいます。結末は少々首をひねるものではありましたが、『ススキノ探偵シリーズ』にどこか通じるユニークさを持った作品です。

 

全体として、東直巳の様々の顔を見せた作品集と言えるでしょうか。でも、個人的には東直巳は長編の方が面白いと感じます。

英雄先生

ボクサーとしての夢破れて地元の松江に戻った池田は、私立高校の教師として退屈な日々を送っていた。だがある日、東京から戻ってきた同級生の郡が変死体で発見され、その現場には教え子の女子生徒の手帳が…。生徒は事件に巻き込まれ、何者かに連れ去れたのか。浮かび上がる殺された郡の怪しげな身辺。池田は、謹慎処分を受けながらも、恋人の女子生徒、謎の中年ライターと不良生徒を巻き込んで、失踪した生徒の行方を探しはじめる。(「BOOK」データベースより)

 

東直巳には珍しく、舞台が北海道ではありません。

とはいえ、挫折した人生を歩んでいる主人公が、教師として、また人間として生徒のために立ち上がります。

ボーイズ、ビィ・アンビシャス

俺は松井省吾。北海道で最も偏差値の低い、道央学院国際グローバル大学(通称・グロ大)の1年生だ。北大受験に失敗し、半ば自棄になったせいだが、周りはやっぱりバカばっかり。ため息と自己嫌悪に暮れる毎日だ。―そんな最悪な日々を送る俺はある日、グロ大の学生がヤクザにリンチされている現場に遭遇してしまう。交番に駆けこみ訴えるが、警官は取り合わず、それどころか俺自身が公務執行妨害と傷害の現行犯で逮捕されてしまう…。「ハーフボイルド」シリーズ第2弾。(「BOOK」データベースより)

 

ハーフボイルドシリーズの二作目です。

 

『後ろ傷』というタイトルが『ボーイズ、ビィ・アンビシャス』と改題された作品です。

札幌方面中央警察署南支署―誉れあれ

日頃から反目し合う二つの警察署、中央署と南支署。ある日、未解決事件を調べていた南支署の新米巡査が、犯人グループに拉致された。危ういところを助けだされるが、その後、真相に蓋をするような圧力が中央署からかかる。そんな中、中央署の刑事のエスだと噂される男がベレッタを持って南支署に自首してきた。しかし、男は何故か「自首を揉み消さない」という念書を書かない限り、証言はしないと言いだし黙秘する。中央署でいったい何が起こっているのか?身内の犯罪を暴くため、支署の刑事たちは深く静かに捜査を開始する―。(「BOOK」データベースより)

 

東直巳始めての警察小説である南支署シリーズの一作目です。

 

ススキノ探偵シリーズや榊原健三の物語と比べると少々ストーリーが掴みにくい物語でした。

キャラクターが他の作品ほどはっきりとしていないことや、敵役の中央署の位置付けも今一つ分かりにくいことなどがあるのかもしれません。

終わり方には背景説明らしき語りがあるので、最後には全体が見えては来るのだけれど、それまでがどうにももどかしいのです。

 

でも、それなりに面白い小説ではありました。他のシリーズが結構ぴたりと私の好みにはまったので要求が大きすぎたのかもしれません。