『糸車』とは
本書『糸車』は、2013年07月に集英社から刊行され、2016年1月に集英社文庫から296頁の文庫として出版された、連作の短編時代小説集です。
やはりこの人の物語は、語りが優しくて読み終わった後にどことなくほっとさせてくれる作品でした。
『糸車』の簡単なあらすじ
深川の長屋で独り暮らしのお絹。三年前までは、松前藩家老の妻だったが、夫を殺され息子勇馬は行方不明。小間物の行商をして、勇馬を探し続けている。商いを通じて、同心の持田、茶酌娘などと親交を深めるうち、様々な事件に巻き込まれ、それぞれの悩みに共感し奔走するが…。船宿の不良娘と質屋のどら息子の逃避行、茶酌娘の縁談、そしてお絹に芽生えた静かな愛。下町の人情が胸に染みる時代小説。(「BOOK」データベースより)
『糸車』について
本書『糸車』は、深川の長屋で独り暮らすお絹を主人公とし市井の暮らしを人情味豊かに描き出す、連作の短編時代小説集です。
久しぶりに宇江佐真理の小説を読みましたが、やはりこの人の物語は読み終わった後にほっとさせてくれ、安心させてくれる作品でした。
松前藩の家老の妻だったお絹は、今は深川の宇右衛門店で小間物の行商をしながら、夫が亡くなった時に行方不明になったままの息子勇馬を探す毎日です。
主人公のお絹は深川での日々の暮らしの中でお人よしぶりを発揮しています。そんなお絹も行きつけの水茶屋の茶酌女や船宿の内儀おひろなどの話し相手も出来、更には同心の持田との間にほのかな恋心までも生まれているのです。
同時に夫日野市次郎の死と息子勇馬の失踪の謎も少しずつ明らかになっていきます。そして、持田との間も種々の出来事で揺れ動いていくのです。
この同心の持田のお絹に対する細やかな恋心など、物語は宇江佐真理らしい人情豊かな日々を描き出していきます。
私はまさに雑読で読むのも結構速いのでジャンルを問わず多量の本を読みます。
直前に読んだ花村萬月の『武蔵』(徳間書店 全六巻)などはとても情感細やかとはいえない活劇ものです。女を抱き、人を撲殺する姿が克明に描かれます。
そうした本の後にこの作家の作品を読んだものですから特に感じるのかもしれませんが、人情味溢れるこの人の作品は読み手の心まで豊かにしてくれる感じがして、爽やかな読後感をもたらしてくれるのです。
