新宿鮫シリーズ(2015年04月01日現在)
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NHKBS2で放映されたテレビドラマシリーズです。
写真は「屍蘭」にリンクしています。
面白い小説を探している時に何かのヒントになるかもしれません。
新宿鮫シリーズ(2015年04月01日現在)
NHKBS2で放映されたテレビドラマシリーズです。
写真は「屍蘭」にリンクしています。
大沢在昌の同名ベストセラー小説を、滝田洋二郎監督、真田広之主演で映画化。“鮫”の異名を持ち、警察内部の人間や暴力団から恐れられている新宿署の警部・鮫島。ある事件を追っていた彼は、ようやく居場所を突き止めた犯人に捕まってしまい…。(「キネマ旬報社」データベースより)
見たのはかなり前なのですが、真田広之がなかなかに鮫島の印象とマッチして悪くはありませんでした。
全体的に言えば、原作の持つ虚無感とでもいうべき雰囲気が今一つの感じはしましたが、それは原作を持つ映像化作品の持つ宿命とでもいうべきもので、これだけの水準を持てばかなりいい方だ、という印象を持った記憶があります。
映画と原作は別の作品として見るべき、とよく言われますが、それでも原作の持つ雰囲気は映画も持っていてもらいたいですしね。
とにかく、この映画を見た後に新宿鮫シリーズを読むときは、鮫島のイメージは真田広之という役者さんの雰囲気で読むことになったのは間違いありません。
本『狩人シリーズ』は、新宿署の一匹狼刑事を狂言回しとしたハードボイルドシリーズです。
大沢作品の中でも『新宿鮫シリーズ』と並ぶ人気シリーズであって、厚みのあるハードボイルド作品として個人的には一番好きなシリーズでもあります。
この『狩人シリーズ』というシリーズは、小太りで離婚歴がある新宿署の一匹狼刑事である佐江をメインに重厚感のある物語世界を構築してあります。
この佐江刑事が良い味を出しています。各巻ごとに主人公は異なり、しかしながらいつも一匹狼の佐江刑事だけはそこにいるのです。
ただ、第三巻の『黒の狩人』だけは佐江刑事が中心となって活躍します。
第一巻『北の狩人』の梶、第二巻『砂の狩人』の西島、そして第四巻『雨の狩人』の谷神と、メインになるキャラクターは異なりますが、どうしてもアクションメインになりがちのようです。
まあ、第四巻の『雨の狩人』は佐江刑事と谷神との共同作業だとも言えますが。
しかし、佐江が中心となる『黒の狩人』は、どちらかというと、佐江が相方となる中国人と一緒に足で情報を集め、謎の解明するというミステリーに重点が置かれている物語になっています。
佐江刑事はっきりした年齢は分かりません。どこかに書いてあったのかもしれませんが、覚えていないのです。
雰囲気としては北方謙三の『眠りなき夜』や『檻』などの作品に登場する”老いぼれ犬”と呼ばれている高樹良文警部を思い出してしまいました。
同じ一匹狼ではあっても、”老いぼれ犬”は北方作品の登場人物ですからかなりキザです。フォスターの「老犬トレー」を鼻歌で口ずさみ、火のつきにくい旧式のオイルライターを愛用する姿が描かれています。
一方、こちらの佐江刑事はそこまでのキザな姿はありません。それどころか、見かけは単なる小太りの中年のおっさんです。
しかし、自分の信じるところに従って行動する姿はハードボイルドの心を持っています。「日常のなかで、普通の人が成り得るヒーロー」が佐江だと作者は言いますが、普通の人はなかなか佐江のようにはなれないのではないでしょうか。
「“これは新宿鮫だから大丈夫だろう”って思ってついて来てくれるだろう
」と思いながら九作、「今度は、そこでは書けないようなこと、方向性は異なるけれど新宿を舞台にして書きたいことがいっぱい出てくる。それを実現したのが『狩人』シリーズです
」と著者は述べています。「『新宿鮫』の合わせ鏡のような作品」だというのです。
また、本書の惹句には「『新宿鮫』と双璧を成す警察小説シリーズの最高傑作
」とも書いてありました。
そこまで言い切ることができるのか、と第一巻と第四巻を読んだ時点では思っていましたが、第二巻『砂の狩人』、第三巻『黒の狩人』を読み終えた今ではまさにその通りだと思いなおしています。
ちなみに、2019年9月24日現在、北陸新聞など多くの新聞でシリーズ最新作の『冬の狩人』が連載されているそうです。( 大極宮 大沢在昌 連載情報 : 参照 )
追記 : 2020年12月29日
その『冬の狩人』がやっと出版されました。期待に違わない出来でした。
ただ、我儘ないちファンの好み、いや要望としては、『黒の狩人』のように佐江が脇に回り、魅力的な主人公を助ける物語を読んでみたかった、という思いもあります。
どちらにしても、やはりこの『狩人シリーズ』は面白いシリーズであることに違いはありません。
続編を期待します。
大沢たかおと、モデルや歌手としても活躍する佐田真由美が共演、大沢在昌のベストセラーを映画化したサスペンスアクション。脳を移植され、別の人間として生きることになった女刑事。極秘任務を遂行する彼女だったが、それは悲しい戦いの始まりだった。(「キネマ旬報社」データベースより)
