犯人に告ぐシリーズ(2019年12月26日現在)
巻島文彦 神奈川県警特別捜査官
本田明広 刑事特別捜査隊隊長
津田良仁 足柄署刑事課所属巡査部長
若宮和生 捜査一課長
曽根要介 神奈川県警本部長
このシリーズの主人公は、巻島史彦という警視です。
この巻島警視を警察の顔とし、対立軸に誘拐犯を置くという構図で始まったこの物語は、第二巻からその色を変化させているようです。
第一巻の『犯人に告ぐ』では、過去の誘拐事件で起きた操作ミスの責任を負わされ、一度は足柄署への左遷の憂き目にあっていた巻島が六年後に起きた連続幼児誘拐殺人事件の捜査に駆り出されることになります。
そこでしかけたのが、「劇場型捜査」と銘打たれた「バッドマン」を名乗る犯人とのテレビ番組を通じた対決だったのです。
第二巻『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』では、振り込め詐欺の実態を詳細に描写しながら、会社社長親子の誘拐事件を起こした砂山知樹・健春兄弟の様子が描かれます。
その実、兄弟の裏には「淡野(アワノ)」と呼ばれる男の存在があり、物語は砂山知樹を中心に展開しながらも、淡野と警察との戦いの様相を見せます。
そして、第三巻『犯人に告ぐ3 紅の影』ではこの淡野を中心とした物語として展開されます。第一巻と同様な「劇場型捜査」が再び展開されます。
ただ、今回の巻島が利用するのはテレビとはいってもネットテレビです。双方向性が可能なネットテレビを利用して、リップマンとの直接対話を試みます。同時に、警察内部での縄張り争いに端を発した争いも描かれています。
以上のように、第一巻と第二巻以降では物語の構成から異なっています。第二巻以降では犯罪者側の視点が主になり、第一巻での巻島のようなヒーロー的な存在は影をひそめてしまいます。
即ち第二巻では、主人公の巻島に感情移入し物語のもたらしてくれるサスペンス感に酔う、といった読書はできません。
つまりは、第二巻以降は第一巻のような強烈な魅力ある存在としての巻島はおらず、途中から強引にシリーズ化したような印象すら漂うストーリー展開になっているのです。
第一巻の面白さを考えると、第三巻まで読んだ現在では、もう少し巻島の魅力を前面に出したサスペンスフルな物語展開であればよかったのに、と思わざるを得ない展開です。
今後のこのシリーズがどのように展開するかはよく分かりませんが、第一巻のような面白さを持ったシリーズとして展開されることを望みたいものです。