明日香シリーズ(2018年10月21日現在)
覚醒剤に替わり、日本全土を脅かす新型麻薬アフター・バーナー。その元締「クライン」を牛耳る独裁者・君国辰郎の愛人神崎はつみが逃亡した。はつみは組織内部のことを知りつくしていた。そのはつみが警察に保護を求めてきたのだ。連絡を受けた保安二課長・芦田は、「クライン」壊滅の切り札として護衛・移送することを決める。この極秘指令を受けた男まさりの女刑事明日香は、はつみとホテルで接触するが、ヘリからの銃撃を受け二人は瀕死の重体に。だが、奇跡は起こったー!!冒険小説の新しい可能性に挑戦したノンストップ・アクション。(上巻 : 「BOOK」データベースより)
犯罪組織「クライン」の独裁者君国の愛人はつみの身体と、女刑事明日香の精神を持つアスカは、己だけを信じて決死の囮を演じていた。組織は警察内部の通報者を使い、次々と殺戮の罠を仕掛けてくる。アスカを守るのは、明日香の元恋人・仁王こと古芳ひとり。だが、古芳はアスカの精神が明日香であることを知らない。一方、アスカは古芳が組織の内通者である疑いを捨てきれない。不協和音が生じた二人にさらなる刺客が…!!息もつかせぬアクション、巧みな構成、想像を絶する展開。感動と興奮を呼ぶエンターテインメントの真髄。(上巻 : 「BOOK」データベースより)
まず設定がすごい。なにせ、女主人公明日香が一旦殺されかけたところを、脳移植を受けてよみがえるのですから。
ただ、前提としてこの脳移植という荒唐無稽な話を受け入れないとこの物語は成立しません。ですから、その点が気になる人にはお勧めできません。その点を問題なく受け止められる人にはお勧めです。
そうした荒唐無稽な設定の主人公が内面の葛藤を抱えたまま、アクションが始まります。
ハードボイルドと言って良のでしょうか。それよりもアクション小説と言い切った方が良いでしょう。
ハードボイルドの定義は良く分かりませんが、タフな主人公の行動を客観的に描写する文章作法を言うのだとすれば、本書は明日香に肩入れしているようでちょっとニュアンスが違うような気がします。
でも、そんなことはどうでもいいことで、問題は小説として面白いかどうかです。そして、その点では何も問題はありません。
面白いです。お勧めです。
本『新宿鮫シリーズ』は、新宿署の一匹狼の刑事である鮫島を主人公としたハードボイルド作品シリーズです。
新宿鮫シリーズ(2020年01月07日現在)
短編集
本『新宿鮫シリーズ』は、警視庁公安部の秘密を握っているために部長という階級のまま新宿警察署生活安全課で活躍する孤高の鮫島刑事を主人公とするハードボイルドシリーズです。
この鮫島刑事は、キャリアでありながら、一匹狼の刑事という身分のまま誰にも忖度せず、やくざの頭にも噛みつくところから新宿鮫と呼ばれています。
警察もの、刑事ものではあるのだけれど、組織とは対極のところにいる鮫島個人の活躍を描きたいのだろうと思われます。
ハードボイルドという言葉の意味としては、タフな主人公の行動を簡潔で客観的に描写する手法としての意味や、感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を意味するのだそうで、そうだとすれば、この作品はまさにハードボイルド小説と言っても良いと思われます。
本『新宿鮫シリーズ』の魅力は、とにかく主人公鮫島の魅力が一番でしょう。
加えて、警察という組織と個人という対立の図式を考えてあることや、鮫島をとりまく登場人物の魅力的な描き方にあるのでしょう。
まず前者をみると、警察組織に対する鮫島の、警視庁公安部時代に公安部内に関する重大な秘密を握っているというその構図が挙げられます。
単に巨大組織への反抗というだけでは弱すぎるところに、鮫島に武器を与え、一個人対巨大組織という構図を成立させているのです。
本書の魅力のもう一つである魅力的な登場人物をみると、まず恋人であるロックバンド「フーズ・ハニィ」のヴォーカルである晶という恋人の存在があります。
次に、何かと警察組織と対立する鮫島を陰に陽に支えてくれている、鮫島の上司の防犯課長桃井正克警部らの存在があります。
一匹狼である新宿鮫ではあっても、こうした組織に対する優位性や仲間の存在があってこその一匹狼であり、そのことがこの物語のリアリティを更に高めています。
警察小説と言えば、近頃では今野敏の『安積班シリーズ』などのチームとしての活躍を描いた警察小説や、横山秀夫の『半落ち』のような社会性を持った警察小説が人気を博しています。
勿論そうした小説も非常に面白く、私も大好きな小説ですが、孤高の刑事を描く本書のようなハードボイルドタッチの小説もやはり手放すわけにはいきません。そうした点では堂場瞬一の『刑事・鳴沢了シリーズ』なども見逃せません。
蛇足ですが、『新宿鮫シリーズ』では第一話「新宿鮫」が一番好みです。次いで「無間人形」「狼花」あたりでしょうか。ちなみに「無間人形」では直木賞を、「狼花」「絆回廊」では日本冒険小説協会大賞を受賞しています。
緻密な警察組織の描写や暴力シーンの描写など、ライトノベルのような意味で軽く読める本ではありません。線の太い、読み応えのある作品です。かなりお勧めです。